床チュー坊主と記憶の貴方
入学式とはスタートである。
体育館に入り、まず自分の所属するクラスと生徒の顔を確認する。まあそこで可愛い子発見!即アタック!して、張り手を喰らい、床に盛大にチューするやつもいるだろう。
礼は、そんなことはしないがとある女子に視線が吸い寄せられた。
白磁のような肌に、シルバーブロンドの髪、深海色に染まる瞳
まるで…
『ジリッッ⁉』
突然、頭の中にスパークが迸った。
なぜかはわからない。何か思い出せそうで、思い出せない。そんな感じがした。
「まあ気にしたってしょうがないか……」
式は滞りなく進み、最後に学園長挨拶である。
壇上に登ってきた人は見た感じ20代半ばで、身長は170後半と少し大きく、髪は茶色の長髪で後ろに結われていた。
「なんか不思議な感じの人だな……」
礼は、そう思ったが学園長が口を開いた瞬間一気に思っていたことは覆ることとなる。
「私の名前は信楽 祝詞と言います!皆さん以後お見知りおきを!さて晴れてこの学園に入学できた皆さんおめでとう!今日はとってもいい日ですね!小鳥もさえずっておりますよ!きっと貴方がたは立派な"具現者"になれますよ!私が保証します!」
あれまさか……
「なんで信楽の兄貴のほうがここにいるんだよ……おかしいだろ……しかもしばらく見ないうちに妹にそっくりになりやがって……」
そう 信楽 祝詞は信楽 結の8歳年上の兄である。礼の記憶では、祝詞は真面目で勉強熱心で"決して"こんな妹そっくりなやつではなかったはずだったのだ。
そして信楽 祝詞はこう締めくくった。
「貴方がたの今後に幸あらんことを祈ります」
そう言うと、何故か信楽 祝詞は一瞬悲しそうな顔をした。が、礼はそんなことには全く気づかなかった。
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入学式が終わると、みんなそれぞれいるクラスへ向かう。
「えーと、1Aはあったな。ここだ」
「楽しみだねー礼ちゃん!どんなひとたちいるのかな〜!!!ワタシ的には、緑色の人がいてほしいかも!」
それなんてピッ○ロ?とツッコミ入れるだけ無駄である。
教室の扉を開けると『ドパン』『ぎゃっ!?』
目の前にいきなり床チューしているやつがいた……
「うわーすごいよ!この床チューはアートだよ!国宝だよ!」
「おいお前大丈夫か……どうしたんだよ……まさかとは思うが、女子に即アタックしたわけじゃないだろうな……」
「そのまさかよ!女子にアタックして見事に蹴りを食らって、トリプルアクセルして床チューしてやったぜ!いい蹴りだったなー!」
「アホかお前……えーと……」
見た目は坊主のヤンキーだから…
「阿○津 丈二?」
「いやまて!俺の名前はそんなんじゃない!藤堂綺凛っていう素晴らしい名前があるからな!」
坊主なのに綺凛とかギャップがあるにも程があるだろ。と内心ツッコミを入れていたが、ぐっと噛み締める。
「俺の名前は霧島礼 これから宜しくな。こっちのアホは信楽結な」
「アホとは失礼な!」
「礼と結っていうのか!なんか両方共いい名前だな!よろしく!」
かんたんな挨拶を交わしたあと、教室を見回しあの子がいるかを確認する。
『いた』
教室のすみに微動だにせず、ただ座っている。
しかし、ただ座っているだけでもさながら湖面に佇む白鳥のように美しい。人を虜にする魅力をひしひしと放っていた。
だからなのだろうか。クラスの人たちは初対面にもかかわらず、彼女とは誰も話そうとしないのだ。いやおそらくそれは違う。話しかけられないのだ。
声をかけづらい雰囲気はあるが、勇気をだして声をかける。
なぜならさっきの、頭にビリッとスパークが迸った理由を知っているのではないかと思ったからだ。
「お前、俺とどこかであったりしてないか?」
彼女は小さな桃色の唇を開きこう答えた。
「すみません 会ったことございませんがどちら様ですか?」
どうやら、かなり盛大な勘違いだった……
かなり恥ずかしい……窓から飛び降りたい気分だ……
「すまん、人違いだったみたいだ」
礼はそう答えるのが精一杯であった。
クラスのみんながよく話しかけたと賞賛の目を送ってくれる中、名前聞いとけば良かったなと後悔する礼であった。
読んでくださりありがとうございます!
まだまだ拙い部分がありまくりで、以後手直しとかたくさん入れると思いますが、温かい目で見てくださるとありがたいです!また、今後シリアス展開も多数入ってくると思いますが、よろしくお願いします。