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儚き夢花火  作者: 星野
1/1

華の国

城内の最上階にある大広間の奥

華の間ーーーー


大きなため息だけが

広くがらりとした部屋に響く


頭を垂れ簾の前に座る血塗れの大きな狐

その横には血塗れのまま横になっている小さな白い狼の子が二匹

辛うじて息をしているかのような瀕死の姿だ


「姫様、如何様に。」


血を口から垂らしながら伝える狐に

簾の奥から凛とした声が聴こえる


「血塗れじゃ…わらわが見よう。」


響いた空間に言葉を聞いた狐は顔を上げ

中の見えない簾を見つめて声を上げる


「しかし、こやつを生かしておけば……貴女様にも」

「子供だ。わらわの手に追えぬ事はなかろう。下がれ」


言葉を遮られ、言葉を飲み込んだ狐は尻尾を翻し戻って行く

大きな部屋に残る二匹の狼を簾から見つめ

ゆっくりと簾を捲り手を伸ばす


そのしなやかで雪のように真っ白な手は

狼の柔らかい毛に埋もれるように触った後

簾の中に再び戻し大きな鈴をちりん、ちりんと鳴らす


その音を聞き付けたか、可愛い小さな狐が一人

広間に入り簾の近くまで歩いてくる


「如何様でしょうか。」


深々と頭を垂れ、簾の側に寄る狐


「この二匹の怪我を看てほしい。同族で殺っておろう。

この国で得た命だ。面倒を見てやってくれ。」


簾の中からの声に目を大きく開かせた狐は

ぱちぱちと何度か瞬きをした後に声を荒げて尋ねる


「しかしコレは華の者ではございません。

それに放っておけば命付きます。

蘭丸様なら命を狩ると思われますよ。

生かしておくならアヤツらも黙ってはいないかと……」


「構わん。遅かれ早かれ戦じゃ。

わらわはこの国で散る命を増やしとうないだけよ。

世話は蘭丸に任せる。

わらわに教育は無理じゃ。蘭丸も呼んではもらえぬか?」


その言葉を聞いた狐は

狼二匹にそっと触れ、その後手元の鈴をならし4匹の小さな狐を呼ぶ。

それらに狼を運ぶよう伝え、今一度簾に頭を下げ部屋を後にした。


一人になった簾の奥でまた大きなため息を吐く。


しばらくすると雪のように白い肌、恐ろしいほど黒い髪に

赤く光瞳の男が部屋に入ってきた。


「蘭丸、只今参上致しました。」


蘭丸と名乗る男は尻尾を地面につけ、跪いた状態で簾に頭を下げる



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