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一人ぼっちの妖精使い

作者: 縁側

「ううう……」



「ごめんなさい……僕のせいだ」



「うわあぁぁぁぁぁーーーーーー!!!」



─────どうして泣いているの?



「ううううう…………」



─────何でそんなに悲しい顔で泣いているの?



「うう…………ヒック……」



─────何か悲しい事でもあったの?



「……う、うん」



─────そうなんだ………僕と一緒だね。



「……一緒?」



─────僕もすごく悲しいことがあったんだ。とてもとても悲しいことが……



「大丈夫?」



─────……大丈夫じゃ………ない……ね。言いたくないなら言わなくてもいい……けど、僕は君が何で泣いていたか教えてもらえないかな?



「僕は大切な人を沢山死なせてしまった。あの時も昔にも……少し前にも…………」



─────もしかして……僕と同じなの?



「同じ?」



─────僕ね……両親を失ったんだ。



「………」



─────いつも騒がしくって、毎日が楽しかったんだ。けど───今日で一人ぼっちなちゃったんだ。



「………」



─────何でだろうね、こんなに悲しいのに……全然涙が出ないや。僕は実はあの生活が楽しくなかったのかなって今になって……思い始めたんだ。



「そんなことは絶対にない!!!」



─────え?



「僕は君の事をよく知らないけど……。君が親の事を話している時はすごく楽しそうにしていたし、悲しそうにしていた!それなのにたのしくなかったって言わないで!!」



─────でも……。



「君が思っているよりも『親』ってものは凄く大切で誰よりも『自分』に優しい人なんだ!今まで見てきた僕の大切な人の家族もそうだった!!だから………そんな事言わないで!!」



─────そうなのかな………。



「きっとそうだよ!!僕が保証する!!」



─────あ、ありがとう……。



「だから君も僕みたいに泣かないで?」



─────え?………あれ?涙が……うう。止まらない……や、ヒック。うわあああぁぁぁぁ!!



「大丈夫、僕もいるから」



─────ううう……えへへ、ありがとう。君は凄く優しい妖精さんだね。



「!?……わかっていたの?」



─────う、うん。だって小さいし。



「ガーン!!」



─────どんくさいそうだし。



「ガガーン!!」



─────羽生えてるし。



「ガ……ってえ?もしかして……『見えてるの』?」



─────?



「そんな……君が今の『契約適正者』だなんて……」



─────そのけいやくてきせいしゃって何?



「君には関係ない事だからもう行くね……」



─────待って!!



「痛い痛い!!羽を掴まないで!!」



─────話すまで離さない!!



「う!?………分かったよ……」



─────で?それって何なの?



「『契約適正者』は僕達妖精と適性のある人間の事なんだ」



─────僕はけいやくてきせいしゃって者なの?



「うん。僕達妖精の羽が目に見える子が今の現時点での適正者。そして……君がただ唯一この世界での『妖精適正者』何だ」



─────僕一人だけ?



「すっごく昔にみんなが……いや。僕のせいでみんないなくなっちゃったんだ」



─────どうして?



「僕は全てを不幸にする『厄災の妖精』。みんな僕がしてしまった過ちでみんな人間に───殺されちゃった」



─────え?



「勿論全部の人が悪い人間だなんて言わないよ………。現に少し前まで契約していたし、けど……もう止めにしたんだ」



─────何を?



「人間と契約するのは、もう嫌なんだ。目の前で同じ集落の仲間に殺された契約者も、友でもあり戦友であった武士に燃え盛る城の中で殺されてそのまま跡形もなく焼かれたり、死ぬと分かっていても国のために敵戦艦に機体ごと突撃していなくなったあの人みたいに!目の前で引かれそうになった子供を庇って引かれた人みたいに!!!僕はもう……大切な人が死ぬのを目の前で見たくないんだ!!!!!」



─────………。



「だから……もうお別れだね。僕は一人隠れるように住むよ。誰にも気が付かれない深い森の中で……ひっそりと」



─────だめ!待って!!



「何で止める…の?もう誰も不幸にしたくないのに……止めないで!!」



─────僕がそのけいやくする!!!



「え?……ははは…駄目だよ…………僕と契約したら不幸になるんだから…駄目だよ」



─────泣かないで!



「え?」



─────おねがい……だか…らぁ…ううう……泣かないでよぉ。



「そんな事言ってる君が………すん……泣いて……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



─────泣かな゛い゛でよ゛おおおお!!うわあああぁぁぁぁぁん!!!



「ははは……これじゃあどっちが励ましているのかわからないよ……」



─────う、うん。けど僕は君とけいやくしたいんだ



「でも………」



─────けいやくしたらもう一人ぼっちじゃないでしょ?



「!?……あはは。そうだね。僕も君も一人じゃなくなるね」



─────僕と。─────とけいやくしてくれない?



「良いの?何があるかわからないよ?」



─────大丈夫だよ、ううん。きっと大丈夫。僕と君で不幸なんてぶっ壊そう!!



「っぶ!……あははははは!!」



─────ちょ!何で笑ているのさ!!笑わないでよ!!僕も恥ずかしいのだから!!



「ごめんごめん」



─────もう。



「うん。分かった。君の思いの強さに免じて契約しよう」



─────なんかムカつく言い方だね?



「だって圧倒的に僕の方が年上だからね!!」



─────むぐう!!



「ごめんね!謝るから機嫌治して!このとおり!!」



─────仕方がないな……お詫びに帰ったら何か面白いことしてよ!



「分かったよ!……じゃあ。僕は君と───」



─────僕も君と。






「契約します(けいやくする)!!」


お読みいただきありがとうございました!

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