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誰ぞ彼のララバイ-せかせか異世界紀行-  作者: トウガ ミト
1章 『東露』の街
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1話 『東露』の街--(7)

もうすぐ!

元プロローグの加筆修正が!

終わります。

視点は戻っております。


 誰かに呼ばれた気がした。

 色のない場所は変わりなかったが、どこか気持ちが軽い。


 彼はすごかった。今でも思い出す。


 ◆


「〈魂込める(ソウル オン )水拳(アクアフィスト)〉ォ」

「……っ」


 青紫のオーラだ。正々堂々と……一騎打ちをしたいのだろう。


「悪いな」


 だがそう簡単に、食らう訳には行かない。それぞれ体力はピンチなのだから。


「またかっ!」

「〈氷華ひばな〉」


 再び背中から入る。果たして正々堂々とはなんだろうか。

 そしてそんな予感をしていたのだろう。前転のごとく足で刀身を蹴り上げる。


「嘘だろ」

「これが事実だ」

「……っこれもね」


 今度こそ、2つの〈殺法デスティネイト〉が正面衝突した。

 大袈裟な煙が上がった。が、霧のせいで、砂煙なのかどうかよくわからない。


 ◆


 結果は言うまでもない。

 今頃G-lesも、この場所でさ迷っているはずだ。


「さてどうだか」

「あ、シャラ」

「『あ』て何よ。『あ』って」

「来霧さん、G-lesって人ならば、撤退していきましたよ?」

「ああ、そうなのか……て、え?」

「ダメね。頭にネジ刺すしかなさそうよ」

「フランケン爆誕ですか」

「いや、待て」


 シャラルとクララが、楽しそうに喋っているが、どう見ても不穏な空気だ。

 やめて欲しい。鏃をこめかみに突きつけないで欲しい。

 このままでは落ち武者の完成じゃないか。


「……で状況は」

「開戦から約7時間。計2戦。来霧さん無しで1戦ですね」

「は?」

「そんなに長く滞在はしませんでしたし……いや、事実ですよ?」

「お零れが来たのよ」

「なんだお零れか」


 安堵した。もしまた、1パーティならばかなり苦戦を強いられただろう。何かに特化したチームとなると余計だ。

 それに地形的な部分もあるだろうと、クララは答える。


「はい。流石に壁際のここでは、あまり部隊は来ないものでしょうね」


 確かに、この街の名だたるギルドは、中央の議堂を中心として警戒しているはずだ。

 となると、敵戦力もそちらに注がれている可能性が高い。


 そういえば、ここの皆は、どこか安堵している様子だった。何かがあったのだろう。朗報だろうか。


「で、公式に」

「防衛成功で勝利ですね!」

「はぁ……」


 クララは、どこか嬉しそうに答えているが、全員にとって嬉しいとは限らない。

 いや、自分は嬉しいのだが、嬉しくない。


「案外、もっと活躍したかったんでしょ」

「来くんの事だから、恩は返しておきたかったのかも」

「確かに。それが来霧さんらしいですね」

「納得いかないんですね」

「あーもう、それ以上言うな!」

「本当ね。白髪らしいわ」


 どっと歓声が上がる中、霧の晴れた中央街方面から1人駆けつける。


「あら? 油断も甚だしいね」

「え、どうしてです? ヒエロワちゃん」

「まだ1日目よ? 相手国から何も無いのに戦争を凌ぎ切ったとは言えないわ」

「だけど、損害で比べると圧倒的に向こうじゃないかしら」

「……まだ、確信できる情報が出るまで待ちましょう」


 ヒエロワさんは落ち着くように促した。

 確かにその通りだが、街の様子が少しおかしい。


「……何だ?」

「さぁ?」


 ざわめきが凄い。というか、まるで戦勝ムードだ。

 商隊の馬車が、微かに見える大通りの方から、ちらりと姿を見せ始めた。凡そ、明日も戦闘が続くぞという体制でもないし、普通に、城門が開門している可能性もある。


「……」

「……勝ったのね」

「……みたいです、みたいです」

「え、冗談」

「ではないです。ドボルメントが、本格的に撤退した様です」


 まるで台風が過ぎたかのように、あっさりとしていた。多少の被害はあっただろうが、終わったのだ。


「事情は、カツトヨさんから説明頂きました」


 侵攻してきた〈ドボルメント〉という都市国家は別の国から支援を受けて侵攻してきていたという。

 中央の大国〈スルディア将国〉だ。この次元せかいの五大国の一つに数えられる国。

 天下無双とまで称される、近衛軍を持つスルディアは、周辺諸国に援助を送ることも多々あった。今回がその1例だ。

 では、そんな2国に何があったのか、カツトヨはオブラートに包みながら話してくれた。

 簡潔にまとめるとほかの五大国の1つが、国境で動きを見せた。という事だそうだ。

 警戒のために、援助がままならなくなり、攻めようにも持久戦が出来なくなった。

 ほかの国の動きが、結果的に戦争の終戦を導いたという。

 戦況も、停戦や和睦を打ち出せるほど芳しくなかったようだから、『侵攻中止』という手で撤退したのだろう。


「これと言って何も出来ませんでしたね」

「そうだね……だけど」


 何かを掴んだ気がした。

 いや、気が合う人物を見つけたと言った方が正解だろう。

 同じ次元せかいにいるのだからいづれ再会はできると願いたい。

 次は、茶を酌み交わす関係でありたい。


 叶いようもないことだが、思うのは無料だ。恐ろしい程晴れた空に、願いを掛ける。

『東露』の街--(7)登場人物


主人公グループ

来霧・シャラル・クララ・(キーリ・snow・)ヒエロワ(・翡翠)


カツトヨ


敵グループ

G-les

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