1話 『東露』の街--(4)
今日投稿できそうな分の最終……ですかね。
今後も足早に投稿出来たらしていきたいです。
という訳で、多分『東露』の街の後半部分に入りました!多分!
G-lesはただの戦闘狂という訳でもないのだろう。
対応している現状、誰も追加投入は無かったが、余裕があるのか、焦りを隠したいのか話しかけてくる場面が多々あった。
もしかするとそういう人がリーダー気質があるのかもしれない。
なぜなら裏で情報交換を、欠かせなさそうだから……単なる憶測だが、彼はやる奴だという認識はどこかにあった。
『複数人と出会ったよ。相手には〈武士〉に〈施療官〉……かな。見た目だと。あと一人いそうだけど見通しが悪いからわからないですね』
『了解ありがとう』
『感謝するわ』
『ありがとうございます!そちらに向かいますね』
『キーリくん、助かります』
クララからの伝達によると、回復役とタンクだろうか。そこで重要なのは、その2人の所属先だ。
「……」
「……なんだ、表情がもう変わったか」
「いや」
「ああ、なるほどな。おまえのお仲間さんが敵に当たったってことか」
「……よく笑えるな」
「そうか、笑ってるのか。いや、間違ってないだろ……ああ、ゾクゾクしてきたからな」
始めようぜと今更なことをG-lesは呟いて飛びかかる。それに対し、横一文字に木刀を振る。
霧が踊る。
しかし時間が足りない。
それに体がまだ硬い。
続けて鉤を振り下ろしてくる。それには、篭手を失った方の腕が、本能的に飛び出した。同時に、左足が襲いかかるのを確認していたからだろうか。木刀で抑えようにも、先程の一撃が脳裏に浮かんで、判断が遅れた。
声にならない声を上げる。
耐久力といい、体力といい、恐らく劣っているだろう。このままでは持久戦に持ち込んでも持ち込まなくても敗北しか見えない。
だが、ただ単に攻撃を躱してばかりで策が立てられていない訳では無かった。
痛みを堪えつつ、立ち上がる。どうしてこんな所に来てまで、過激なチャンバラをしているのだろうと今更な疑問が浮かぶ。しかし答えはここにはなさそうだ。
今やるべき事は、霧と舞うのみだったから。
また横一文字に薙ぐ。
大丈夫だ、身体は温まってきた。
感情の昂りを胸に手を当てて実感する。
次は、右肩上がりの軌道で木刀を振り上げる。
木刀は霧を滑り、自らは霧の中を舞う。
「楽しそうじゃねえか」
視界の隅からG-lesが、襲い掛かるのを確認した。流石に黄緑のオーラは発していない。
「でしょ?」
空振りを繰り返す。空振り毎に霧を切り裂くが、霧に包まれた現状、視認できるようなものでもない。ましてや、霧を消すようなことも。
そして間合いが詰まった瞬間、相手の輪郭からオーラが発生した。脇を滑り込むように綺麗な拳が入る。
「〈瞬激衝〉」
美しいほど綺麗に決まるその一撃は攻撃力に特化した〈殺法〉の一種だろうか。その証拠に、青紫色のオーラを攻撃直前に発していた。そして来霧は打ち砕かれた。
しかし、腑に落ちない顔をしている。
「軽すぎる……」
「〈氷華〉」
G-lesは背後からの攻撃を許してしまったのだ。
「そうか……理解したぜ」
「ん、何が?」
「来霧。お前の主役職は刀剣士だ。一撃一撃がキレのある重いもののはずだ……だが」
その言葉を聴きつつ、自らの武器を撫でる。鮮血こそは着いていなかったが、相変わらずの艶だ。戦闘中なのに惚れ惚れとしそうだ。
「そいつは、どっからどう見ても竹光。実戦向きではない」
「……確かによく言われるな」
「だが、その竹光でも威力を持つ方法はある……綺麗に研ぐのもひとつだが、さらに特殊な手間の掛かる方法もまたある。いや、それまでの過程が長いものだろうか」
「……」
「能力付与だ……しかもこいつは」
G-lesはしばらく独り言を続けている。説明が多いのは、敗北フラグに繋がるのを知っているのだろうか。
「属性特化か」
「だったら?」
「ふ……」
「?」
「はははは……面白いという話だ。どこまで出来るのか……この身で確かめてみたい」
「分かった。G-les……楽しもう」
悪い言い方だと、戦闘狂に目覚める第1歩だろうか。弁えていきたいが、ここでは戦争回避は難しそうだ。
それに、今は楽しんだ方が動けそうだ。
再び横一文字に薙ぐ。これを見て、G-lesは直ぐにその軌道を切り裂いた。
軌道は目に見えにくいが、溶けるように霧散した。
間髪入れず、縦に1本、斜めに1本入れる。
寒さに似合わない汗を流す。
G-lesが跡をつけるように片手で軌道を粉砕すると、もう片手で攻撃を挟む。
それに対して、冷たくなり始めた刀身で受け止める。
無茶だと思っていたが、意外と受け止めきれるものだ。
一瞬で身体が火照る。
もうここまで来ると輪郭を形成するように、霧が薄くなっているのだろうか。
限界は近そうだ。
「〈氷通滑〉」
「うおっと」
体制を崩したG-lesの隙を逃さず、木刀は霧の中を滑る。
「あっぶね」
が、鉤でなんとか受け止められた。
だが立ち上がるまで少なくともひとクッションは必要だ。続けて一撃を加える。
「危なっ」
さっきと同じことしか言ってないが、焦っているのを隠せていないのだろう。2つある鉤で受け止めたが、まだ起き上がれていないようだ。
が、G-lesは大きく足を振り上げた。流石に躱すしかなく、1歩、2歩と退る。
その隙を逃さず、立ち上がった。膝の埃を軽く払い落とす。
「空気も地面も凍らせるなんてすげえな……」
「そうでも無いさ」
「そういうものなのか……だが、次はこう行かん」
「行かないなら、退いて欲しいんだけどな」
木刀を身体に寄りかけさせて、汗を拭う。
もうそろそろ終わらせないと、他のメンバーにも迷惑が掛かるだろう。
いつまで霧を漂わせておくつもりなのか……と。
視界が悪いのは、お互い様だからだろう。
誰かのためにと思いつつ、霧に念を送りつつ切り裂くと、熱を奪った。
「終わらせなきゃいけないからさ」
「おっと、もうラストか?」
「どうだろうね」
「来いよ。受け止めてやるさ」
いつの間にか立場逆転している発言だが、気にしている暇はない。小さな油断を利用するしか勝ち目はないからだ。
この兄貴肌に打ち勝つためには。
『東露』の街--(4) 登場人物
主人公グループ
来霧・シャラル・クララ・キーリ
敵グループ
G-les