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「汝は人狼なりや?」入門  作者: 雨木康平
第一部 全体としての人狼論
3/4

人狼ゲームの基本的な構造

 それでは人狼ゲームについてその構造を明らかにしながら本質へと迫っていこう。

 この章では陣営ごとの視点を手がかりに人狼ゲームの構造を分析していくことになる。それぞれの陣営については特に解説はしない。これの読者は当然分かっているものとして進めていくからそのつもりでいてほしい。

 基本的なことだが人狼には三つの陣営がある。村人陣営、人狼陣営、妖狐陣営である。まずはそれを頭に入れてゲームの構造を分解していってみよう。このゲームの各部は大きく三つに分かれる。襲撃、議論、吊りが人狼の大きな部分である。夜会話や役職実行は構造を捉える上では全くの無意味な場所であるので無視して構わない、そこには重要な要素は全くない。このように言う理由はのちのち分かるのでここでは一旦おいておいて、先に進める。人狼ゲームでは初日夜の襲撃から始まり、議論→吊り→襲撃→議論とゲーム終了まで繰り返すことになる。まず襲撃だが、狼は襲撃によってゲームを戦略的に支配していく、占い、霊能といった重要な村役職を消し、議論を自分たちに有利なように誘導し勝利を目指す。一方の村は襲撃に関しては狩人による護衛によって一応の対応は出来るが普通は狼に対して後手に回るしかない。狐は噛まれても死なないので襲撃に対しては真っ先に警戒すべきものではない、大体グレーに潜伏していれば多くは役職噛みから入るのであまり気にする必要はないだろう。次は議論を飛ばして吊りについてだが、村は吊りによって人外を吊り殺すしかない。そのために議論によって人外を見つけ出そうとする。そして、狼は基本的には吊りでしか死なない、狐も大体同じであるので人外はなんとか吊りを逃れようとする。したがって、最後の議論に関してになるが、襲撃と吊りの間に挟まれた議論では全陣営がぶつかり合うことになるのである。一見すると議論と吊りの関係が深いように見える。そうすると、もしかしたらこの二つをまとめるべきだと考える読者もいるかもしれないが、私はこの二つは分離して考えるべきであると考える。あくまで吊りに関しては村陣営の共有が強い決定権をもっていることから襲撃に対する武器として位置づけるのが妥当であり、さらに、噛み先からの推理や意見噛みといった議論においての噛みによる影響を考えるとこれを村のものとするのもおかしいだろう。こうして、狼の襲撃、中立の議論、村の吊りとおけば綺麗に構造を分解でき、しっくり来るものがある。

 さて、ゲームの構造を明らかにしたところでここからは各陣営の動きを説明していくことにしよう。それぞれの陣営の勝利条件と今見てきたゲームの構造を踏まえて考えると各陣営の動きは以下のようになる。

 

 人狼陣営:村に対して先制して攻撃を仕掛ける。襲撃で敵を消し、議論に優位に立とうとする。

 村人陣営:狼の攻撃に対応して守りに回る。議論によって人外を見つけ、吊りによって処分する。

 妖狐陣営:村と狼のあいだをうまく暗躍して生存を目指す。


 それから、ついでにといってはなんだが、各部分と陣営との関係も書いておいたほうが分かりやすいだろうと思うので一緒に載せておく。重複する部分もあるが重要なことなので容赦してほしい。



・襲撃 狼陣営:最大の武器。これによって邪魔なものを消し議論に優位に立つ。

    村陣営:狩人だけが頼り。基本的には襲撃に対して無力。

    狐陣営:噛まれても死なない。ただし把握される。


・議論 狼陣営:仲間を知っているため組織的、戦術的な誘導が可能。噛みの援護もある。

    村陣営:村は独立しているためミスリードなどもあるが人外を見つけるために重要な場所。

        また、村人の数の多さは強い武器となる。

    狐陣営:生き残るために最も力を入れる場所。全力で吊りを回避する。


・吊り 狼陣営:PPなどを除けば、まず無力。議論で吊りを回避しなければいけない。

    村陣営:議論をもとにグレラン、または共有が指定。狼を殺せるのは基本ここだけ。

    狐陣営:絞首台に上げられた時点でゲームオーバー。



 以上のように構造と陣営の関係を見てきたが、そこからひとつの事実が導き出せる。三つの陣営には相性があるということだ。ここまでの話を理解している読者にはうっすらとわかってきているはずだろう。それぞれの陣営の特徴とゲームの構造とをつき合わせて考えればどのような相性になっているのか答えはおのずと明らかである。狼>村>狐>狼の三すくみがこのゲームでは運命付けられているのだ。狼陣営は仲間同士を知ることが出来るため昼時間の議論を連携して有利に進めることができる。また、噛みを武器にして村陣営に対して積極的に干渉を行えることと先手を打って戦術を仕掛けていけることから村に対しては優位に立てる。その反面、狐に対しては噛みで処理することも出来ず、吊るにせよ、占わせて銃殺させるにせよ、通常は村陣営の力を借りなければ処理することが難しいため相性がよくない。狼陣営についての相性の説明をひっくり返せばそのまま村陣営と狐陣営の相性の説明になるのだが一応簡単に説明しておこう。村陣営は議論の際に同じ村陣営を知ることができないので誘導や主張に無駄やミスリードを生じさせるので狼陣営に対しては弱い。反対に狐に対しては占いの存在と数の力によって簡単に対応することができる。狐陣営は単独であるがゆえに村に対しては数量で負けてしまうが、狼陣営に対しては噛まれても死ぬことはなく存在自体が狼に対する牽制であるため勝っている。以上のように狼>村>狐>狼といった具合で、ゲームバランスが整うようになっているのである。

 だがしかしこのバランスは非常に不均衡である。決して安定しているとは言えない。人狼プレイヤーなら誰でも肌で理解していることだが実際に17人村における各陣営ごとの勝率を見てみよう。それが、最も手っ取り早くこのことを理解する道である。


17人 村人陣営 50% 狼陣営 30% 妖狐陣営 14% 引き分け 8% (出典:るる鯖「過去ログ・統計」)

引用者注:小数点以下の処理の関係で合計は100%ちょうどではない。


この数値にはB,C,D,Z配役も含まれているため普通村であるA配役のみの統計とは微妙にずれがあるだろうが、るる鯖で最も多くプレイされているのがA配役なのでこれを参考にしても問題にないと推定して話をすすめる。以上のデータから明らかなように村>狼>狐の順で勝ちやすさに差が生まれている。それはいったいいかなる原因によるものだろうか。それではこれからその原因について論じていこう。

 先に結論を言ってしまうとその原因は二つ、陣営ごとの人数の差と、村陣営の人外に対する最強の武器、すなわち占い師の存在とによるものである。まずは一つ目の陣営間の人数差であるが、これは言わずもがな、自明なことである。極端な例をあげよう。17Aでは狐陣営は銃殺やグレラン死で初日に勝利が消えることもあり、狼陣営は最短で四日目の吊りで負けることがある。だがしかし村の負けが起きるのは最悪の場合を考えたとしても7人になるまで絶対にありえない。7人になるのがいつかは平和などを考えなければ六日目の夜だ。さらに7人での負けは狐勝ちなのでその前に狼からの譲歩がある可能性は十分にある。(ここでの狼の譲歩に関してはまた別の機会で詳述する)そもそもの7吊り5人外という吊り縄と人外との関係から見ても、人数が多いことが村の余裕を作るという点より村にとってプラスに働いていることは明白だ。先の考察で村陣営の防御手段としての吊りを論証したが、PPなどを考えると、逆説的に村の多さが吊りを武器として利用することを可能にしていると考えることも出来るのである。またこれに関連して、占いを噛まれたときにとる狐盾という進行があるが、これは狼が占いを噛んだ場合に狐を処理するために必要な吊りを村陣営が握っているから行えるのである。

 次にもうひとつの要因、占い師に話を変えよう。さて、読者の皆さんは占い師に対していったいどんな印象を抱いているだろうか。占い師はブラック役職であるだとか、村の奴隷であるだとかいった話を聞く事があり、反対に村の最重要役職であるといった意見もある。また一方で、人外からは最も欠けることを望まれる役職でもある。以上の意見は占い師の一面をあらわしているといえるが全体としてその本質はひとつである。それは村陣営の持つ人外に対する唯一のキラーウェポンだということである。占い師は狼と狐に対して非常に大きな脅威である。グレーを暴いて、狼を見つけ、狐を溶かす、またそうでなくとも人外でない場所を見つける。つまり前述した村の奴隷といった意見も最重要役職といった意見もどちらとも唯一の武器であるという本質を前者は武器=道具という視点から、後者は唯一=重要という視点から捉えたものなのである。では、占い師はどのような影響を戦局にもたらすのだろうか。その答えは非常に単純だ。狼に露出を強いるのである。狼陣営はほとんどの場合真占いを確定させないために1Wを騙りに出す。そこから占い噛みを選ぶにせよ信用勝負を選ぶにせよ、騙りに出した時点で村に狼の居場所を一箇所教えることになってしまっているのだ。17Aにおいて一般的な真狂狼ー真の形を考えれば狂人にも露出を強いていることになろう。占いを噛めば狂狼を失う。信用勝負を挑むのであれば常に破綻の危険が付きまとう。このように占い師の存在自体が狼にリスクを強いているのである。占い師の与える影響は狼陣営に対する働きかけが主であるが、当然狐陣営にとっては占い師の存在自体が死活問題である。死ねばそれで終わりの狐陣営にとってはこれ以上ないほどの脅威でしかない。その上、狐には狼の噛みのような盤面に影響を与える能力を持たないので信用勝負などされた日には死亡宣告をくらったに等しいものである。

 そろそろここらでまとめに入ろう。この章では人狼ゲームの構造と各陣営とのかかわりを見てきた。まずはゲームを襲撃、議論、吊りの三つに分割し、襲撃が狼、吊りが村の強い影響下にあり、議論において各陣営がぶつかり合うことを説明した。次にゲームの構造から必然的に狼>村>狐>狼の三すくみが出来上がることに関して論証した。最後は村陣営の高勝率示し、その原因が人数差と占い師であることを述べた。このときに人数差が吊りを村の武器としての利用を可能にしていることと、占い師がゲーム内での構造的に果たす役割も並列して論述した。

 これで人狼ゲームの構造の大枠は説明したので次からはゲームの本質についての説明に入ろうと思う。


この章のまとめ

・人狼ゲームの構造「襲撃(狼)→議論(中立)→吊り(村)」

・狼>村>狐>狼 三すくみ

・勝率は村>狼>狐 この原因は占い師と数の暴力

 



 




 


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