はじめに
これは「汝は人狼なりや?」というゲームに関する初心者及び初級者向けの入門書である。
読者の中には『わざわざこのようなものを書かなくてもwikiに初心者向けの解説はすでに書かれているではないか』と思う方もいるであろう。たしかに一応の解説はある。私もこのゲームを始めるにあたり大いに参考にさせてもらった。だがしかし、実際に村に入って戦績を重ねていくにつれwikiの解説に対してかなりの物足りなさを感じるようになっていった。wikiの初心者向けの解説は各役職ごとの動きやそもそも守るべきマナーといった基本中の基本でしかなく、ゲームを始めて少したって初心者を脱してきたところの初級者にとって参考とすべきものはほとんどないのである。したがって、初心者は最低限の手ほどきだけで戦場へと投げ出されてしまうことになる。
私も初心者だったころに他に参考にすべきものがないかといろいろと探してみたが、どうもこれといったものが見当たらなかった。ネット上には人狼の解説ブログというものがいくつかあったし、その記事のなかには役に立つものもあった。しかし、そういったブログは戦術論の話に終始していて、個々のケースの対応にはなるかもしれないが、人狼ゲームに対する理解を深め、読者の実力を真に上げるものではなかった。人狼の本質、全体像を見通せる一本筋の通った解説というものはどこにもなかったのである。喩えるならば日本史全体の勉強をしたいのに、織田信長や坂本龍馬といった個人の研究本しかなく、通史を学習するための参考書がないということである。このような状況にだったので私が初級者から中級者、上級者になるにあたって大変苦労した。(何千戦と戦績を積んだ方々から見れば私などまだまだひよっこであろうが、私の心持としてはボロを着てても心は錦といった体である。)戦術論は豊富にあるもののそれを生かしていくべき戦略論が圧倒的に足りないのである。現状、戦略論は自分で考え、自分で見つけるしかない。それが当然だと考えるものもいるだろうが、そうしていては蓄積がない。科学や数学は先人の英知の上にまた新たな発見を積み重ねて進歩してきたのだ。人狼ゲームだって同じことをやって悪いわけがない。
こういうわけなので、ないならば私が書いてやろうと決意した次第である。人狼ゲームのプレイヤーにはあまり自己の戦略を開示したがらないものが多いが、それではいけない。初級者が上級者とも渡り合えるようにすることは間違いなく、上級者にとってもプラスになる。せっかく人狼ゲームに入ってきてくれたプレイヤーが上級者に歯が立たないからといって抜けるていくようでな先がなくなってしまうではないか。そうならないようにするためにも積極的に自分の戦略を開示し人狼ゲーム全体の発展を願いたい。とまあ大仰なことを書いてみたがなんてことはない、半分以上はただの功名心が動機である。たまたま先駆者がいないことを発見したので今から書けば一番乗りになれる。大体の分野では開拓者が権威となれるのである。だったら俺が書いて威張り散らしてやろうといった具合である。あんまり難しいことは考えずに素直に読んでもらいたい。また、ここが間違っているだとか、ここが気に食わないだとかがあればそれはそれで構わないので、そういう人は反論なり批判なり適当に発信しておいてほしい。
さて、書いてやろうとは言ったものの、人狼ゲームにおけるこうした試みは前例のないものであるから手探りで進めていく部分が多かった。だが書くからには半端なものを書くわけにはいかない。初心者、初級者向けではあるものの上級者まで使っていけるようなものを目指して書いた。これの読者が読む前と後で確かに変われるようなものであると自信をもって言おう、そのために必要なことは何一つ出し惜しみすることなく書いた。
では、そろそろ前置きはこのあたりにして簡単な内容の説明にはいろう。この人狼論には三つの重要な柱がある。構造論、本質論、陣営論である。ただしこの人狼論においてはそれぞれがそれぞれに絡み合ってひとつの論として成り立っているのでこの三つをばらばらに説明することは不可能である。構造を語るには本質、陣営の話が不可欠であるし、逆もまた然りなのだ。ではどういう構成をとったかというと、まずは比較的理解しやすいだろう陣営論を手がかりに構造論を述べていくことにした。ここで必要な陣営論は初歩の初歩なのであまり独自なことを述べなくても構造論の説明が簡単だったからである。それから構造論を手がかりに本質論へと入っていく、そうして最後に陣営論を深めていくつもりである。初心者向けの手引きとしてはああしろこうしろといった具体的な話はあまり入っていないのでそういうのを求める人には不満が残るかもしれないが、私の目標としているところは私の思考の結果の伝達であるため、納得してもらいたい。決して読んで損はさせない。