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触手な俺が魔女の奴隷  作者: よしむ
第二章 吸血鬼と急接近
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第五話

「ご主人のパンティーって何色ですか?」

「……」

「ご、ご主人っ」

「……」

「あ、あのっ」

「……」

「無言で蹴らないで下さい、痛いです」

「はぁ、ソーマくんにはデリカシーが足りないわね」


 呆れたように俺のことを見下ろすダリアさん。


「でも気になるんです。

 ご主人が一回くらい着替えを見せてくれればそれで済むんですが……」

「違うわソーマくん。

 アタシが言ってるのはそこじゃないわ」

「どういうことですか?」

「パンティーっていう言い方がイヤらしいわ。

 ショーツって言うべきよ」


 そうだったのか!

 得てして人間は同じことを違う言い方にするだけでも騙されたりするものだ。

 パンティーではなくショーツと言えば、ご主人の下着の色を教えてもらえるかもしれない。


「アドバイスありがとうございます、ダリアさん!」

「ふふっ、いいのよ。

 これからは共に旅する仲なんだからね」

「ではご主人、ショーツの色を教えて下さい」


 俺を険のある表情で見るご主人。

 握りこぶしを作り、わなわなと震える。


「ソーマ、これは暴力ではない。体罰じゃ。

 そなたを愛するが故に、心を鬼にして振るうわしの教育的指導じゃ」

「ご主人、愛するだなんて恥ずかしいですよぅ……。

 ダリアさんが見てます」


 俺は頬を赤く染め、にゅるにゅると触手を動かし照れ隠しをする。

 ご主人は拳に何やら凄まじいまでの力を込め始める。

 一方、ダリアさんは明後日の方向を睨みつけていた。


「ダリアさん、どうかしましたか?」

「お客さんみたいね」


 ダリアさんの視線は道の脇にある茂みに向いていた。


「み、みつかったのニャ!」

「しまったワン……」

「これじゃあ不意打ちできないっぴょん」

「ならば姿を見せるしかなかろう」


 何やら話し声が聞こえ、茂みから4人の獣人が飛び出してきた。


「遂に見つけたのニャ! 吸血鬼めっ!」


 猫の耳、猫の尻尾がついた獣人が何やら言っている。

 その腰には二振りの短剣を差しているのが見える。

 胸、腰部から太ももにかけて、両手首、両足首に金属製の防具を身につけているが、それ以外の部位は露出している。

 扇情的な装いだが、彼女は動きやすさを重視しているようだ。


「吸血鬼がこの辺りにいると聞いて、ずっと待ってたワン!」


 犬の耳、犬の尻尾を持つ獣人が吠える。

 全身を甲冑で固めた彼女は、両手剣を構える。

 露出度は少ない――が、甲冑の胸部の膨らみを信用するなら、彼女は巨乳と見える。


「不意打ちには失敗したけど、関係ないっぴょん」


 兎の耳、兎の尻尾を揺らしながら言い捨てる獣人。

 彼女は左手に弓、右手に矢を持ち、こちらに狙いをつける。

 彼女の左半身は皮や金属でできた防具に守られているが、右半身は防具らしいものをつけていない。

 膝まである長いブーツとホットパンツの間の太ももが目を引く。


「覚悟してもらおうか」


 ゆっくりと口を開く馬耳、馬尾の獣人。

 唯一の男性であろう彼は、両手に重厚な手甲をはめている。

 それ以外は身軽な布製の服を着ているだけだ。

 だが、その身体は筋肉の鎧に覆われている。


「どうやらアタシのお客さんみたいだから、二人は下がってて」


 ダリアさんが一歩前に踏み出す。


「待って下さいダリアさん、ここは俺に任せてもらえませんか」

「な、なにを言っておるんじゃソーマ」


 ご主人が驚きの声を上げ、ダリアさんがこちらに振り返る。


「本気なの?

 あの子たちは、吸血鬼――つまりアタシを狙っているのよ?

 アナタは関係ないわ」

「そんな悲しいこと言わないで下さい。

 俺たち、これから旅を一緒にする仲なんでしょ?

 だったらダリアさんの問題は、俺たちの問題のはずです」

「そうね。

 でも、だからと言ってソーマくん一人に任せるなんて――」

「竜の棲む山へ向かっているのは俺の修行のためなんです。

 彼らの相手をするのはきっと良い修行になりますよ」


 俺の言葉を聞き、少し時間をかけて考えるダリアさん。


「……そこまで言うなら任せるわ。

 でも、ピンチだと思ったらすぐに助けに入るから」

「ありがとうございます」

「ご、ご主人様であるわしを置いて話が進んでおる……」


 ご主人の嘆きは聞こえなかったことにし、俺はずりずりと前に出る。

 ダリアさんがすこし後ずさり、その場を俺に譲る。


「邪魔するならお前も敵だニャ」

「一人ずつでも全員一緒でも変わらないワン」

「倒す順番が違うだけ、やることは同じだぴょん」

「我々の前に立ち塞がるお前は何者だ?

 なぜ吸血鬼の味方をする」


 馬耳の言葉を受け、俺は触手をうねうねと蠢かす。威嚇だ。


「我は淫より出でし、性を貪るモノ。

 汝らの肉体を、我に捧げよ。

 我が名はソーマ、リビドーを与えるモノなり」


 できるだけ威圧的に獣人たちに告げる。


「にゃ、にゃんだって?

 陰より出でし、生を貪るモノ……」

「た、大変だワン。

 吸血鬼と一緒にいるからどんなバケモノかと思ったら……」

「き、危険だっぴょん!

 なんかとてつもなく大物の予感が……」

「うろたえるな。

 やつがどのようなモノであったとしても、我々がすることは変わるまい」


 ククク、俺の口上に獣人たちは命の危険を感じているようだ。

 だが俺の目的はヤツらの命じゃあない。

 猫耳のあの格好、犬耳のあの巨乳、兎耳の太もも。

 俺はこのえろえろな獣人たちの身体を弄ぶのが目的だ!!

 問題はガッチリムッチリの馬耳だが……、なあに、女3人を捕えれば大人しくなるだろう。


「あ、なんかわし、ソーマの目的がわかっちゃったっぽいぞ」

「そーね、ソーマくんはぶれないわね」


 俺の後ろでご主人とダリアさんが何か言っているが、もちろん聞こえなかったことにする。

 俺は、俺があの獣人たちを舐るまで、戦うのをやめない!!


「どうした、かかってこないのか?

 ならば我から行かせてもらおう」


 俺の様子を伺うばかりで襲ってこない獣人たちに、俺の方から触手を伸ばす。


 ダリアさんの身体を弄ろうとしたときに気づいたのだが、俺は女性にえっちなことをしようとする時、身体能力が格段に上がるようだ。

 つまり、相手が女性なら俺の戦闘能力が飛躍的に上がるということになる。


「うー、ニャっ、ニャっ」

「とー、わんっ、わんっ」


 俺の全身から生えている無数の触手を全力で伸ばし、猫耳と犬耳を追う。

 兎耳と馬耳は一旦無視だ。

 兎耳の矢が先ほどから何本か飛んできて刺さっているが、痛いだけで致命傷にはならない。

 馬耳は必死に俺の気を引こうとしているが無駄だ、俺は男には反応しない。


「斬っても斬ってもキリがないニャン!」

「何本斬っても、減らないワン……」


 先ほどから俺の触手は何本も切り落とされている。

 だが、俺の触手は切り落とされてもそのまま伸ばせばいいだけだ。

 もちろん切り落とされた触手の分、俺の体の質量が減るわけだが――他の触手で切り落とされた触手を拾い、体内に吸収する。

 そうすると俺の体の質量は元に戻り、何の問題もなく触手が伸ばせるようになる。


「矢も、斬撃も効果が薄いようだな。

 ――ならばッ!」


 無視していた馬耳が、勢いをつけて俺に突進してくる。


 速い。

 確かに速いが――。


 俺は兎耳に回りこむように近づき、馬耳の突進を回避する。

 兎耳の太もも目掛けて、一瞬で移動したのだ。


「なっ、はやいっぴょ――」


 兎耳の声を聞き終わらないうちに、俺は兎耳を触手で拘束。

 さらに太ももを触手で撫で回し、服の隙間から触手を滑り込ませた。


「まずいニャン!

 助けるニャン!」


 猫耳が慌てて俺の方に向かってくる。

 しかし、俺が狙いをつけたのは猫耳より遠くにいた犬耳だった。

 犬耳は重い甲冑を着て動き回っていたため、猫耳より消耗が激しい。

 今なら容易に捕えられるはずだ。


「クゥーン……」


 悔しそうな、悲しそうな声で鳴く犬耳。

 犬耳は俺の触手による多重包囲から逃げられず、触手に捕まった。

 当然犬耳の甲冑の隙間から触手を潜り込ませる。

 その巨乳を弄ぶために。


「クッ、なんとおぞましいバケモノよ……」


 馬耳が吐き捨てるように言い、俺に突進してくる。

 馬鹿正直な突進を、俺は猫耳の後ろに回りこむことにより回避した。

 そして、猫耳もそのまま捕える。


「ニャ、離すニャ!

 さもないと――ムゴッ!?」


 うるさいので口に触手を突っ込む。

 もちろん他の獣人と同じように、全身を優しく撫でまわす。


「動くなッ!」


 俺は馬耳に向かって命令する。


「くっ……」


 悔しそうな声を漏らすが、動きを止める馬耳。


「ここらで退いては貰えぬだろうか?

 我は元より、汝らの生命を奪うつもりなどない」

「なに?」

「だがこれ以上続けるとなれば――」

「どうなる」

「彼女たちには辛い目に遭ってもらうことになる」

「……外道め」

「何とでも言うが良い、さあどうする?」

「……わかった。今は退こう」


 馬耳の言葉を聞いた俺は、獣人たちを解放する。

 3人とも上気した顔で、呼吸が荒くなっている。

 戦える状態ではないだろうと判断して、3人の拘束を解いたのだ。


「ケホッ、ケホッ。

 さいってぇだにゃぁ……」

「同じところばっかり卑怯だワン……」

「絶対許さないっぴょん……」

「大丈夫か」


 3人の獣人に、馬耳が駆け寄る。

 俺はご主人とダリアさんの元へ戻る。


「どうでしたかご主人!」


 4人の武装した獣人を華麗に無力化した俺。

 これは確実にご主人から誉めてもらえるはずだ。

 ご褒美にご主人のショーツを貰えるかもしれない。


「最低じゃな」

「女の敵ね」


 なぜか二人から軽蔑される俺。

 ゴミを見るような視線を二人から浴びせられた俺は、なぜだか少し興奮した。

 そんな俺を置いて、先に歩いて行く二人。


 俺はご主人とダリアさんを追いかける前に、獣人たちに聞いておきたいことがあった。


「なあ、なんでお前たちは吸血鬼を狙ったんだ?」

「アンデッドと我々は相容れん」


 馬耳が俺の問いに答える。


「何かされたのか?」

「何かされてからでは遅いだろう。

 吸血鬼は生物の血を吸い尽くし、下僕を増やす。

 そんな危険な連中を放っておけるわけがないだろう」


 馬耳の言葉に、俺は返す言葉を持っていなかった。

 ダリアさんは好きだし、良い人だと思うが、過去のことは知らない。

 だから、獣人たちの言うように生物にとっては許しがたい敵なのかもしれない。


「……お前たち、名前は?

 俺は名乗ったんだから、お前たちも名乗るのがスジってもんだろう」

「……しょうがないにゃあ、ネコ子だにゃ」

「イヌ子だワン」

「ウサ子だぴょん」

「……バチョウだ」

「わかった。

 あの吸血鬼の女の人は俺が見ておくからさ、次からは襲いかかったりしないでくれよな」


 俺は獣人たちとの会話を終わらせて、急いでご主人とダリアさんを追いかけた。

 ご主人とダリアさんは少し行ったところで待っていた。


「何を話していたんじゃ?」

「なんでダリアさんを襲ったのか聞いたんです」

「ふむ」


 ダリアさんは何も言ってこない。


「ダリアさん。

 ダリアさんは人間の血液を――」

「吸血鬼はね、血を吸わないと飢えに苦しむことになるのよ」


 ダリアさんが俺の言葉を遮って、口を開く。


「だから――、豚の血入りのソーセージが食べたいわ」

「え?」


 予想外の言葉に俺は固まる。


「もしくはりゅどみんの血が欲しいわね」


 舌をペロリと出し、妖艶な目つきでご主人を見つめるダリアさん。


「ぬえあ?」

「ご、ご主人の血はダメですよ!」

「大丈夫よ。

 指先をほんのちょっとだけ傷つけて、舐めとるだけだからね」


 おお、なんか凄くえろちっくな感じがする!


「ダリアさんが人間の血を吸って下僕を作らないように、ご主人は少しだけ血を分けてあげるべきじゃないですか?」

「な、何を言っておるのじゃ!」

「できればアタシも人間や魔物と共存したいのよ」

「そうですね。

 これからダリアさんと一緒に旅をしていくわけですし、吸血鬼への偏見をなくしていく必要があります!

 そのためにはご主人、ダリアさんの血への渇望を抑えなければいけません」

「ちょ、ちょっと待つのじゃ。

 だったら早く村なり街なりに行って血入りソーセージを食べれば良かろう!?」

「ああっ、血が……今すぐ血が必要だわ……」


 ダリアさんがフラフラとして、俺にもたれかかってくる。

 俺は触手でダリアさんの体を支える。


「ぬ、ぬう~。

 ちょっとだけじゃからな!

 噛んだら承知せぬぞ!」


 ご主人は荷物からナイフを取り出し、人差し指の先をほんの少し傷つける。

 そしてその人差し指をダリアさんに差し出す。


「んふっ、ありがとう」


 ダリアさんはご主人の人差し指を咥え、上目遣いでご主人を見る。

 一旦指から口を離すと、今度は傷口から流れる血を舐めとった。

 ご主人の指はダリアさんの唾液で濡れていく。

 指を咥えられているご主人の頬が赤く染まる。


「も、もういいじゃろ……?」


 ご主人の言葉に反応せず、ダリアさんはなおも舐る。

 今度はご主人の指先に唇をあて、傷口を吸う。

 その際、ダリアさんの口から音が漏れる。


「も、ももももう終わりじゃ!」


 顔を赤くしたご主人が手を引っ込める。

 ダリアさんが名残惜しそうにご主人の指先を見つめる。


 いやあ、実に良いものを見た。

 さっきは獣人たちの身体をたくさん触れたし、ダリアさんと共に行動するようになってからというもの、えっちな出来事が多くて満足だ。


「さ、さあ早く行くぞ!

 これ以上ダリアに血を吸われてはかなわんからな!」

「ふふっ、そうね。

 早く行きましょう」

「そうですね。

 また面倒ごとが起きないとも限らないですしね」


 ご主人の一声で、俺たちは道程を急ぐことにした。

 竜の棲んでいた山――、そこで俺たちはどのような経験をすることになるのだろうか。

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