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触手な俺が魔女の奴隷  作者: よしむ
第八章 スーパーエロ触手大戦F(仮)
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第二十三話

「久々の大地だわっ! 土の感触が最高よっ!」


 大空に向かって大きく両手を広げ、全身で喜びを表現するダリアさん。

 吸血鬼のダリアさんが太陽に向かって感謝をしているように見え、何ともいえない気持ちになる。


 本来はこのマヨット島に寄港する予定はなかったのだが、予定の遅れにより物資が欠乏してしまい、補給しなければいけなくなったのだ。


「ダリアよ、水を差すようじゃが、まだ船旅が終わったわけではないぞ」

「わかってるわ。それでも今は、この大地を讃頌したい気分なの」

「歌うんですか?」

「歌うのよ!」


 いつも以上にテンションの高いダリアさんに、ご主人もアビーも苦笑いをこぼしている。


「それで、お前たちは物資を積み込んでいる間、どうするんだ?」

「俺はスキュラさんについて聞き込みをしたいんですが……」

「ついでに呪いや魔術に詳しそうな者も探したいのぅ」

「それならこの島の原住民、マヨット族を尋ねるのが良いだろう。

 長い間この島は外界と隔絶されていたからな、彼らが操る呪術は根本的に我々が知るものとは異なるらしい。

 スキュラについて知っているかはわからんがな」


 アニキの筋肉が太陽に照らされ、妖しく黒光りする。

 航海中、ずっとふんどし一丁だったアニキの筋肉は、日に焼けて、また違った趣を感じさせる。


「言葉は通じるんですか?」

「彼らは非常に友好的で、良い体をした種族だ。

 こうして船の寄港地としてマヨット島の土地を貸してくれているだけではなく、我々との交易も積極的に行っていてな。

 マヨット族全体が我々を歓迎し、言語も積極的に学んでくれている。

 言葉については心配しなくて良いだろう」

「なるほど、アニキはマヨット族さんたちについて詳しいんですね」

「ああ、一時期ホームステイしていたからな。

 彼らの鍛錬方法は、非常に興味深いものだった」


 過去を見つめるアニキ。

 あの素晴らしい筋肉群は、たんぱく質だけで出来ているのではない。

 アニキの人生で出来ているんだな。


「ふーむ、時間を無駄にするのもなんじゃからな。

 そのマヨット族とかいうのに会いに行ってみるか」

「よし、それならオレのホームステイ先を紹介しよう。

 『アニキの紹介だ』と言えばわかってもらえるはずだ。

 少し待ってろ、地図を描いてやろう」


 アニキは紙に黒くて固そうな太ペンで地図を描き始めた。

 アニキの握る黒くて硬そうな太ペンが紙の上を走るのを見ていると、不思議な気持ちになってくる。


「どうかしたのか、ソーマ?」

「べ、べつに何でもありませんよ!」

「そうかしらねー? どうしたのかしらねー?」


 ダリアさんがニヤニヤと笑いながら俺の顔を覗いてくる。

 クッ、違う! 断じて違うぞ!


「よし、描けたぞ」

「うむ、ご苦労……、って何じゃこら?」


 ご主人が受け取った地図を横から覗き込んで見ると、この島の全体像らしきものと、黒丸だけが描かれていた。

 アバウト過ぎて全く役に立ちそうに無い。


「わかりやすいだろう?

 余計な情報を極限までそぎ落とした結果だ」

「そぎ落としすぎじゃろ……。

 余計なものをそぎ落とすなら、まずはその無駄な肉をそぎ落とせい」

「何だと? このオレの肉体に無駄な肉などあるものか」

「と、ところでアニキは一緒に来てくれたりはしないんですか?」

「ああ、船に物資を運ぶ手伝いをするからな。

 久しぶりにマヨット族の連中とも会いたいところだが、たまにはこの筋肉たちも働かせてやらんとかわいそうだろう?」


 ピクピクと揮える大胸筋と大腿筋に、アニキの男汁が一筋流れる。

 筋肉と筋肉の溝に流れる芳醇な男汁が、なぜか俺にはどんな甘露な果汁よりも魅力的に見える。


「まー、要はあの密林の中を適当にアッチの方に向かって行けばいいんじゃろ?」

「その通りだが、自然を甘く見ると――」

「わかっとるわかっとる」

「うむ、わかっているのならいいのだが……。

 ソーマよ、くれぐれも気をつけるようにな」

「わかりました」


 ご主人がテキトーなので、俺に念を押したのだろう。


「それじゃーれっつらごーじゃ!」

「ん? 行くとこ決まったの? どこどこー?」

「ジャングル探検らしいですよ」


 お気楽なご主人、どこに行くのかもわかっていないダリアさん、何となく流れに乗っているアビー。

 そんな三人を不安そうな目で見送るアニキ。

 そしてあのメンバーと一緒に密林に入らなければいけない俺。

 嗚呼、不安だ。



―――



「迷った」


 自信満々に先頭を歩いていたご主人が、急に立ち止まり言った。


「そうだと思ってたわ」

「っていうか結構前からですよね?」

「まー、ご主人のことだから仕方ないんですけどね」

「な、なんじゃとぉ!?」


 湿気が多く、よくわからない虫や爬虫類が蠢く密林の中。

 方向も見失い、碌な装備も持って来ていない俺たち。


「このままだとその辺にいる虫とか爬虫類とかを食べる破目になります」

「ソーマくんは食べそうだけどね、そういうの。

 でもアタシは遠慮したいわ」

「何を言うんですか! 貴重なタンパク源ですよ!

 それに魔女だってイモリの串焼きとか食べますよね、ご主人!

 あれ? ヤモリだっけイモリだっけ?」

「どっちも食わん」

「ヘビとかトカゲとかイモ虫は焼くとそれなりに食べられるんですけどね」


 アビーの言葉に全員が固まる。

 吸血鬼と魔女が、人間の食暦を聞いて固まる。


「それで、どうしましょうか?」

「テキトーに進めば何とかなるじゃろ」

「何とかならなかったから迷子になってるんでしょ」

「私、帰り道わかりますよ」

「おおっ!」


 さすがアビーだ!

 俺を崇めていること以外は常識人っぽいアビー!

 色々な意味で非常識なご主人と、色々な意味で弱点の多いダリアさんとは大違いだ。


「帰り道がわかるならこのまま進んでも問題ないのぅ」

「そうねー、このまま進んでみましょ」

「……」

「……」


 駄目だこの二人……、早く何とかしないと……。

 助けを求めるように、アビーに視線を送る。


「危険になる前に警告しますから、とりあえずはついていきましょうか」


 困ったような、でも少しだけ楽しそうに笑うアビー。

 俺よりはこういったことに慣れていそうなアビーが言うのだから、ついていってもいいのかな。


「危険になる前に警告して下さいね」

「ええ、もちろんです」


 俺たちを置いてどんどん進むご主人とダリアさんを追いかけ、密林の更に奥へと足を進めていった。



―――



「これ以上は危険だと思います」

「俺もそう思う」


 日はまだ高い。

 密林の様子も先ほどから大きく変わったわけではない。

 だが、明らかに危険が迫っている。


 木々に遮られ、未だ目視には至らないが、遠くから聞こえるぬちゃぬちゃとした水音。

 木々の枝や、幹が折られていく轟音。

 そして、漂う異臭。


 俺ですら危険だとわかる。


「衝撃! 謎の生物が迫る太古の密林! 地上最強の魔女が未開の地を往く! のじゃー」

「いや往かないで下さいよ、密林で謎の生物はマジヤバイですって」

「ソーマくん、ここまで来て謎を謎のままにして帰るなんて、それで良いと思ってるの?

 男のロマンはどこに行っちゃったのよ! 掘られて女の子になっちゃったの!?」

「そ、そんなことないですよ! 掘られてもないですよ!

 そこまで言うなら行きましょう!

 俺も男ですからね、やっぱり謎は解明したくなりますよ!」


 掘られて女の子になったなどと言われては俺も引き下がれない。

 俺は純然たるエロ触手生物、ソーマなのだから!


 ご主人を先頭に、異臭のする方へと進んでいく。

 すると木々が道を作るように折られているのが目に入った。

 その幅は20メートルにはなりそうだ。

 これが一体の生物の仕業なら、その生物はとてつもなく大きいと思われる。


「ふむ、デカそうじゃな」

「やはり戻った方が良いのでは?」

「デカければ良いってモンじゃあないわっ!」


 ダリアさんは大地に足を踏みしめてからテンションが上がっていて、正常な思考ができていないように見える。

 ご主人は元から「地上にわしより偉大な生物などおらんのじゃ!」とか考えてそうだから、平常運転なんだろうけど。

 ここはやはり、アビーの言う通り戻った方が――。


 そんな俺の迷いとは関係なしに、謎の生物が姿を現した。

 横幅は20メートル、高さは30メートルになろうか。

 大きな肉塊から多数の触手が生えている。

 足などは見当たらないが、どうやって移動しているのだろうか……って俺もそうか。


「ソーマくんの親戚? あの大きさだとグランドファーザーって感じね」

「家族との再会じゃな……、感動的な場面に立ち会えてわしは嬉しいぞ」

「俺は生まれた時から天涯孤独だってご主人は知ってるでしょう!」

「なっ、わしはソーマのことを家族だと思っておったのに……」

「あ、いえそういう意味じゃ……」


 巨大触手生物を前にして呑気な会話を続ける俺たち。

 そんな俺たちに、巨大触手生物から謎の白濁液が飛ばされた。


「むっ」


 飛ばされた白濁液はご主人の前で弾け、蒸発する。

 すえたような独特の臭気があたりに広がった。


「攻撃されたぞ」

「そうね、これは積極的自衛権を行使するしかないわね」

「仕方ないですね、でも逃げるという選択肢もあることを忘れないで下さい」


 ため息をつきながら忠告するアビー。

 本来なら戦わなくてもよかった相手だ、アビーの気持ちがよくわかる。

 俺もあんな気持ちの悪い生物となんて戦いたくない。


「クックック、わしに撤退の二文字はなぁい!

 くらえぃ! 我が必殺の、稲妻キィーーック!」


 紫電を纏わせたご主人が空中に飛び上がり、一転、急降下し巨大触手生物に向かっていく。


「陸に上がった吸血鬼の、真の力を魅せてアゲルわっ!」


 闇を凝縮した槍を作り出し、巨大触手生物に向かって投擲するダリアさん。


「散弾の神罰をッ!」


 手にした散弾銃を乱射するアビー。


 そして見ているだけの俺。

 だって俺の触手じゃダメージを与えられそうにないんだもん……。

 それになんかヌルヌルしてそうで触りたくない。


 俺を除く三人の攻撃が同時に炸裂する。

 ご主人の足から発せらた雷撃が巨大触手生物を焼き、ダリアさんの放った黒槍が穿ち、アビーの散弾が肉を弾けさせる。

 三人の攻撃は確かに巨大触手生物を痛めつけたのだが、その膨大な質量故、まだまだ致命傷には程遠いようだった。


「なんじゃこやつは。

 これじゃあただのサンドバッグじゃな」

「そうねー、あの触手は飾りなのかしら」


 いくら攻撃しても目立った反撃をしてこない巨大触手生物に、メンバーの気が緩んだ。

 その緩みを狙ったかのように、巨大触手生物が大量の白濁液を周囲に吐き出す。


 ご主人には案の定粘液は届かない。

 届く前に白濁液は蒸発し、消えうせる。


 だが、逃げ場がないほど広範囲に撒き散らされた粘液に、俺とダリアさん、それにアビーは身を穢されてしまう。

 白濁とした粘液を大量にかけられたダリアさんとアビー。


「うえぇ……」

「きゃつを始末したら、みんなで水浴びじゃな」


 ご主人が今度は拳を打ち込み、巨大触手生物の肉を破砕していく。

 汚れてしまったが不快なだけ――、このまま殴り続けていれば戦いは勝利に終わる。

 順調に触手生物にダメージを与えているご主人を見て、そう思った。

 だが、そうではなかったのだ。

 白濁液を浴びたダリアさんとアビーは、顔を紅潮させ、身をうずくまらせている。


「ダリアさん、アビー! どうかしたんですか?」


 もしや、この白濁液には何らかの毒があるのだろうか。


「くっ……、見た目通りのエロ生物ってわけね……」

「そう……、みたいですね……。

 神以外の者に、このような……」


 とにかく戦闘を続けるのが困難な様子なので、俺は触手を伸ばし、ダリアさんとアビーを巨大触手生物から離そうとした――のだが。

 巨大触手生物から伸びてきた触手が、ダリアさんとアビーを先に捕まえる。

 あっと言う間に上空に運ばれた二人。

 そして触手をいやらしくくねらせ、ダリアさんとアビーの体をまさぐっていく。


 こと、ここに至ってようやく俺も気づいた。

 この巨大触手生物は、見た目だけじゃなく、性質も俺と近いものなのだろう。

 つまり、こいつはただの巨大触手生物ではない。

 エロ巨大触手生物なのだ。


 このままでは俺のダリアさんと俺のアビーが、目の前で陵辱されてしまう。

 それは何としても避けなくてはならない。


 俺は触手生物としてのプライドを賭け、目の前の醜い愚かな巨大触手生物に触手を伸ばすのであった――。

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