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触手な俺が魔女の奴隷  作者: よしむ
第七章 大後悔時代
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第十八話

 見渡す限りの青。

 空の青と海の青に挟まれた一本の線は、近くに陸地がないことを主張している。


 一週間程港町でダラダラと過ごした俺たちは、コルラートさんの交易船に乗せてもらい、外洋に出た。

 客人兼護衛として乗船している俺たちは、特に仕事が割り当てられるわけでもなくのんびりと船旅を楽しんでいる。


 俺は船首に立ち、潮風を体一杯に受ける。

 陸地が一切見えないことに俺は少しだけ不安を覚えるが、それでも潮風と暖かな陽気は気持ちが良い。

 水平線を眺めていると、巨人さんの青いパンティーを思い出した。

 トゥルトゥルの肌触りが俺の触手に甦る。


「全ての生命は海から生まれたという話を知っているか?

 ここはオレと貴様が再会するのに、最も相応しい場所だな」


 突然俺に話しかけてきた渋い声。

 この声に聞き覚えがあった俺は、胸にこみ上げる喜びと共に振り返る。


「アニキ! どうしてここに!?」


 振り返った先にいたのは、ふんどし姿のマッチョなアニキだった。

 竜が棲んでいたとされる山で俺と死闘を演じた、ウスベルクのドラゴンフォースが一人、マッチョなアニキ。

 彼がなぜこんなところにいるのだろうか。


「フッ、貴様との闘いを経て、オレもまだまだ鍛える必要があると思ってな。

 以前から筋肉親交のあったコルラートに頼み、船に乗せてもらったのだ。

 心身共に鍛えるためにも、オレは捕ゲイに励むつもりだ」

「そうだったんですか。でもこの船は交易船ですよ? 捕鯨船じゃありません」

「己の銛が一本あれば、補ゲイするのに支障はないさ。

 道具や設備に頼ろうとするのは、肉体と精神が貧弱だからだ。

 どのようなことも、肉体と精神が伴っていればやってやれないことはない」


 さすがアニキだ。

 鍛え抜かれた己の肉体と精神のみを頼りにする。

 これが本当の男の姿というものだろう。


「アニキはやっぱり凄いですね」

「何を言うか。己を高めようという意思がある限り、俺たちは同士だ」


 当たり前のことを言っているだけ――、アニキの自信に裏打ちされた言葉は、いつも俺の魂を奮わせる。

 遠くを見つめるアニキの眼には、常に真実が映っているに違いない。


「嵐が来るな――」


 雲一つない晴天の空だというのに、アニキは厳しい顔をして呟いた。



―――



「帆を畳めーー!」

「マストが折れちまうぞっ! 早くしろ!」

「くそっ、なんでこんな急に――」


 アニキの言っていた通り、嵐がやってきた。

 俺たちはクルーから船室に入るよう言われ、船室に集まっていた。

 今はご主人、ダリアさん、アビー、そしてアニキと一緒にいる。

 甲板から聞こえるクルーたちの声は焦燥しており、状況がかんばしいものではないと伝えている。


「サイアクだわ、船なんて二度と乗らない……うっ」


 ダリアさんがいつも以上に青い顔をして呟く。

 どうやら船に乗るのははじめてらしく、酔ってしまったらしい。


「それはいいが、船に乗らねば帰ってこれないじゃろう」

「そうね、新天地で暮らすことにするわ……。

 酔わない乗り物が発明されるまで、お父様ともお別れね……」

「吸血鬼のダリアさんが言うと、冗談に聞こえませんね」


 外から聞こえてくる声とは対照的に、ここにいるメンバーに緊張感はない。

 ただ一人、腕を組み、目を瞑り、じっとしているアニキを除いて。


「ご主人、外は大丈夫なんでしょうか?

 俺たちも何か手伝った方がいいんじゃないでしょうか?」

「わしたちが出て行っても邪魔になるだけじゃ。

 彼らに任せておいたほうが良い」

「うむ。海の男たちを信じるのだ。

 彼らもまた、海の荒波に鍛えられし男たち。

 この程度の嵐、彼らなら乗り越えられるに違いない」

「そういえば、アニキはよく嵐が来るってわかりましたね」

「うむ。海と風と一体になることで、ある程度天候を読むことができるようになる。

 オレも昔は捕ゲイのために、よく船には乗っていたからな。

 だが、この嵐は少し――」

「――――」


 アニキの声と重なるように、外から歌が聞こえる。

 美しく、心の裏側を撫でるような歌声。


「出番が来たようじゃな」


 ご主人とアビーが立ち上がり、扉へ向かう。


「自然のものではなかったか」


 ゆっくりと腰を上げ、銛を手にするアニキ。


「あ、あたしも行かなきゃ……だめ?」

「当然じゃ」

「う~、海に落ちたら助けてね、そーまくん……」


 よろよろとダリアさんが立ち上がる。

 ダリアさんはカナヅチなのかー、などと考えながら、俺もみんなと一緒に甲板へ向かった。


 甲板へ出ると、ほとんどの船員たちが呆けていた。

 叩きつけるように降る雨の中、澄んだ歌声が響き、船員たちは一様に歌声に耳を傾けている。

 中には耳を塞ぎ、うずくまる者もいたが少数だ。

 その異常な光景に、俺は息を呑む。


「ど、どうなってるんですか?」

「この歌声には魔力が篭っている。

 恐らくは人魚……、セイレーンと呼ばれる者たちの仕業だろう」


 心の裏側を撫でられるような、そんな怖気を感じたのは魔力によるものだからか。


「抵抗力の低い者たちは歌声だけで心を奪われてしまっているようですね。

 我々は神のご加護により守られていますが――」

「要は元凶を潰してしまえば良いのじゃろう?」

「そうなのだが……」

「問題でもあるのですか?」

「船乗りは信心深い。

 精霊に近い存在の人魚を殺してしまうと、心象を損ねるかもしれん」


 船上で船乗りの機嫌を損ねるのは危険だと、アニキは暗に伝えようとしているのだろう。

 俺たちが船員に襲われても撃退することはできるだろうが、船を操ることはできない。

 俺たちの生死を握っているのはクルーたちなのだ。

 できるだけ機嫌を損ねるようなマネはするべきではない。

 だが、このままでは――。


 突如、甲板に何かが着地する。

 それは下半身が魚鱗に覆われた、人魚たちだ。

 甲板に着地した衝撃で、なにもつけていない胸が大きくバウンドする。

 躍動するおっぱいに、俺の陰鬱な気分が吹き飛んだ。


「人魚たちだ。船員が海に引きずり込まれるぞ!」


 アニキは甲板に着地した人魚の一人に駆け寄り、右の拳で殴りつける。

 アニキの大きな筋肉により生まれたエネルギーは、アニキの見事な体の動きにより右拳に一点集中し、人魚の頬を捕えた。

 当然、アニキの美しい肉体から放たれた一打は、人魚を船外へと吹き飛ばすには充分な威力だ。


「悪いがオレは、男女平等主義なのでな。女性であろうと容赦はせん。

 ……だがこのままでは不味いな。この“歌”を何とかして止めなければ。

 このまま船足が止まっていては、人魚たちの襲撃は延々と続くぞ」

「殺さないようにして、“歌”を止めればいいんですね?

 それなら俺に任せてください」

「自ら言い出したということは自信があるのじゃな。

 ならばソーマよ、“歌”の主はそなたに任せる。

 わしらは甲板に乗り込んでくる人魚を海に叩き返すことに集中しよう」


 言いながらご主人が人魚に近づき、抱きしめるようにかかえ、力一杯海に向かって投げる。

 ご主人と人魚さんのキャットファイトをこのまま楽しみたいところだが、今は状況がそれを許さない。


「う~、気持ち悪いわ……。

 アタシには期待しないで……」


 ふらふらしながらも人魚さんに近づくダリアさん。

 襲いかかってくる人魚さんの攻撃を、よろよろと回避している。


「神が事を成す時間を稼ぐ。敬虔な信者たる私に与えられた試練――」


 アビーが人魚さんの腕を捻り、人魚を甲板に叩きつける。

 そのまま首の裏側に手刀を見舞い、人魚さんの意識を刈り取る。


「――この程度、問題ありませんね」


 アビーの頼もしい言葉を聞きながら、俺はその場を後にする。

 歌声は船首の方から聞こえてくる。

 この美しい声――、さぞ本体も美しい女性なのだろう。

 俺の胸は期待に膨らむ。


 船首には二人の女性がいた。

 片方は鳥の翼と、鳥の下半身を持つ女性。

 もう片方は下半身が魚の人魚だ。他の人魚たちと違うのは、唯一人ハープを持っていること。

 嵐の中、目を閉じ、歌う二人の姿は現実感を希薄にする。

 幻想に迷い込んだような錯覚に陥った。

 

 彼女たちを前にするまで、歌っているのは一人だと思っていた。

 二人の声は絡まりあい、一つに解け、俺の心に染み込んでくる。


 ――これ以上、彼女たちの歌声に耳を傾けてはいけない。  

 俺は萎えそうになる意志を、彼女たちのおっぱいを見ることで奮い立たせる。

 あのおっぱいをこれから味わうのだ。

 呆けている暇など、一秒たりとも無い!


 俺は半鳥半人の女性の、ツンと天を仰ぐかのような生意気なおっぱいに向かって触手を伸ばす。

 勿論隣の人魚の女性の、重力に負けそうになるほど育っている大きなおっぱいに向かっても触手を伸ばす。

 伸ばしながらも触手の先端を吸いつけるように形を変えていく。


 殺さないで“歌”を止めることなど簡単だ。

 喘がせて、“歌声”を“嬌声”に変えてしまえばよろしい。


 二人の眼前まで触手が迫ったその時、二人の目が開く。

 その瞬間、彼女たちの前には水が勢いよく噴出し、俺の触手の進行を阻んだ。

 触手に力を入れ、マッシブに突き入れようとするが、水の勢いは激しく、俺の触手は弾かれてしまう。


 何らかの魔術のようだが、呪文を詠唱している様子はない。

 今も彼女たちは歌を紡いでいるのだから。

 精霊に近い存在だとアニキは言っていたか、それなら水を意のままに操れても不思議ではないのかもしれない。


 だが俺の触手は転移能力を備えている。

 噴出する水の壁の内側に触手を転移させれば、彼女たちの体を弄ぶことなど容易だ。


 そう高をくくっていた俺だが、突如として何かの力の奔流を感じ、その場から跳躍して逃れる。

 何かの奔流に巻き込まれた触手が切り裂かれる。

 反応が間に合ったため体の方は無事だったが、俺は肝を冷やした。

 何かを飛ばされたわけでもないのに、急に切り裂かれた。

 目には見えていないが、何かされたのは間違いない。

 これも魔術なのか?

 その疑問を考察する暇を、彼女たちは与えてくれなかった。

 次々と繰り出される力の奔流。

 俺は必死に跳躍し、ギリギリのところで回避する。


 雨に濡れた甲板、荒れた海に揺さぶられる船。

 いつ足を滑らせて、回避に失敗するかわかったものじゃない。

 ならばさっさと触手をあの水の壁の内側に早く触手を転移させるべきだ。


 噴出する水の壁は、大量の泡を含んでおり、二人の姿を見えにくくしていた。

 だが、ダリアさんの部屋やアビーの部屋に触手を転移させてセクハラしていた経験が生きた。

 見えていなくても距離感さえ測れていれば転移させるのに問題はない。


 俺はありったけの触手を水の向こう側に転移させた。

 突如として現れた大量の触手に驚いたのだろう、一瞬、旋律が乱れる。

 そのまま触手を彼女たちの体に巻きつける。

 切り裂かれたら不味い、ここは紳士ぶっている場合じゃない――多少乱暴になってしまっても仕方がないだろう。


 半鳥半人の方は、あの天を貫く生意気な部分に吸い付いてやる。

 そのまま口に触手を突っ込み、歌を止める。


「ひゃうぅっ、ふもごっ!?」


 歌声がやみ、彼女の口からは嬌声が漏れる。


 同時に人魚の方にもだ。

 こちらはたわわな部分を絞るようにして触手を絡ませる。

 同じように口にも触手を突っ込む。


「ふえぇ……、んもっ!」


 こちらも歌声がやんだ。


 そしてすぐに水の噴出が止まる。

 どうやら精神を集中しないと水を操れないらしい。

 未だに触手が切り裂かれないということは、あの力の奔流も使えないのだろう。

 歌声を止めたが、魔術は少々厄介だ。

 人魚たちを追い払い、ご主人たちがこちらに駆けつけてくるまで、俺は彼女たちの精神集中を妨げ続けなければならない。


 触手で翼に絡みつき、足を固定し自由を奪う。

 腕に触手を絡ませ、魚の尾ビレが地面に着かない位置まで吊り上げる。


 ご主人、ダリアさん、アビー、アニキ。

 急がずゆっくりなるべく遅く時間をかけてこちらに来てください!

 俺は大丈夫ですから!


 そう心の中で叫び、俺はたっぷり時間をかけて、彼女たちの体を愉しんだ――。

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