第93話/舌はそんな動きしないだろ、普通。
経験値5倍隠しエリア。
これだけおいしい状況なのに、やたらと人が少ないと思ったら、リスクがるようだ。
何でもアチャーが言うにはこのエリア、入ったPT全員が2レベル以上上がらないと出れないらしい。
ちなみに、現状でのレベルアップはこんな感じ。
アチャー・・・2レベルアップ
アシュレー・・・5レベルアップ
俺・・・マイナス脱出!
ちょっ、アシュレー5レベルアップとか・・・マジで?
あれ?俺、レベル抜かれたんじゃね?これ。
そしてタイミング悪い事に、アシュレーが後1時間程でログアウトしないといけないそうだ。
何でも、使ってる設備の予約時間があるらしい。
ネカフェでも使ってるのだろうか?
そんなわけで、俺達は物凄く焦っている。
一応、このエリアでもログアウトできるそうだが・・・。
一度試したアチャ曰く。
「他のエリアとは違い、アバターはいつまでも残り続け、死亡でもしようものなら通常の約10倍のペナ
ルティを受けるぞ!」
との事・・・というか、それを受けたのかよアチャー。
そんな状況で50分程経った今、俺達は少しでも効率を上げる為に、徐々にエリアの奥へと進んで来たのだ
が・・・。
「時にマスター。君はゲームを楽しんでいるか?」
「この状況でその言葉って、いったいどういう意味だ?というか、助けて!」
唐突に意味深げな事を聞いてくるアチャー。
ちなみに俺は今、【カメレン】の舌によって逆さ吊りにされている。
この【カメレン】、見た目はどう見ても大きなカメレオンなのに、何故か舌が触手の様な動きをする。
ぬるぬるの舌の割に、俺の足に絡みついて程けない。
俺はガガールが落としたグローブを装備して、絡みついた舌を殴っているのだが、全然効いてない。
「すまない、今助け・・・むっ?マスター少し待て。どうやらこちらも囲まれたようだ。」
「え?ちょっ!マジで?早くしないと俺のHPバー無くなるんだけど?」
ヒートバトルで回復するも、吊るされている間継続でダメージが増えて行く為、地味に削られている。
しかも、逆さ吊りだからポーションを飲もうにも飲めない。
え?何で飲めないかって?
前にやったら鼻に逆流してきたんだよ・・・しかも、回復失敗扱いだし。
「KAINお兄さん!今、助けます!ライトニング・ソニックアロー!」
「ちょっ!アシュレー!それははははは・・・うわっ!」
アシュレーの放った攻撃魔法は、雷属性の対象に麻痺を与える攻撃なのだが、ここで思い出してもらいた
い。
俺は今、ぬるぬるの舌に捕らわれていたわけだ。
そんな状態で雷属性の麻痺攻撃などしたらどうなるか・・・答え、一緒に感電。
しかも、麻痺で拘束が緩んだ為、頭から地面に落ちる事になった。
はっ!それよりもカメレンは?
よし、まだ麻痺ってるな。
「今までのお返しだ!オロオロオロオロー!」
「グゥゥゥ。」
ダメだ、オラオラって言うつもりが、舌が痺れてろれつが回って無い。
まぁ掛け声はともかく、それでもちゃんとカメレンを倒す事は出来たので良しとしよう。
「ごめんなさい、KANIお兄さん。」
「いあ、らいじょうぶ、らいじょうぶ。」
大丈夫って言うつもりが、だめだ当分痺れてまともに話せないかも。
さて、俺を見捨てたアチャーは・・・お?
「我が矢は、外す事無し!グリフォン・ザ・アロー!」
≪スキル発動・アローレイン≫
おお!アチャーが上空に矢を放ったと思ったら、雨の様に広範囲に矢が降り注いでる。
どうでもいいけどアチャー、技名違くないか?
魔法と違って、武器攻撃スキルだから初動モーションさえ起こせば、発動はするけどさ。
お?どうやら今ので2レベル目が上がったみたいだ。
「OK!ノルマ完了だ!」
「良かった。どうにか間に合いそうです。ごめんなさい、急ぐので私はこれで!」
俺の言葉に喜んだのもつかの間、アシュレーはタウンへといち早く戻ってしまった。
まぁ残り5分を切っているし、仕方ないな。
「それで、マスターはどうするのだ?」
「ん~このままやってもいいけど・・・ん?訂正、【ロックダンテ】に行こう!CBに呼ばれた。」
フレンド掲示板に反応があったので、見たらCBからの呼び出しだった。
至急の呼び出しなんて、一体なんだろうか?
俺とアチャーは一路、【ロックダンテ】へ向かう事にした。




