第87話/レべリングするとよくあるよね、こういう事。
「はぁ、はぁ、はぁ。も、もう無理。」
「いいから、速く走るなの!」
前回、フィールドボスの【クリュティオス:レベル35】と目が有ってから必死に逃げているわけだが・・・そろそろ体力が限界です。
正直、リアルじゃ一歩も歩いてないのに、疲れるってどうなのよ?
恐るべし、VR。
「ガァァァ!」
「うおっ!ちょ、マジで勘弁してよ!」
少しでも休もうとすればこの通り、俺の身長よりもでかい棍棒が降ってくる。
一応、おっさんとシノが攻撃してるはずなんだが・・・HPバー全然減ってない気がするのは気のせいか?
「おい!おっさん!全然HPバー減ってない様に見えるのは気のせいか!?」
「わかっておるが、お前さんを追って動きまわるからなかなか大技が決められん!何とか連れてこれんか?」
マジで?・・・ぶっちゃけ逃げるだけで限界ですよ?
というか、そもそも大きさが違うからか、俺が全力で逃げた距離を一歩で詰めて来るんだけど・・・。
正直、この状況でどうしろと?
「殿っ!避けるなの!」
「へ?ブッ!」
横薙ぎ・・・だ・・と?
今まで振り下ろし攻撃しか無かったから、油断してた。
突然の横薙ぎ攻撃を喰らった俺は、思いっきり吹っ飛ばされた。
HPバーは辛うじて、赤色のゾーン半ばで何とか止まったけど・・・。
ぶっちゃけ、これピンチじゃね?
おまけに吹っ飛ばされた衝撃で、頭がふらふらする。
「殿、生きてるなの!?」
「生きてるけど、ふらふらする。クリュティオスは?」
駆け寄ってきたシノからポーションを受け取りつつ、どうにか体を起こす。
どうやら、おっさん一人で押さえているみたいだが、破られるのも時間の問題だろう。
「シノ。秘奥義は使えないのか?」
「使えるけど、多分効かないなの。」
シノによれば、クリュティオスは炎属性らしい。
秘奥義【幻凍打滅】は氷属性の為、相性が悪いらしい。
「ぐおっ!」
「おっさん!」
マジかよ・・・壁のおっさんがふっ飛ばされるとか。
あれ?壁が吹っ飛んだ?ってことは・・・。
「ガァァァ!」
「やっぱりか!」
おっさんを吹っ飛ばしたクリュティオスは、そのままこちらへと突進してくる。
こっちのHPバーの回復率は、ようやくイエローからグリーンになろうと言う所。
あれ?これ・・・攻撃喰らったら終わりじゃね?
そう思った俺に向かって迫ってくる棍棒が、俺が意識を失う前に見た最後の光景だった。