第80話/君を失いたくないんだ!・・・あの最高のモフモフを!
さて、こちらの存在などスルーで、目の前では狐仮面とキメラの戦いが始まったわけだが・・・。
「おい、アチャー。いい加減、正気に戻ったらどうだ?」
「はっ!?すまん、取りみだした・・・それで、マスター。この状況、どうするのかね?」
アチャーが言うには、あの狐仮面こそが独自プログラムを倒して回っている、張本人であろうと言う事だが・・・。
いや、わかるんだよ?
俺が倒さないと、マリアの権限が戻らない事も・・・でもさ、正直あれに勝てる気がしない。
そもそも、互角に戦えてる狐仮面がおかしいんだ。
CBですら、手が出なかったというのに・・・ここはあれだな。
「とりあえず、被害が無いようなら・・・静観してようか?」
「それでいいのか?マスターがそれで良いのであれば構わぬが。」
だって、下手に死んで未知のデスぺナ受けたくないじゃん?
それに、こうしている間にも何か着々とダメージ与えてるみたいだし・・・。
「して、我が主よ。先程、あやつが行った事だがのぅ。」
「ああ。そうだった。玉藻、結局あれは何なの?」
玉藻の説明によると、どうやらシステムデータに異常な動きが発生したらしい。
「仮にも、わらわもシステム配下の物ゆぇ。多少なりにも、そういう影響を受けるようじゃのぅ。」
「なるほど・・・システムデータか。改竄でもされたのか?」
玉藻が言うにはどうやら、違うらしい。
どちらかと言うと、何処かにリンクが繋がった様な流れだとか・・・ん?リンク?接続?
「時にマスター。玉藻御前はそのままで良いのか?」
「はて?そこの阿呆。わらわが居ては問題でもあるのかぇ?あるなら言うてみよ。」
あ・・・玉藻の中でアチャーへの呼び方が阿呆で定着してる。
って、そうじゃなくて・・・どういうことだ?玉藻が居たらまずいというのは。
「アチャー、どういうことだ?」
「いや何。私達のデータはサーバーに保存されているから問題ないが、剥き出しのペットでは最悪、死亡判定になるのではないかと思ってな。」
死亡判定?剥き出し?・・・はっ!そうじゃん!
キメラのライフは・・・やばい、半分切ってる。
「玉藻、急いでカプセルに戻ってくれ!」
「我が主よ。なにゆえ、急にそのような事を申す?」
くそ、独自プログラムが消滅したら最悪、ここも爆発するかもしれないのに。
ダメだ、玉藻に説明してる時間が無い。
「ふむ。・・・マスター、私がアレの相手をして時間を稼ごう。しかし、余り余裕はないぞ?」
「マジか!すまない。頼む、アチャー。」
見かねたアチャーが時間稼ぎの為、狐仮面へ攻撃して時間を稼いでくれた。
してくれてたのだが・・・。
「何!?馬鹿な、避けただと?」
「誰か、知らないけど。邪魔するなら容赦しないよ?」
狐仮面はよっぽどのユーザーみたいだ、腕だけは一流のアチャーが放った矢を全て避けている。
それも、キメラの攻撃を避けながら。
このままじゃ・・・キメラが倒されるのも時間の問題か。
「玉藻!頼む、何も言わずにカプセルに戻ってくれ!俺は、まだお前を失いたくないんだ!」
「主。・・・仕方ないないのぅ。我が主にそこまで言わせては従わぬわけにはいかぬのぅ。」
アイテムストレージを開いて、すぐさまカプセルを出す。
地面に出たカプセルは人が入れるサイズまで巨大化すると、蓋を開けた。
玉藻はしぶしぶと言う感じで、カプセルの中に入ると蓋が閉まり、元の手のひらサイズに戻る。
よし、後はアイテムストレージに戻すだけだ。
「いかん!マスター。もう、こちらは持たんぞ?」
何?あ!やばい。キメラのHPバーが2ドットくらいになってる。
狐仮面を足止めしていたはずのアチャーは、何故か檻の様な物に捕まってるし。
「くそ!間にあえよ!」
<ク・・・ワレが・・ヤラレルトハ・・・ソウカ、キサマ・・キュベ・・・。>
すぐさま玉藻の入ったカプセルを拾い、アイテムストレージに投げ込むのとキメラが崩れ落ちたのは、ほぼ同時だった。
「よし!間にあっ・・・。」
<世界を終わらせる5つ目の大罪が封印されました。>
そんなシステム音と共に、俺は最後まで言い切る事無く意識を失った。