第79話/辿り着いたそこは・・・病人の独壇場でした。
さて、ここは何処だろう?
どう見ても、剣と魔法の世界って雰囲気じゃないよね。
俺の前に広がるのは、東京都心を思わせる高層ビル群・・・の廃墟。
「うむ。どうやら、わらわの文字があっていたようじゃのぅ。して、ここは何をする所かぇ?」
「いや、俺にもさっぱり・・・。」
それにしても、この光景を一言で表すなら、ジャングル東京!
あれだね、人類が滅亡した後の世界とかって、こんな感じなのかね?
アスファルトがひび割れて草が生えてるし、ビルの壁には蔦が。
「・・・まるで、終わった世界の先みたいだな。」
「同感だ。そして、マスターに相談なのだが、あれは倒してしまっても構わんかね?」
うぉっと!アチャー・・・居たんだね。
声がしなかったから、てっきり置いてきたと思ってたんだけど・・・。
それにしても、あれとは一体?
【ネメアのライオン:レベル80】
・・・マジかよ。
いやいや、アチャーさん?
いくら何でも、これは無理だろ。
遠目で見ても、ライオンとわかるってことは・・・あれ、相当でかいよね?
というか、隣にある高層ビルの半分くらいの高さに頭がある時点で、無理じゃね?
「ふっ。足止めなど、造作も無い事だ。」
ああ、なるほど。勝てないから死亡フラグを立てたんですね・・・。
その死亡フラグネタがわかる俺もどうかと思うけど。
「我が主よ。この阿呆はともかく、見つかる前に逃げた方が良いのではなないかぇ?」
「賛成。とりあえず、町に・・・あれ?そういえばここからってどうやって脱出するんだ?」
見た感じ、転送門的な物は見つからないし、アチャーはどうやって今まで町に戻ったのだろうか?
「なぁ、アチャー。町ってどうやって戻るんだ?」
「ふっ。簡単な事だ。そのエリアのボスを倒せば自動的に戻れる。・・・しかし、こいつは少し骨を折りそうだ。」
え?何その死亡フラグ・・・ここで死に戻りとか、洒落にならないぞ?経験値的な意味で。
「ふむ。主よ、どうやら先客が居るようだのぅ?ほれ、あやつの足元を見てたもう。」
「え?あ、マジだ。しかも、何か押してないか?」
成り行き上、討伐の為に徐々に近づくアチャーについて行ったら、ライオンの足元に攻撃エフェクトが出ているのが見えた。
しかも、時折ライオンの方がノックバックしてるし・・・戦ってる人、どれだけ強いの?
「しかし、これでは下手に援護もできん。どうしたものか。」
「いや、アチャーは攻撃しない方がいいとガチで思う。俺、何回も死にかけたし。」
だって合図無しにいきなり矢が飛んでくるし、避けろと言われてもタイミング遅いし。
本当、よく俺今まで生きてたな。
ん?何か、ライオンの動きがおかしい様な?
HPバーはまだ、2本あるから倒れるわけ無いし・・・というか、いつの間にかこんな近くに来てるけど、大丈夫か?
俺、タゲられたら即死できる気がする。
そして、この近くまで来て驚いた事がもう一つ。
ライオンを相手にしてるプレイヤー一人だ。
え?あのプレイヤーどんだけ、レベルあるの?
と言うかですね、強い人ってどうしてこういう格好の人ばかりなんだろうか?
今戦ってるプレイヤーの見た目が・・・全身黒のコートに狐の仮面とか。
この見た目の痛さなら、アチャーといい勝負じゃないか?これ。
「さて・・・そろそろ、正体を見せてもらうよ?」
「・・・あやつ、何をする気かのぅ?」
ん?玉藻の発言はどういうことだろうか?
俺が感じる限り、必殺技的にスキルを発動して倒すんじゃないかと思うのだが・・・。
まぁわからなければ、聞いて見ればいいか。
「玉藻。一体、どういう事だ?」
「ふむ。我が主にはわからぬようじゃのぅ。まぁ見ておるがよいぞ。今にわかるゆぇ。」
見てればわかるって言われてもな・・・。
変わった所と言えば、黒服・・・狐仮面と呼ぼう。
狐仮面が真横に伸ばした右手から、包帯が解けてるくらいか。
それにしても、包帯とか・・・現役な人ですか。
「僕のダークハンドにひれ伏せ!」
あれ?このセリフ、どっかで聞いた事ある様な・・・。
≪スキル発動・ブレイクスルー≫
「なっ?マジか!」
「何!?馬鹿な。ありえん!」
狐仮面がスキルを発動した瞬間、ライオンの姿が一転した。
ライオンだったモンスターは、今ではその背中に翼を生やしてる。
こんなモンスター何処かで見た事ある様な・・・ああ、キメラだ!
それにしても隣で姿が変わった事にアチャーが驚いているが、俺も違う意味で驚いた。
だって、どう考えてもあのスキル・・・俺のブレイクダウンに似てるし。
<何故、使い手が二人もいる?クィーンは一人のはず・・・。>
おそらく元ライオンが発しているだろう声が、システムボイスの様に聞こえてくる。
あれ?何だろう、このデジャブ・・・まさかと思うけど。
【ネ9a5あiおん:unknown】
やっぱりでした。
おい!何で、こんな所に独自プログラムが居るんだよ!?
「・・・主よ、ここは本格的に戦闘は避けるべきだと思うのだがのぅ?」
「いや、俺もできるなら避けたいんだけど・・・。」
隣で、アチャーは未だに固まってるし。
それに、アチャーの言うとおりなら・・・こいつを倒さないと俺、戻れないんだよね?
「そんな事、僕にはどうでもいいよ。それよりも君、倒すからね?僕達の未来の為に。」
<ふっ。クイーンの手した等、我が敵ではないわ!>
あれ~?こっちを余所に、狐仮面達はやる気満々なんだけど・・・俺、生き残れるかな?
ここはやはりお約束の・・・俺、帰ったら玉藻を思いっきりモフるんだ!