第70話/黒歴史・・・それは誰もが通る道。
「・・・どうしてこうなった?」
「あ!誡~。ねぇねぇ、一緒に飲も?」
現状、俺の目の前には酔っ払いが3人。
おかしいな、俺が風呂に行っている間に何があった?
「ゆめちゃん、これどういう状態?」
「あははは・・・まぁいつもの事よ。」
なるほど。むしろ来夢は今回の被害者か。
まぁ状況はなんとなく、理解できる。
大方、飲み始めた親父とおじさんに、来夢が巻き込まれたんだろう。
・・・というか、俺が風呂からあがるまで、待てくれてもよかったんじゃないかな?
ともかく巻き込まれる前に飯食って、さっさと逃げますか。
「それにしても来夢君は、また一段と可愛くなりましたなぁ。」
「ははは。なら、どうです?誡君のお嫁さんに。」
おい!そこ、酔っ払い二人組!何不穏な言葉を発している。
「いいですな。おい、誡!結婚式はいつにする?」
「・・・親父。寝言は寝て言え!というか、来夢は男だろうが!」
というか来夢・・・何でこっちを見つめている?
ん?違うか、こいつの場合、完全に酔っぱらって状況がわかってないのか。
「いや、誡君。性別は問題ではないさ。ほら、今何処かの国だと男同士でも子供ができる技術があるとか・・・。」
「いやいや、それ作った国馬鹿だろ!?というか、そもそも性別が問題だよ!」
何だろう、ダンジョンでボスを相手しているよりも疲れる・・・誰か助けて。
「誡・・・僕じゃ、ダメ?」
うっ・・・こいつ、状況わかって言ってるのか?
いや、わかってないな・・・と言うか、弱いなら飲むなよ、こっちの後始末も考えてくれ。
「はぁ。来兄も誡兄も相変わらずなのな。」
「あ!由梨ちゃんお帰り!」
ん?この声は・・・ああ、神は俺を見捨てなかったようだ。
振り返った先に居たのは、セーラー服に身を包んだ女の子だった。
彼女は、桜木 由梨、来夢の妹だ。
そして、俺にとっては神とも呼べる常識人だったりする。
「よ!とりあえず、座らないか?そして、お前の兄貴を相手してくれると助かる。」
「・・・誡兄、また私を盾にする気かよ。そもそも、来兄がこうなったのは誡兄にも責任あるんだからね?」
はい?それはどういうことだ?詳しい説明を要求する!
俺と来夢の間に座った由梨は何か呆れるようにため息ついてるし・・・俺、何かしたかな?
「・・・はぁ。覚えてないの?来兄が男の娘を辞めようとした時、そのきっかけを潰したの誡兄でしょ?」
え?何それ、覚えてない。
由梨の説明によると、こうなるらしい。
小学校に上がった来夢が、男の娘だと知れ渡りいじめられる。
↓
いじめが嫌で、来夢が男の娘を辞めようと決意。
↓
男の娘を辞めようとしてた来夢を俺が励まし、いじめてた相手をフルボッコ。
↓
結果、男の娘化が進み、現在の来夢
・・・過去の俺、どうしてそんな事をした。
「ああ!それ、私も覚えてるよ。確か、来夢をいじめる奴は俺が倒すとか、言ってたんだよね。懐かしいなぁ。」
おい!俺の黒歴史!何てことをしてくれた。
今思えば、あの頃の俺、中二的な病気だったからな・・・多分、カッコ付けのつもりだったんだろうが。
・・・何て言う爆弾を残してくれたんだ、過去の俺。
「ちなみに、来兄はそのせいで誡兄に胸キュン状態になったわけだけど?」
「・・・そんな話、聞きたくなかったです、はい。」
全く、俺がこんなに黒歴史を発掘されていると言うのに・・・こいつ、寝てやがる。
結局、酔っ払い共は早々に酔いつぶれてるし・・・俺が黒歴史を暴露される必要無かったんじゃないか、これ。