第68話/願望が夢に出るって聞くけど・・・勘弁してくれ。
「・・・ここは?」
俺は何をしていたんだっけ?
ふむ。どうやら部屋の様だが・・・この部屋、何処かで見た様な?
「この襖といい、畳といい・・・やはり何処かで。」
「誡。やっと来てくれたんだね!僕、ずっと待ってたんだよ?」
ん?この声・・・来夢か?
待ってたも何も・・・いった、いっ!?
「ちょっ!おまっ!何つう格好でいるんだよ!」
「何って?誡こそ、何を言っているの?・・・それとも、やっぱり僕には似合ってないのかな。」
いやいやいや、本当にどうなってるんだこれ!?
何で、布団の上に裸ワイシャツ姿で座ってるんですか!?
おまけに、頭には狐耳が生えてるし、胸何て今にも零れおちそうな・・・え?胸?
あれ?ちょっと待てよ・・・落ちつけ、俺。
「来夢・・・だよな?」
「酷いな~。恋人の僕を忘れちゃったの?誡。」
いや、いつから恋人になったし!それ以前に・・・。
「その胸は作りものか?何で、男のお前にそんなモノがついてる?」
「ふふふ。やだなぁ、誡。ん~?作りものかどうか、その体で試してみてよ・・・ね?」
ちょっ!いつの間に俺、押し倒されて・・・というか、俺に乗るな!近いって、顔近いって!
おいおい!シャレにならないぞ、つうか、来夢さん?何、とろけた表情してるんですか?
「さぁ、一緒になろ?」
「だが断る!!はっ!」
・・・あれ?明るい?それに揺れてる?
「何あれ、写メ取ってUPしちゃおうか。」
「辞めときなさいよ、わざわざ関わる必要無いって。」
ここは・・・電車の中?というか、何で俺の周りから人が離れて行くんだろう?
「君、大丈夫かい?うなされていたようだが・・・。」
「え?あ、はい。すみません。」
知らない、お爺さんになんか心配されてるんですけど・・・どういう事?
というか、何?これは所謂あれですか?夢落ちってやつ?
「うわぁ・・・マジか。」
思いだした、俺は実家への強制帰還命令を受けて、今帰宅途中だったんだ。
というか、電車の居眠りであの夢って・・・溜まってんのか、俺。
それにしたって、あの夢は無いだろ。
「・・・幸先が不安過ぎる。」
さてと、とりあえず駅に着いたんだが・・・やっぱり迎えは無しですか。
「あ!誡。もう着いてたんだ。ちゃんと来たんだね、うんうん。偉いよ!」
「わふっ!」
訂正、迎えが来た様だ・・・しかも、俺をここに来させた原因の張本人が。
全く、よく何事も無かったかのように顔を出せるものだな。・・・しかも、家の愛犬まで連れてるし、何故?
「・・・誰のせいで来る事になったと思ってやがる!」
なんとなく、腹の虫が収まらなかったので、とりあえず頬を引っ張って見たのだが・・・すげーよく伸びる。
何だろう、このモチモチ感・・・やばい、癖になる。
「痛い、痛いよ~。もう!来ない、誡が悪いんじゃないか!リッキーだって待ってたんだからね。」
「わふっ!」
ふむ。確かにリッキーの奴、ちぎれんばかりに尻尾振ってるな。
そういえば、来夢の奴・・・これだけニコニコしてるなら機嫌が治ったんだな。
「リッキー、ごめんな~。って、ちょっ!こら、よじ登って舐めるな。」
リッキーの頭を撫でようとしゃがんだら、顔舐められるとか。
というか、リッキー興奮し過ぎだろ。息荒いぞ、大丈夫か?
まぁそれはともかく、先ほどから来夢の動きが不安なのだが。
「来夢。・・・一体何をしている?」
なぁ?何でリッキーのリードを俺の鞄に結んでいるんでしょうか?
しかも、この結び方だと・・・引っ張られるたびに結び目がきつく成って取れないと思うのだが・・・。
「ふ~んだ!知らない。・・・リッキー、GO!」
「わふっ!」
え?ちょっと待て・・・来夢、そんな合図したら!
「頑張ってね、誡!」
「ちょっ!マジで、勘弁してくれ。」
そりゃね、家のリッキーは優秀ですよ。
ちゃんと人の言う事聞くので、こんな合図されればそりゃ走り出しますよ・・・。
ただ、問題があるとすれば・・・リッキーって、ゴールデンレトリバーなんだよね。
大型犬の全力疾走に引っ張られればどうなるか・・・うん、俺死んだな。
「って!マジで、これはシャレにならないってぇぇぇぇ!」
「わぁ!これがドップラー効果ってやつだね!」
感心してないで助けろって!あ!ダメだ・・・。
結局、りっきーが止まってくれたのは、俺が10メートル程引きずられた後だった。
こんなことするとは・・・来夢の奴、機嫌治って無かったのか。