第66話/・・・おじさん、もうゴールしていいかな?
何でこんな事になるんだろうね・・・。
目の前には【ベルゼブブ:レベル40】が・・・こいつ、何体目だっけ?
「シノ!左羽終わった?」
「もう少し・・・終わったなの!」
あ・・・両方の羽をもぎ取られて、【ベルゼブブ】が断末魔を上げてる。
しかし、この【ベルゼブブ】。
ハエの王様と言うだけあって、本当に見た目は巨大なハエだな・・・正直、気持ち悪い。
このデータ作った奴、めんどくさがって本物のハエのデータをそのまま入れたんじゃないだろうか?
「アシュレー!攻撃よろしく!GANさんとルシファーは効果が切れ次第、追撃を!KAIN!あんたもボーっとしてないで追撃しなさい!」
「は、はい!スティンガサンダー!」
凛の合図で、羽を捥ぎ取られて地面で暴れている所にアシュレーの範囲攻撃が・・・何か、攻撃力上がってないか?
「了解だ、レディ。」
「行くぜ!おまえさんも、ついてこい!おぉー!」
近接するおっさんをうまく外して、アチャーの矢が次々と突き刺さってく・・・容赦無いな。
っと!俺も、攻撃しなければ・・・ふむ、あれを試してみるか。
「おっさん、巻き込んだらごめん!一刀流【心眼】!」
≪スキル発動・一刀流【心眼】≫
「おい!それはどういう・・・うぉ!」
俺は刀が届く距離まで、鞘に仕舞った状態で走り出す。
そのままスキルが発動し、モーション制御を受けて鞘から素早く刀を抜いて斬りつける。
そのまま、手元を見ないで刀は何事も無かったかのように、再び鞘へ収まった。
わぉ・・・自分でやって何だけど、刀抜いてから仕舞うまで手元が見えなかった。
まぁ攻撃事態はうまく決まった様で、【ベルゼブブ】のHPバーは0となって砕けて消えた。
「ふむ。初めて使ってみたけど・・・意外とこれいいかもしれない。」
「何が良いかもだ!どんな攻撃かわからないのに、俺を巻き込むな!」
いや、ごめんって!
仕方ないじゃん?たまたまだよ、たまたま。
まぁ巻き込んでも、このハゲなら死ななそうって思ったけどさ・・・。
「さて、レディ。次は何処に行く予定だ?」
「ん~・・・ちょっと待ちなさい。確か次は・・・。」
え?まだ行くの?・・・皆元気だな。おじさん、疲れちゃったよ。
というか、凛をレディって呼ぶアチャーが妙に様になってて、気持ち悪い。
こいつ、リアルで執事とかやってるんじゃないだろうな?・・・あ、それはないか。
しかしまぁ、どうしてこうなったんだろう?
確か、整える為に町に戻っただけのはずだったのに。
簡単にここまでの経緯を思い返してみよう。
ボスメドレーの準備の為、町に戻る。
↓
準備中にシノからPT狩りのお誘いが来る。
↓
ボスメドレーを説明したら、参加希望と・・・。
↓
気がつけば、シノの要請でこの間のメンバーが勢揃い。
・・・なるほど、シノ。お前のせいか。
まぁPTとしては、前衛の壁におっさん、中距離補佐にアチャー、シノと凛がメインアタッカー、取り巻き対応および援護にアシュレー
と俺。
正直、バランスは良いと思う・・・ただ、本来の目的を忘れてなければだけど。
・・・本来これは俺のレベル上げ対策だったはずだったんだが。
まぁ何が言いたいかというと、メンバー増えた分経験値が減ったと。
ただ、それだけなら俺はこんなに疲れないわけだ。
なら何が原因かというと・・・凛からの地獄の対策案が出された為だ。
その対策というのが、ボスがダウンする度に直接攻撃を与えると言うもの。
一見、聞く分には何も問題ないと思うだろう?
ところがだ・・・俺の担当は取り巻き対応、つまりボスからかなり離れているわけで。
しかも俺はほら、刀使い・・・つまり超接近型。
ほら、ここまで言えば・・・わかるだろ?
「・・・凛、待った!一回休憩にしよう。流石に、俺・・・もう走れない。」
「何言ってるのよ。あんたの体は、横たわったままでしょうが。」
いや、確かにそうだけど・・・ほら、精神的にね?
それに、これだけ倒してもさっきから全然レベルが上がって無いのだが・・・。
そもそも、このやり方でいいのだろうか?・・・ちょっと不安になってきたぞ、俺。