第63話/狐尻尾の膝枕って・・・夢だよね?
「なかなか気持ちがよいぞ、主。もっと撫でるが良い。」
只今、俺は町近くの芝生の上に居ます。
座った俺の脚の上には、玉藻が狐モードで寝転んでいて、それを丁寧に撫でているという状態。
あれ?おかしいな・・・確か、俺はレベル上げに来たはずなのに。
幸恵さんとの再開で、当面の方針が俺のレべ上げに決まった。
事情を聞いた凛もそれに納得し、詳しいデータを伝える為に残ったマリアを除いて、俺達はあの日アキハバラを後にした。
マリアも数日後には、自分の分身を幸恵さんのPCに残して、ネットワーク経由で再び俺のLINKSに戻っているのだが・・・。
そんな中、俺は指南書を後回しにし、ともかくレベル上げに全力を費やしていたはずなのに・・・。
「主よ、何か不服かぇ?やはり、わらわなど消えてしまうべきなのかのぅ。」
「いや、悪かったって!謝るから、そんな事言うなよ、玉藻。」
現在、俺は玉藻に全力で頭が上がらない。
まぁ気が付いていなかった俺が悪いのだが・・・まさかこんな事になるとは。
「しかし、主はわらわを何週間も忘れていたではないかぇ。」
全く、耳が痛い。
実を言うと、玉藻の存在を思い出したのが、ついさっき。
レべ上げ中に、ポーションを飲もうとアイテムストレージを開いたら、何やら見た事無いカプセルが・・・。
気になって開いて見たら、ものすごく拗ねた玉藻が人型で出てきたというわけだ。
どうやらアップデートの際、強制的にカプセルに入れられて、俺のアイテムストレージでずっと放置されていたそうだ。
いや、確かにイベントとかマリアの件とかいろいろあって、忘れてたけどさ・・・。
むしろ、間違って売らなくてよかった・・・なんて、言えない。
まぁそんなわけで、玉藻のご機嫌斜めを解消する為に、現在要望通り玉藻を撫でているわけだが・・・。
これが、意外と癖になるモフモフ感で、ずっと撫でて居たくなる。
「ほぅ。主よ、そのままにしておれ・・・ふむ。これで良いかのぅ?主よ、こちらに倒れたもぅ。」
「ん?寝転がればいいのか?・・・お?おお!」
急に人の顔を見て、人型に戻ったと思ったら・・・これは膝枕?
しかも、律儀に膝の上に、ふさふさの狐尻尾があって・・・これはかなりヤバい。
丁度いい柔らかさとこの肌触り、そして何とも言えない温かさ・・・やばい、これは癖になる。
というか、すごく眠くなる。
「ふむ。どうやら気にいったようじゃのぅ。ん?主はおねむかぇ?良いぞ。しばし、眠るが良い。」
うわ・・・この状況で、それを言われたらあらがえなくなる・・・やばい、マジで意識が。
なんか、玉藻が本当に寝てしまったか?とか呟いてた気がするけど・・・。
「この馬鹿!いい加減に起きなさいよ!」
「んん?・・・ん~凛?」
いきなりの怒鳴り声に目を開ければ、そこには凛の顔が・・・何故?
あれ?おかしいな?さっきまで青空だったのに、なんか夕焼けに見えるのですが・・・。
「まだ寝ぼけてるの?起きたならいい加減退いてよ。足がしびれちゃうわ。」
ん?凛は何を言っているのだろうか?
それにしても、凛の顔が近い様な・・・それに先ほどまでのモフモフ感が無い。
不審に思って起き上がって確認したら、玉藻が居たはずの所に凛が居た・・・何故?
あれ?何で、凛が居るの?というか、玉藻は何処行った?
「あんたのレべ上げ手伝いに来たら、あんたのペットが出かけるから代われって。」
「それは・・・すまん。」
どうやら、俺が寝た後で玉藻は膝枕に飽きたらしい。
そこに、来た凛に俺を押しつけて、本人は何処かへ出かけた様だ。
「というか、そんなに嫌だったら起こせばよかったんじゃないか?」
「う、うるさいわね!あんなに気持ちよさそうな顔で寝られたら・・・起こせるわけないじゃない。」
ふむ。そういうものなのだろうか?
もし、仮に俺がCBへ膝枕をする様に言われたら・・・うん、間違いなく叩きおとして、起すな。
凛って、意外と友達思いなのだろうか?
それにしても・・・そんな調子で大丈夫だろうか?
「なぁ、レベル上げ行くのは良いけど・・・顔が赤いが、風邪とかじゃないよな?」
「違うわよ!とりあえず、行くわよ!ああ。後、今から行く所は私一人じゃ厳しいかもしれないから、頼れるなら応援呼んでおいて!」
まぁ本人が大丈夫というなら、大丈夫なのだろう。
というか、応援呼ぶくらいなら、わざわざそんな所に行かなければ良いのに・・・まぁ応援呼んでおくか。
「ところで、凛。場所は何処?」
「【月夜の草原】・・・【シルバーファング】を狩りに行くわよ!今、大手ギルドが相手にしなくなったからチャンスなのよ。」
マジですか。まさか、ついにあれに挑戦する事になるとは。
さてと、今すぐに呼べそうな友人は・・・こいつしかいないのか?
仕方ない、無いよりはマシだろう。
むしろ、俺よりは断然強いからな・・・ただ、性格があれなんだよな~。
ともかく、【月夜の草原】集合の連絡を入れてと・・・お?参加可能か。
さて、三人PTでどうなるやら。