第61話/事件の核心よりも、損害賠償が怖い。
「それにしても、わからないわ。マリア、何であんな事件を起こしたの?」
「あ~・・・やっぱり、ママはそう思っているのね。」
あれ?俺が知恵熱がやばい事になりそうなのに、スルーですか。
ここはあれを使うしかないな。
授業中によく使う秘義!
聞いてるフリ!
何も考えず、とりあえず聞いてるフリだけしておけば・・・まぁ問題ないだろう。
「マリア、それはどういう事?」
「ママの説明だと、足りてないの。」
ふむ。あの説明では足りてないのか。
そういえば、今さら思い出したけど・・・前にサークルの先輩に拉致られた時、ゲーム雑誌の記事に幸恵さんのコメントがあったな。
今思えば、あの文章がマリアが残したものなのだろうか?
おお!それにしても、今の俺・・・めちゃくちゃ脳が活性化してないか?
今、テスト受ければいい点取れる気がする。
おっと?なんか、マリアが語りだしたぞ?
理解できる限りで聞いてみてるか。
ふむ。どうやら、幸恵さんの説明を補足しているようだ。
纏めるとこんな感じ。
マリアがバランス管理プログラムとして人々をモニタリング中に、マリアのコピーとも言えるキュベレーが運用される。
↓
キュベレーがユーザー指定されたEOWの崩壊クエストを実行。
↓
クエストに気がついたマリアはクエスト破棄プログラムを流すも、キュベレー配下の独自プログラムによってキャンセルされる。
↓
逆に独自プログラムによって消去されかけたマリアは、対抗策となるユーザーにデータへのアクセスキーを譲渡。
↓
消去を恐れたマリアは幸恵へに文章を残し、電脳世界の放浪へ出るも発見されて消去されかける。
↓
対抗策としていたユーザーの召集で難を逃れたマリアは、そのままユーザーのLINKSへ移動。
↓
ユーザーのLINKS内に身を隠し、人々をモニタリングを継続。今ここ
ふむ。要訳すると、キュベレーが全て悪い!っと?
それにしても、この説明を聞く限り・・・対抗策となるユーザーって、俺の事か?
いやいや、まさか・・・マジ?
「でも、マリア。あなたは未だに管理者権限を持っているはずじゃない?」
「今はないわ。消去されかけた時に、独自プログラムに取られたから。辛うじて残ってたのはデータへのアクセスキーのみね。」
ちょっと待て!
権限ってそんな簡単に取れるものか?
そもそも、どうやって取るんだよ・・・そんなの。
「あら?権限を奪うのは簡単よ?相手のIDデータを手に入れれば、なりすませるもの。」
え~。・・・そんな簡単にID取られるようなAIがゲームの管理していていいのか?
というか俺、今の口に出していないはずなのだが・・・。
「ああ。今の私は思考レベルであなたにアクセスできるから、しゃべらなくてもわかるよ?」
・・・俺にプライバシーは無いのだろうか。
「なるほどね、納得いったわ。そりゃ管理権限持っているなら、眞田の予想外な動きをしてもおかしくないわ。」
ん?という事は・・・眞田は自分で作ったAIに騙されているのか。
なんていうか・・・残念な奴だな。
ともかく、マリアの言うとおりならキュベレーのプログラムを止めればいいんじゃね?
「正確には、一つは倒してるから残り、七つの独自プログラムを消せればなんとかなるわ。まぁ失敗してもEOWのゲームが文字通り終わるだけだけど・・・。」
「ふむ。なぁ、思ったんだけど、ゲームユーザーの皆に手伝ってもらえば簡単なんじゃね?」
ぶっちゃけ、グダグダ説明聞いても俺にはわからないし・・・倒す相手がわかってるなら、それ倒しておしまいにすればいいと思うのだが・・・。
「うん。倒すだけなら、それで良いんだけど・・・副作用が。」
「副作用?」
マリアが言うには独自プログラムを消去する際に、その施設に負荷がかかる様にセットされているとのこと。
全く、厄介なプログラムを仕込んでくれたものだ・・・あれ?ちょっと待てよ?
という事は・・・この間サーバーが爆発したのは、やっぱり俺のせい?
「え~っと・・・まぁ、そうなるかな?」
マジか。・・・これ、ばれたら損害賠償請求来るんじゃね?
俺、払えませんよ?