第58話/点滴中毒・・・これって、大丈夫か?
「・・・何であんた、入院前よりもやつれてるのよ。」
退院準備をしていた俺は面会早々、雫に呆れられた。
まぁ実際、やつれているのは事実だけどな・・・。
だって、さっきまでナースに説教されてたし。
え?何で説教されたかって?
別に悪い事はしてませんよ?
ただ意外とおいしかったからつい、レモンジュース入り点滴を作って飲んでただけで・・・。
いや~あれが意外と癖になるというか・・・って、雫。何故ジト目に?
「あんた。一晩しか入院してないのに、何であんなに病院内で話題になるのよ。」
「おかしな事もあるものだな。俺はいたって普通なのに。」
雫、何故そこでさらにジト目になるし。
別に普通だろう?点滴を飲むくらい。
というか、ナースの中には何人かやってるやついるだろう、絶対!
さて、雫の相手をしている内にこちらの身支度は終わった。
それではそろそろ、退院の手続きに行きますか!
「あ!手続きと支払いなら終わらせておいたわよ?」
「マジか。ゴチ!」
あれ~?おかしいな、誰も奢るとは言ってないとか言ってるのだが・・・まぁ幻聴だろう。
しかし、このままでは入院費を支払わされる事に・・・仕方ない、ごまかすか。
「・・・雫。まずは先方と会うのが先決だろ?とりあえず、支払いは立替ておいてくれないか?ちゃんと返すから。」
「う~・・・わかったわよ。ちゃんと、後で返しなさいよ?」
勿論、返すさ・・・精神的に!
というか、そもそも倒れたのは雫のせいでもあるのだから、このくらい払ってくれてもいいと思うのだが・・・ん?あれは。
「雫、悪い。少し寄り道する。」
「え?ちょっと!何処行くつもりよ。」
何処も何も、歩を見かけたから挨拶だけをしようと思ったのだが。
というかですね、雫さん。
何で目的が歩だと思った瞬間、半眼になんですか?・・・別にやましい事は有りませんよ?
「・・・ロリコン。」
誰だが!言っておくが、決して俺はロリコンじゃないぞ!
そもそも何で雫といい来夢といい、こいつらは俺をロリコン呼ばわりするのだろうか?
まぁそれよりも、今は歩だ。
「よぉ!」
「あ!お兄さん!・・・あれ?もしかして、退院ですか?」
何故わかったし・・・あ!鞄か。
まぁ鞄の中身は着替えではなく、LINKSなのだが・・・。
そういえば俺、昨日から同じ服だな。
ふむ、人と会う前に、できるなら着替えを調達してシャワーくらいは浴びたいところだが・・・後で雫に聞いてみるか。
「まぁな。悪いな、昨日伝えようとしたんだが・・・。」
「いえ。私こそ、余計な気遣いをさせたみたいで、ごめんなさい。」
いや、謝れる事は何一つしてないのだが・・・というか、この雰囲気マジつらい。
何気に、歩も泣きそうじゃね?
こういう時こそ雫、ヘルプ!って、何処行きやがったあいつ。
さっきまで後ろに居ただろ?
「あ~・・・いや。歩が謝る事じゃないだろ。それにあれだ。ここに居るなら、今度見舞いに来るからさ。」
「あ・・・はい。ごめんなさい。」
何だろう・・・このシリアスな感じは。
ぶっちゃけ、こういうの苦手たんだけど・・・。
「誡!あんた、点滴飲んだんだって?しかも二回も。馬鹿じゃないの?そりゃ、話題にもなるわよ!」
「お前、何でそれを・・・いや、意外と癖になる味で、つい。」
ふむ。どうやら通りすがりのナースから聞いたみたいだな。
ナースよ、それは個人情報として保護され・・・ないか。
「え?お兄さん、また飲んだんですか?」
あれ?そんなに驚く事なのだろうか?
だって、あれ意外と・・・って!雫。怖い!目が怖い!
ともかく雫に歩を紹介でも・・・あれ?
「なぁ雫、約束の時間って何時だ?」
「10時よ!何よ、急に。」
いや、だって・・・現在時刻、9時50分。
ここから上野駅に戻って、アキハバラ行くには時間的に足りなくないか?
ああ、雫もようやく気が着いたか・・・って、慌て過ぎだろ。ここ一応病院内だぞ?
「誡。ともかく、急ぐわよ!」
はいはい・・・っと!その前に、これを言っておかなくては。
「歩。俺はKAINだ。今度、EOWやる時にでもユーザー検索してみてくれ。じゃあな!」
「え?」
本来はリアル情報をバラすのは良くないんだが・・・まぁこのくらいはいいだろう。
だって、余りに歩の奴がしょんぼりしてるからな。って、なんか驚いてませんか?歩さん。
「誡!早くしなさいよ!」
おっと、雫の奴マジで慌ててるな・・・というか、俺を置いていくなよ。
そういえば、今気がついたけど・・・いつの間にか名前を呼び捨てだな。
あいつの方が後輩のはずなのに、まぁいいけど。