第53話/これがラストアタックだ!・・・漁夫の利ってこういうこと?
「右に行きましたわ!」
「了解!Cherry、術式準備・・・GO!」
俺達は今、前線メンバーと合流して、【皇帝ネロ】をアチャーな人が仕掛けた罠へと誘導している。
まぁ~誘導していると言っても、基本的には桜花狂乱がやってるんだが。
おっと!残りの取り巻きが、こっちに来たようだ。
「シノ!針穴発動!」
「了解なの!」
俺の合図で、シノが壁に有る鎖を引っ張った。
パカッと開く感じで、俺の目の前に迫っていた取り巻きたちは、突然開いた穴へと落ちて行く。
・・・うわ、無数の針に貫かれて、穴の中がえぐい事になってるよ。
メンバーでの情報共有の結果、この闘技場にはユーザーが使用できるトラップが何個か有る事がわかった。
なので、前線メンバーのCB達にそれを伝えた後、俺達は前線メンバーが直接【皇帝ネロ】を追い込むのに対して、トラップを使ってサポートする事に徹している。
理由は簡単!
だって俺、攻撃受けたら一撃死だし・・・あれ?もしかして、俺が一番足をひっぱてる?
いやいや、そんなまさか・・・ねぇ?
というか考えたら、これが本来の攻略方法なんじゃないのか?・・・お?あれは。
「K君!エリアBにもうすぐ追い込めるよ!」
「ネクロファンタズム!・・・残りは任せて。」
桃華とMAIKAは前線から下がって、こちらの取り巻きの片付けに参加するようだ。
と言っても・・・MAIKAのネクロファンタズムで、今最後の一人が地面に消えたんだけどな。
「よし!んじゃ、俺達も総攻撃に行きますか!」
「おうよ!それと、お前さん。これを持っておけ。」
ん?なんだよ、おっさん。
これは・・・ポーション?
「1瓶だけとか、ケチだな。」
「馬鹿野郎。そいつはクイックポーションだ!高いんだぞ、1瓶でも有り難く思いやがれ!」
クイックポーション?何それ。
おっさんによると、攻撃速度と移動速度が大幅に上がるレアポーションらしい。
何でも店では買えないので、ユーザーのアルケミストに頼まないとできない品物だそうだ。
どうやらかなりありがたいものらしいけど、早速飲んでみるか・・・うっ。
「・・・おっさん!これ、スゲーまずいぞ!」
「贅沢言うな!」
なんか薬用歯磨き粉の味がするんだけど・・・せめて、子供用歯磨き粉みたいに甘ければ。
≪ぐっ!我がこの様な物に!≫
「トラップに掛ったよ!」
どうやらアチャーな人の仕掛けた罠は、動きを封じる物だったようだ。
見動きが取れない【皇帝ネロ】に、CBが追撃している。
「よーし!皆!全員で、集中攻撃・・・開始!」
「解除される前にケリ、付けるぞ!」
おー!という返答と共に、聖龍騎士団と黒龍騎士団の生き残り組が突っ込んでるな・・・。
ところで、これで俺達に攻撃のチャンスあるの?
【皇帝ネロ】のHPバー、気が着いたらもう後1本だけなんだけど・・・。
「無ければ作ればいいのではないかね?そこの魔法使い、範囲攻撃を頼む。」
「え?あ、はい!・・・みなさん、避けてください!スティンガサンダー!」
ちょっ!アチャーな人!?何言ってるの!
それとアシュレーそれ、見方も関係無い範囲攻撃じゃ・・・。
案の定、【皇帝ネロ】に群がっていた前線メンバーは、いきなりの攻撃に慌てて避けてるし・・・。
って、何気にCB残ってないか?しかも、当たって無い所をみると・・・見きった?
「よし!私達も突っ込むわよ!」
「おー!なの。」
凛と共にシノが、あの混乱の中へ突っ込んでいく。
それに続いて、おっさんや桃華まで・・・何で、そこまでボス攻撃にこだわるんだ?
「ふむ。ドロップアイテム狙いだろう。それにしても、君は行かなくていいのかね?」
「なるほど。いやそれにしたって、どう考えてもさっきの攻撃はマナー違反だろ。アチャーな人。」
それにしても、このボスのドロップ品ってそんなにいいのか?
だとしたら、このアチャーは何故攻撃しに行かないのだろうか?
「アチャー?私は、アーチャーなのだが・・・それより、そろそろ撃破されそうだが、いいのかね?」
うん、言い間違えじゃないから、それ。
違う意味で言ってるから。
「・・・そういうお前は行かないのか?」
「生憎、矢を切らしていてな。弓兵に有るまじき事だが・・・仕方なかろう。」
ばっさと広げたコートの内側には、確かに中を取りけていた様な後があるが、今そこにはなのもなかった。
というか、そんな所に矢をセットしてたのかよ!?
普通、弓兵って矢筒を背負うんじゃないのか?
まぁ確かに、この格好で矢筒ってのも合わないけど・・・。
それにしても矢か・・・ん~なんか代わりになりそうな物あったか?
アイテムストレージを見てみる・・・ん?木剣?
「なぁ、ボスドロップ品って一撃でも喰らわせれば、手に入る確率あるのか?」
返答は、あるそうだ。
どうやら、攻撃した回数で確率は上がるが、基本はランダムだそうだ。
ふむ、ならこれでもいいか・・・一応、剣は剣だし。
「こんなもんしかないけど、これで攻撃したら?」
「ほぅ?・・木剣、くれるのかね?」
どうせ要らない、ただの売り忘れ品だし。
さて、アチャーな人に木剣を渡した所で、俺は改めてボスへと向うか!
というか、急がないと!
HPバーが半分を切ってる・・・やべ!このままじゃ一撃も当てずに終わっちま、お?おお!
何、この加速。
すげー速い!というか、速過ぎて怖い!
そうか、これがクイックポーションの影響か!
よし!この速さなら一撃くらい、いける!
丁度、俺の前はボスまで道が開けてる!
「うわっ!」
「ぐっ!」
これなら・・・え?なんか、前線メンバーが吹っ飛んだよ?
≪我には、友もいなければ、敵も居ない!≫
え~・・・ここで復活ですか。
というかこのままじゃ俺、思いっきり飛びこむんだけど・・・。
でも、見れば相手のHPバーも後一撃位だし・・・なんとか!
「覚悟!一刀流、さみ・・え?」
あれ?今、何かが俺の横を通り過ぎていったぞ?
しかも、見れば【皇帝ネロ】の額に何か刺さってるし・・・あれは、木剣?
≪我を・・・倒すか・・・。≫
ええ!?ちょっと、終わったよ!
俺、一撃も攻撃してないよ!?
「ふむ。やればできるものだな・・・矢の代わりに木剣を撃って見たのだが。」
お前か!アチャーな人。
てか、何やってくれてるの!?まぁ木剣渡したの俺だけどさ・・・俺の攻撃チャンスが~。
しかも俺の心境とは別に、周りは勝利の喜びに湧いてるし・・・この気持ちどうすればいい?