第41話/もう、わけがわからないよ。
「・・・ここは、部屋?」
目を開けたら見知った天井があるのだが・・・。
確かバイト代を回収しようと、立ちあがった所までは覚えているのだが・・・。
まぁどちらにしてもまずは、バイト代の回収・・・じゃなかった、現状把握からだな。
「あら?気がついたようね。」
ん?この声は・・・幸恵さん?って事は、まだ教授の部屋なのか?
いや、どう見てもこの天井は俺の部屋な気が・・・。
「誡!大丈夫?もう、心配したんだからね!」
ああ、やっぱり俺の部屋の様だな。
この男の娘が何よりの証拠だ・・・むしろ、他の部屋にまで居て欲しくないが。
「誡?ダメだよ、まだ寝てないと。」
心配かけたのは悪いと思うし、言ってる事も正論なのだが・・・何故、抱きつく。
「わかった、わかったからとりあえず、離れろ!要件さえ終わったら、休むから。」
「ほんと?嘘付いたらだめだからね?」
全く、男に抱きつかれても嬉しくないっての!
というか、何で来夢の奴は半泣き状態なのだろうか?
普段からやばいのに、潤んだ目とか反則だろう・・・って!俺の頭大丈夫か!?こいつは男だぞ?
ふむ、どうやら熱で相当やられている様だな。
「仕方ないわよ。君、5時間近くも目を醒まさなかったんだから。その子が心配するのも無理ないわ。」
あ、やっぱり幸恵さん居たのか・・・一瞬、幻聴かと思ったけど。
それにしても5時間も?マジで?
幸恵さんが言うには、どうやら倒れた俺を先導教授と二人でここまで運んでくれたらしい。
良く、この部屋がわかったな。
「桜木君が、武見君のケータイ電話に連絡をくれたからね。勝手に出るのは悪かと思ったんだが、何分緊急事態だったから、すまない。」
なるほど・・・ところで先導教授、バイト代の回収したいんですが・・・。
「ああ、私もすっかり忘れていたよ。はい、これ。」
よし、これで何とか今月乗り切れる。
「さて、要件も済んだ事だし、私たちは帰らせてもらうよ。」
あ!ちょっと待った。
その前に、できるなら昼間の件について説明して欲しい。
本当なら首を突っ込むべきではないだろうが・・・だって、気になるじゃん?
あ!でも来夢が居るから無理か・・・。
「マリアの件ね・・・いいわ、教えてあげる。その前に確認だけど、そっちの子もEOWはやってるのかしら?」
「やってるが・・・何か関係があるのか?」
余り長く説明されても、俺の体力が無くなりそうなので、手短に説明して貰った。
説明して貰ったんだが・・・ごめん、俺の頭じゃ理解しきれそうにない。
ぶっちゃけ、わけがわからない。
とりあえず、要点を纏めよう。
まず、マザーワン・・・正式名称マリアは、元々教授と幸恵さんが研究していたボトムアップ型のAIらしい。
次に、EOWのバランス管理プログラムとして動いていたのが、このマリアらしい。
そして、今回の事件・・・例のサーバー爆発事件を調査した結果、爆発直前にこの大学から不正アクセスがした形跡があり、またマリアのAIプログラムが、何者かによって盗まれたそうだ。
盗むって・・・コピー&ペーストでもしたのだろうか?
それにしても、バランス管理にAIねぇ・・・ん?ちょっと待てよ?
なら、今EOWのバランス管理は誰がやっているんだ?
「眞田よ。正確には、彼がマリアを元に作ったキュベレーが管理しているわ。」
なるほど・・・ん?それならぶっちゃけ、マリアって要らないんじゃないか?
代わりのプログラムがあるなら、別に問題ないんじゃないのか?
実際はそうでもないらしい。
何でも、ゲーム全体の主権限は未だにマリアに有るそうで、キュベレー単体ではゲーム全体の運用管理ができないそうだ。
なるほど、だから俺のスキルみたいに、おかしいのが出てくるのか。
その為眞田はマリアを回収したくて、必死なのだと説明してくれた。
ちなみに、眞田は本名、眞田 総一郎と言うらしい。
また、眞田の作ったキュベレー配下のプログラムは時折、眞田の予想外の動きをしているらしい。
とまぁ、ここまで長々しく聞いた話を纏めたんだが・・・結局、犯人は教授でOK?
「いや、私はやってはいないよ」
何だ違うのか・・・結局、面白い話は何一つなかったな。
「でも、マリアも何かを考えて行動はしているみたい。私はそれを見届けたいと思っているわ。」
帰り際に、幸恵さんはそんな事を言っていたが・・・ぶっちゃけ、開発主任がサボってる時点で、あのゲームもうダメなんじゃ。
ともかく頭を使いすぎた・・・少し休むとしよう。
起きてても、ロクな事ならない気がする、主に来夢のせいで・・・。