第40話/バイト代の回収を・・・誰?
さて、前回の回収してないバイト代を貰いに来たのだが・・・。
ノックしても反応が無い。
ふむ。これはまた、寝落ちでもしてるのか?
あの教授、普段はいつ寝てるんだってくらい働いてる癖に、一度寝落ちするとなかなか起きないからな。
まぁ鍵が空いていれば寝落ち確定・・・お!開いてる、確定だな。
「先導教授、起きてください!前のバイト代を回収しに来ましたよっと!」
あれ?てっきり寝落ちしてぶっ倒れてる教授が居ると思ったんだが、部屋には見知らぬスーツ姿の女性が一人。
・・・誰ですか?というか、何かすげー驚いてません?
え~っと・・・とりあえず、お邪魔しました。
さて、扉を閉めて出てきたは良いけど、誰だろう?
少なくとも、教授の所で有った事ある人じゃないな。
生徒って歳でもなさそうだし・・・いや、見た目がふけてるだけとか?
それとも・・・まさか、教授の彼女か!?
いやいや、その割には若い過ぎるだろ!
あ~・・・でも来夢が言ってたな、最近、歳の差カップルが流行ってるとか、なんとか。
「あの。兄なら居ませんが、何か御用ですか?とりあえず、中へどうぞ。」
教授不在か・・・え?兄?今、兄って言った?
「はい。先導剛彦は、私の兄ですが・・・。」
先導教授の妹らしいこの人、名前を先導 幸恵だそうだ。
ふむ。そういえば教授、前に妹が居るとか言ってたな・・・もしかして、この人が?
そういえば、妹さんがEOWに関係有る的な事を言ってた気がするが・・・思い出せないし、まぁいいか。
まぁこの幸恵さんが言うには、教授は少し前に人を出迎えに行ったらしいので、すぐ戻るとの事。
お?話しているに窓の外が騒がしい気が・・・ちょっ!幸恵さん、何で引っ張るんですか。
「いいから、一緒に隠れて。」
全く、わけがわからない。
窓の外を見ていた幸恵さんにいきなり引っ張られる形で、部屋の隅に押しやられたんだけど・・・飛び出して脅かすつもりなのだろうか?
それとも何か後ろめたい事でもあるのだろうか?
まぁ確かにここなら、書類の束と机の影に隠れられるけど・・・でもここ、書類が落ちてきたら終わりだと思う。
むしろ、机の下に入るべきだったんじゃ・・・おっと、教授が戻ってきた様だ。
「どうぞ、眞田君。コーヒーでいいかい?」
「お構いなく。時間が無いので本題に入りましょう。」
ふむ。どうやら教授だけじゃないみたいだ。
それにしても珍しいな、教授がコーヒー何て・・・普段は紅茶派なのに。
「・・・それで、眞田君がここまでわざわざ来た要件は何だい?」
「単刀直入に聞きます。剛彦さん、マザーワンのプログラムは何処ですか?」
マザーワン?何だそれ・・・というかここだと会話内容筒抜けなんだけど、これ聞いて大丈夫だろうか?
共犯の幸恵さんは、何かすげー形相してるし・・・俺、なんかやった?
ともかくここは大人しく会話を盗み聞きするとしよう。
何か面白そうな話だったら、バイト代上乗せできそうだし・・・。
別に、脅そうなんて思ってないよ?ただの交渉だよ?ほんとだよ?
うん、ダメだ。俺、こういうキャラ有ってない。
幸恵さんの反応は・・・スルーですか・・・そうですか、はぁ。
教授と眞田と呼ばれた男の会話を纏めると、こうなるらしい。
マザーワンとはAIプログラムのコードネームらしく、正式名称はマリアだそうだ。
そして、そのマリアを教授がこの大学から不正アクセスして、強奪したらしい・・・え?強奪?マジで?
この教授、何気にとんでもない事をやってるな・・・と言うかそれ、犯罪だよな?
「この間の事件を解析した結果、ここからアクセスされた後にマザーワンは消息不明になっているんだ!剛彦さん、あんた以外に考えられないだろう。」
「・・・確かにマリアの事を知っているのは私と君を除けば・・・後は幸恵だけだろう。そういえば、幸恵はどうなのかね?」
ん?この言い方だと、教授が犯人じゃないのか?
どうでもいいけど、捕まる前にバイト代だけは払ってもらいたいんだが・・・。
眞田が言うには、幸恵さんは事件の後行方知れずで、探しているとのこと。
・・・いや、目の前に思いっきり居ますけど?
ああ、幸恵さんが隠れたのは眞田からか・・・それにしても幸恵さん、良く眞田が来るのわかったな。
「これ以上は話になりませんね。仕方ない、ここのコンピューターを重要証拠として、提出して頂きます。剛彦さんがやっていないのならできますよね?」
「構いませんよ。とはいえ、ここにあるのはそのデスクトップ2台とこのノートPCだけですが・・・。」
会話が終了すると、どうやら眞田はPCを持って出て行ったようだ。
何か扉がすごい音と共に最後、閉められたけど・・・それにしてもデスクトップ2台とノートPCを良く一人で持って行ったな。
さて、向こうの要件も済んだようだし、そろそろ出て行ってバイト代を・・・お?何か妙にふらつく様な。
「ふぅ。ごめんなさいね、巻き込んでしまって。・・・君?大丈夫?何だか凄い汗だけど。」
いや、ダメかも・・・そういえば俺、風邪引いてたんだっけ。
「ちょっと!しっかりしなさい、君!兄さん、この子・・・」
しかしバイト代を回収するまでは、倒れるわけには・・・あれ?目の前が真っ暗に。
なんか、幸恵さんが言ってた気がするけど・・・俺の意識はそこで途絶えた。