第3話/ゲームスタート
キャラメイクを終えた俺の背後には、いつのまにか扉があった。
扉を抜けると、そこは一面スクリーンで囲まれた部屋だった。
部屋の中央まで来ると扉が勝手に閉まり、正面にある一番大きなスクリーンが起動した。
連動して、周りのスクリーンも次々に起動していく。
ゲームの導入ムービーでも始まるのかとワクワクしてたのだが・・・。
<世界は終わる。>
スクリーンは黒いまま、その中央に白文字が浮かび上がる。
<予言は真実で、これは変わらない運命。>
幻想的なBGMと共にスクリーンに映る文字。
でも、それだけだった。・・・これって導入ムービーなのだろうか?
<でも、本当に終わるの?>
浮かんでは消える文字と音声。
きっと、この後に派手なPVが流れるのだろう。
<終わった先に何があるの?>
しかし、ここまで文字が出たところで俺は違和感を感じた。
はて?来夢に見せられた、PVのオープニングにこんな文字だけの導入部分はあっただろうか・・・。
<私は見てみたい。>
それとも、ゲーム内では仕様がちがうのだろうか?
<この先に待つ世界を・・・。>
そして、俺は不意に気がついた。
先ほどからノイズの様に、時折足音がBGMに混ざるのだ。
<さぁ、選んで?>
しかも、そのノイズは正面のスクリーンからではなく、俺の後ろから聞こえている様に思える。
このゲームには、ホラー要素でもあるのだろうか?
<この世界の先に行く者よ。>
俺が背後に誰かが立つ様な気配を感じ、振り返るのとノイズが止まるのは同時だった。
「<あなたは何になるの?>」
振り返った俺の前に立つ銀髪の少女は、スクリーンから聞こえる同じ声で問いてきた。
ぶっちゃけ、心臓が止まるかと思った。
呼吸を整えて、冷静に考えてみる。
これは導入イベント・・・所謂チュートリアルなのだろうか?
見た目10歳位の少女は、見上げる感じで俺を見ている。
どうやら、先ほどの問いの回答を待っている様だ。
さて、どうしたものだろうか。
先ほどの画面の文字をまともに覚えてないのだが・・・。
ふむ。・・・どうせゲームだし、なら楽しんだ方がいいに決まっている。
「えっと・・・そうだな。どうせなら英雄がいいな。それも万人を救うHEROじゃなくて、護るべき一人の為に頑張るそんな英雄!」
俺は、良く言えば子供の様な、悪く言えば痛い人の様な回答をした。
しかし、まるで少女から反応がない。
これは、まずったか。
ちょっと、痛い発言をし過ぎて引かれたのかもしれない。
背中に嫌な汗が流れるの感じていると、少女は唐突に俺の左手を握った。
「・・・ん。なれるといいね。ん~ん。きっとなれるよ!頑張って!」
「痛っ。」
コクリと頷くと少女は笑顔をこちらに向け、俺の左手を握る。
少女にいきなり握られてドキドキしているうちに、握られた左手が輝きだした。
光が増すのに比例して左手に痛みが走りだし、そしてどんどん増していく。
遂に俺はその眩しさと痛みに、目を閉じた。
次に目を開いた時には少女の姿は無く、何処だかわからない草むらに俺は寝っ転がっていた。
少女が掴んでいた左手の甲には、奇妙な紋章がペイントされていた。
やはり、何かのチュートリアルイベントだったのだろうか・・・。