第35話/相棒・・・あいぼー!
ハゲマッチョもとい、俺を助けてくれたおっさんの名前はGANTETUだそうだ。
今、俺は凛と合流するべくダンジョン奥へ来ている。
助けて貰ったついでに、このGANTETUに護衛をお願いしたら引き受けてくれた。
なんだかんだでこのハゲ、すごくいい人なのかもしれない。
「それにしてもお前さん、そんなレベルでこのダンジョンに来るとは・・・ちっとばかし無謀ではないか?」
え?このダンジョンそんなにレベル高いの?
あ~・・・でも考えればそうか、雑魚モンスターにしか見えない【ケオプリオス】ですらレベル25はあるらしいし。
「ん?あそこで戦ってるのが、お前さんの連れか?何やら囲まれているようだが?」
お?凛を発見!なんか全身火だるまのトカゲに襲われてるんですけど。
GANTETU・・・面倒だから、おっさんでいいか。
おっさんが言うには、凛を囲んでいるのは【サラマンダー】と言うらしい。
なるほど、火トカゲとか火山ダンジョンの王道だな。
凛の奴、今まで見た事無い攻撃してるけど・・・ブレイクダンス?
それにしてもなんか厳しそうじゃね?
今さらだけどPT組忘れていたので、凛のHPが今どんなものかわからない。
おっさん、おっさん!ちょっと凛を助けて上げてくれないか?
「誰がおっさんだ!ふん。お前さんの連れだと言うなら仕方ない、助けてはやるが・・・お前さん、その間死ぬなよ?」
任せろ!俺はここから静観してるから、安心して救出してくれ!
おっさんは、かわいそうな物を見る様な目で俺を見た後、俺の身長くらいあるバトルアックスを持って凛を救出しに行った。
おお!サラマンダーがどんどん空へ飛ばされていく・・・お?どうやら凛まで辿り着いたようだ。
ふむ。凛が何やら仰け反っている所を見ると、やっぱりあのハゲが眩しい様だ。
本人はスキンヘッドだと言ってるから手入れしてるのだろうし。
それにしてもあの光り方・・・もしかして、毎日磨いているのか?
そんな事考えていたら、おっさんと凛が戻ってきた。
あの状況で凛、良く死ななかったな。
「全く、死にかけたわよ。何処のどいつよ!ノンアクティブモンスターを大量にタゲって連れまわした馬鹿は!」
凛が言うには、平和に発掘していたら大量の【ケオプリオス】に追いかけられ、慌ててこのエリアに逃げ込むしかなかったらしい。
そしたら今度はサラマンダーに襲われたとか、ついてないね。
「本当、助かったわ。え~っと・・・。」
「俺の名はGANTETUだ。」
おお。凛が素直にお礼を言ってる。
俺は言われた事が無いのに。
ん?待てよ?そういえば俺、凛に助けてもらう事はあっても助けた事は無いな。
そりゃ言われた事が無いわけだ・・・あれ?何か凛がこちらを睨んでいる様な。
「KAIN!あれほど、攻撃するなって言ったでしょう!」
馬鹿な、何故ばれたし!?
さては、おっさんか!おっさんが言ったのか!?
でも、そうなるとおっさんはいつから俺を見ていたのだろう?
結局俺は凛に散々怒られた後、つるはしも無くなったのでおっさの護衛の元、凛と共にダンジョンを後にする事になった。
そして、やってきました。鉱山の町【ロックダンテ】。
【パスティージュ山脈】を出て10分程歩いた所にある町だ。
凛はおっさんにお礼を言い終わるなり、鉱石を売りに行くと別行動に出た。
「さて、お前さんはこれからどうするんだ?」
一人残された俺はおっさんに今後の方針を聞かれた。
何でそんな事を聞いてくるのだろうか?
まさか、俺狙い?
とりあえず鉄石と鋼石以外は売りさばいて、刀を修理するつもりだと伝えたはいいが・・・。
しまった、肝心の鍛冶屋の職業を持つユーザーを発見していない。
さて、どうしたものか?
「ふむ。なんなら俺がその刀、修理してやろうか?」
・・・何を言っているんだ、このおっさんは。
刀はレア武器だから鍛冶屋の職業を持つユーザー・・・しかも高レベルな人物を見つけないといけないと言うのに。
「だから、鍛冶師をさがしてるんだろう?俺の職業も丁度鍛冶師だ。」
しかも高レベルだぞ?っとわけのわからない事を言ってくる。
はっはっは!そんなマッチョで繊細な修理ができるわけがないだろう。
証拠だと言ってフレンド相互登録の認証画面を表示させてくるので、登録して見てみる。
<ステータス>
LV:45
HP:2250/2250
MP:2250/2250
経験値:250/50000
名前:GANTETU
職業:鍛冶師lv25
ギルド:無所属
コール:50000c
・・・マジだった。
というか鍛冶屋と鍛冶師って一緒だよな・・・それにしてもレベル高いな、このおっさん。
ふむ。ところでおっさん、修理っていくらかかるんだ?
「ふむ。刀の状態にもよるが、修理なら20000c、強化なら10000cが相場だな。」
た、高いよ。
俺、今所持金550c・・・。
さて、もう一度鉱石売って、つるはし購入して金を稼ぎに行くか・・・。
「待て待て!何故、俺の服を掴む!」
え?だって、おっさんいれば死なないでしょ?
ほら、毒を喰らうならば皿までっていうじゃないか!
それとも、一蓮托生?
「わかった、わかった。とりあえず落ちつけ、まずはお前さんの持ってる鉱物を見せてみろ。鑑定してやるから。」
とりあえず、売る前におっさんが鑑定してくれると言うので、一旦おっさんのショップへ行く事にする。
いや、待てよ?鑑定するふりして安く買いたたく気か!?
とはいえ、俺は鉱物の相場何て知らないぞ?
ショップに着いた俺はおっさんに言われるがまま、アイテムストレージから刀2本と手に入れた鉱石類を全部テーブルの上に置く。
「ほう。これはかなりレアな刀だな・・・こっちの鉱物は、金剛石の原石か!?」
ん?その石ころ高いの?
おっさんが言うには、金剛石とはダイヤモンドの事だそうだ。
道理で聞いた事あるわけだ。
と言う事は、高く売れる?
「加工していないが、ふむ。なぁお前さん、物は相談なのだがこの金剛石の原石を俺に譲る気はないか?」
何を言って居やがるこのおっさん、そいつは俺の貴重な資金源だと言っているだろう!
まぁ待てというおっさんの話では、原石は加工していない分、店で売っても安くなってしまうらしい。
おっさんは加工するスキルを持っている為、むしろ原石が欲しいとの事。
しかも、このサイズの原石はあまり手に入らないとか・・・。
でもこのおっさん、ようは原石手に入れてぼろもうけする気じゃん。
さて、どうしたものか・・・よし、ここはあれだな。
「刀2本の修理と強化代を無料でやってくれるならいいぞ?」
「ほう、その程度なら・・・交渉成立だな。」
よし、これで今後の強化代は無料だな。
え?だって、俺何回までなんて指定してないし・・・。
あれ?でも最大+10までか?
う~ん?損したのかもしれない。
まぁ金は残った鉱石を売ればいいか。
とりあえず、まずは修理だ。
おっさんは早速作業場に刀を持ちこむと、熱した鉄石と刀を作業台に乗せる。
後はウインドウで何か操作して、最後にハンマーを持ちだして数回打ち込む。
打ち込みが終わると、刀は光に包まれた・・・これ、本当に大丈夫なのだろうか?
光が収まると、刃こぼれ一つない黒霧の刀の姿が。
おお!相棒一号!よくぞ戻った。
おっさんから黒霧の刀を受け取り、次に夜刀桜花を修理して貰う。
作業工程は同じみたいだが、今度は鉄石ではなく鋼石を使っている。
なるほど、レア度によって使う素材が違うのか。
こちらも光が収まると、元の姿に戻った。
相棒二号もよくぞ戻ってくれた!
「さて、ここからだが・・・強化はするか?」
勿論!せっかくタダでやれるんだ、やっておけるだけ強化するに決まってるじゃないか!
それに金欠の俺が次、いつ強化できるかなんてわからないし。
「そ、そうか。なら、強化素材はどうする?今あるのだと・・・【紅蓮岩】くらいか?」
強化素材?何それ?
おっさんの説明によると、強化する際に特定の素材を入れる事で派生武器へ進化できるそうだ。
夜刀桜花の場合、おっさんが持っている強化レシピでは、【紅蓮岩】くらいしか使えないそうだ。
他にも通常強化であれば、最大+10まで強化することができるそうだが・・・。
せっかく素材もある事だし、派生武器を作って貰うことにしよう!
「わかった。それじゃ行くぞ!うぉりぁぁぁ!」
ちょ!おっさん、力入れ過ぎ!ハンマーめちゃくちゃガンガン言ってるから!
「何、この程度、まだまだ!そいやぁぁぁぁ!」
すげー嫌な予感しかしないんだけど・・・これ、刀折れるんじゃね?
最後の一発と、おっさんが全力で打ち付けた瞬間、パキンっと金属が折れる様な響きが聞こえた気がする・・・。
え?折れた?気のせいだよね?
刀は光っていてどうなってるかわからないんだけど・・・おっさん?すげー嫌な汗かいてないか?
光が収まり、そこにあったのは・・・何か短くなってないか?
急いで、夜刀桜花を拾ってみる。
≪【夜刀桜花・姫刀】を入手しました。≫
え?【夜刀桜花・姫刀】?
アイテムストレージの説明欄を見てみると、どうやら強化には成功しているらしい・・・。
ただ、夜刀桜花の派生はどうやら小太刀だったらしく・・・正直、黒霧の刀と比べても短い。
おっさん、失敗してるじゃん!これ折れてるだろ絶対!
「なっ!おいおい、俺は失敗してないぞ?元々そういう派生なんだよ。どれ、そっちの刀も貸してみろ!俺の腕がどれだけ凄いか証明してやる!」
結局、おっさんが本気を出した事で、黒霧の刀+10と夜刀桜花・姫刀+10になった。
うん、おっさんがすごいのはわかったよ。
わかったけど・・・小太刀との二刀流とかどうすればいいんだよ。
おっさん、すげーいい人です。