第30話/こんな終わり方有りですか?・・・いいのか?これで。
一部修正&追加
山賊Aを殺すか殺さないか・・・悩んでいるうちにもHPバーが減っていので、そのうち勝手に死ぬ気がするけど・・・。
それにしても死に向かっているのがわかっているのに、命乞いしないとは・・・何かあるのか?
まぁ俺的には、いつでも殺せるこの状況にちょっと、ぞくぞくしてたりするだが・・・。
そういえば、二人はどうなってるだろうか?
「きゃ!」
「シノ!?」
丁度、二人を確認しようとしたら、悲鳴が聞こえてきた。
声のした方を向くと、シノが山賊リーダーとチノの相手をしていたはずの山賊・・・仮に山賊Bとしよう。
その二人から攻撃を受けて、吹っ飛ばされている所だった。
それにしても何で、山賊Bがシノを攻撃しているのだろうか?
というか、チノはどうした?
チノを探して見ると奥の方で網に絡まり、雁字搦めになっているのが見えた。
なるほど。攻撃せずに生捕にする事で、ダメージを与える事無く抑えたわけか。
というか、そのまま網で連れて行かないのは、やっぱりシステム上無理だからなのだろうか?
それとも、山賊の頭が足りてないだけか?
「おいおい、お仲間がやばいんじゃないのか?俺にかまっていいのかよ?」
人が真剣に考えてる時に・・・うわ、この山賊Aの表情、勝ち誇ってやがる。
というか、俺がなめられてる?刀の刃先を食い込ませてやろうか。
それにしてもあれだな、この悔しさを現状を痛い人風に言うなら・・・山賊め、やってくれる!
まぁ間違っても俺は、そんな痛いセリフは言わないが。
そう、こういう時は冷静に・・・。
「ほう?網で生捕にするとは・・・少しはやるようだな。」
「ぐはっ!・・・て、てめー。」
あれ~?おかしいな。
最初に思いついたよりも、痛いセリフを言った気がする。
全く、どうしてこうなった?
それにしても山賊A、いくら痛いセリフだからって・・・そのリアクションは酷くないか?
お前達の方がよっぽど痛い人だと思うんだが、その辺どうよ?
あれ?返事ないな、何か企んでるのか?
おかしい。付きつけてるはずの刀が山賊Aの胸から生えてるんだけど・・・。
・・・良く見ると、違った。生やしてるんじゃない、夜刀桜花が刺さってるんだ。
なるほど。どおりで左手が軽いわけだ・・・え?刺さってる?
ふむ・・・左手で持っていた夜刀桜花が左手に無くて、山賊Aに刺さってる・・・つまり。
おいおい!やっちまったよ!
つい痛いセリフに気を取られて左手の力を緩めちまった!
あれだけ重いんだ、そりゃ力が抜ければ落ちるよな・・・結果的にPKしちゃったっと。
・・・うん。まぁ、してしまったのは仕方がない。
どうせとどめを刺さなくても自然に死んでただろうし、気にせずシノを助けに行くとしよう。
その前に馬油、馬油と・・・あれ?あれだけあった馬油が後2つしかない。
まぁ二つあれば全回復できるか。よし!
さて、シノは?
シノを見ると山賊Bの追撃を吹き飛ばされた反動を利用し、バックスステップで回避している。
ついでにクナイを投げ、攻撃にも転じてるし・・・よくあんな動きができるものだ、流石忍者。
俺が足手纏いになると言うのもうなずける。
でも、やはり2対1ではきついのか・・・表情がすげー苦しそうなんだけど。
追撃に失敗した山賊Bは、体制を立て直す為に一旦下がるみたいだな。
入れ替わりにシノへ山賊リーダーが向う。っと、完全に連携プレイだな。
よし、なら連携を崩す為にも、山賊リーダーを狙うとするか!
狙いを定めて、シノに向う山賊リーダーへ横から全力で突っ込んでみる。
「何でお前が?まさか、ジムをやったのか!」
真横から二刀を使って2連撃を繰り出すも、山賊リーダーは綺麗なパリィで弾きやがった。
ところでジムって誰?どこぞのやられ役ですか?
山賊Aなら倒したけど・・・最後は不慮の事故で。
「くそ!完全にはずれを引いちまったみたいだな。」
そう思うなら、大人しくここで退いてくれればいいのに・・・。
しかも言ってる事とは裏腹にパリィされ、隙のできた俺を山賊リーダーは横に切りつけてくるし。
弾かれた反動を利用してバックステップできなかったら俺、横から胴体真っ二つにだったよ!?
あぶね・・・何この人、化け物?つうか、レベル差幾つよ?
「退くにしても、戦利品の一つでも手に入れてからだ!くらいな!スラッシュウェイブ!」
バックステップにより少し距離が開いたから、体制を立て直そうとしたんだけど・・・まぁ無理ですよね、普通。
どうやら山賊リーダーの追撃は、スキルを発動しいてるみたいだ。
体の前で∞字に振るわれた曲剣からクロス状の斬撃が、4連発でこちらに飛んでくる。
一応、連続横っ跳びで回避しつつ、逆転方法を考えるけど・・・うん、無理だな。
せめて二刀流のスキルか、一刀流に戻る暇が有ればいいんだが。
流石に刀を捨てるのは・・・後で消えてなくなったら嫌だしな。
どうにか四連撃を回避して片膝を付いた時、俺の前で何かが動いた。
「こいつもどうだ!ホリゾンハッシュ!」
いつの間にか、体制を立て直した山賊Bが近づいていたらしい。
ちょ!だから、何故こっちを狙ってくる!?
お前は、シノを相手したじゃないか!
水平に伸びる斬撃を飛ばして来る・・・これ、スキル攻撃だよね?しかも回避できないし俺。
仕方がない。
夜刀桜花を地面に突き刺す事で盾代わりにし、斬撃を防ぐか。
・・・ところで斬撃って物理攻撃なのだろうか?
「ぐっ!やっぱりか!」
疑問の結果はすぐに出た。
斬撃を受けた俺のHPバーは一気に4分の1まで減り、赤くなった所を見るとやはり物理攻撃じゃないみたいだ。
それでも一撃死しなかったのは、夜刀桜花を盾にしたおかげだと思っておこう。
・・・でないと、ものすごく刃こぼれしたのが無駄になるし・・・これ使えるのか?まぁ無理だろうな。
その時、俺の後ろに誰かが来る気配がした・・・回り込まれたか!?
「殿、時間稼ぎありがとうなの!行くなの!秘奥義【幻凍打滅】」
≪スキル発動・秘奥義【幻凍打滅】≫
気配の正体は、シノだった。
それにしても時間稼ぎした覚えはないのだが・・・勝手に俺を囮にして、特殊スキルの発動準備をしていたようだ。
効果は絶大だな・・・スキルの発動と共に辺り一面が猛吹雪で吹き荒れてるし。
しかも吹雪は勢いを増しながら、山賊Bとリーダーを渦の中心に取り混むと、徐々に回転速度を上げる気がする。
「秘奥義だと?くそ・・・こうなったら。」
「兄貴!やばいっす!体が凍るっす!」
完全に中の様子は見えないけど・・・吹雪の合間からそんな声が聞こえる。
良く見ると竜巻状の吹雪に乗り、シノが攻撃しているようだ。
時折打撃音も聞こえてくる。
「とどめ、なの!」
竜巻から飛び出してきたシノの手には、巨大な氷の槍があるんだけど・・・それどうするの?
正直、嫌な予感しかしないので、竜巻から目を背ける事にする。
「ニャー!」
背けた先では、チノが網と格闘していた。
まだ、抜け出せて無かったのか・・・。
どうせやる事がないので、網を斬り裂いてチノを助けてやる事にしよう。
やべ・・・この網、意外と硬い。
どうにかチノが出れるサイズの穴は開けれたが、夜刀桜花に続いて黒霧の刀もボロボロになっちまった・・・どうしよう?
「やめろ!頼むやめてく、アー!」
「くそ!すまん、ボイル。」
うわ。何か今、すげー嫌な叫び声が聞こえたんだけど・・・。
声の方を振り向くと竜巻は消えていた。
そして竜巻の代わりに、全身に打撃痕が残る山賊Bの死体と同じく、打撃痕でボロボロだが辛うじて生きている山賊リーダーの姿がある。
尻に氷の槍が刺さってるのを見ると、掘られて声を上げたのは山賊Bの方か。
・・・それにしても山賊リーダー良く生きてたな。
まぁあの死に方は嫌だしな・・・そりゃ必死になるか。
「あいつ。仲間を盾にして、防ぎきったなの。」
お!おかえりシノ。
横に現れたシノは、かなり体力を消耗しているようだった。
「忍者の秘奥義が、まさか氷と打撃の合わせ技だったとわな・・・しかし、これであんたらは手の内を出しきったわけだ。」
さっきまで死にそうにしてたくせに、山賊のリーダーがすげー強気な発言してるんだけど・・・。
それにしても、何であんなに強気なんだ?
・・・掘られるのを回避したからか?
まぁいいや、どうせ大したことはできないだろうし、このまま帰るのを待つか。
それよりも消耗かスキルの硬直時間かわからないが、動けないシノをどうやって連れて帰るべきか・・・。
チノに乗せる・・・のは流石に無理か、いくらシノが小さいとはいえ。
そうなると、俺が背負っていくしかないのか・・・HPバー無くならなければいいけど。
ん?なかなか山賊リーダー帰らないな、いったい何をやって・・・って!あいつ、ポーション飲んでやがる。
あれ~?まだやる気満々ですか?
こっちはもう限界ですよ?
「ペットを頂こうと思っていたが、辞めだ。あんたらの所持品全部を殺して頂くとする事にしたぜ。・・・クククッ。勿論覚悟はできてるよなぁ?」
何か、さっきと全然雰囲気が違うんですけど・・・もしかして、キレてる?
というか、ありえないだろ!
山賊が勝手に襲っておいて逆切れって!
しかし、実際どうしたものだろうか?
もう一度、斬り合うにしても、刃こぼれしてる刀でどうしろと。
「とりあえず、さっさと殺されろや!」
山賊リーダーは完全にキレてるのか、曲剣を振り上げてまっすぐ突っ込んで来るし。
というか、一人だけポーション持ってるとかずるいだろ。
しかもカーソルを合わせたら、バーサークタイム:60秒とか出てるし・・・。
さっきのポーション、バーサーク化ポーションかよ!
このゲームそんな物まであるのか!
全く、この状況で俺にどうしろと・・・ん?なんか急に暗くなった様な・・・あれ見覚えのある影が向こうに見えるんだけど。
『ほぅ。わらわが主に手を出そうとは不逞な輩よのぅ?ちと、灸を添えてやるのぅ。』
あ・・・山賊リーダーが後ろから頭を喰われた。
どこぞの魔法少女よろしく、それはもうぱっくりと。
というか、首が取れて胴体が落ちてるって・・・えぐいな。血が吹き出てるし・・・。
というか、え?まさかこれで終わり?
え?こんな終わり方って有り?まさかのおいしい所取りですか!?
・・・というか何処から出てきたよ、玉藻。
『つれない主よのぉ。町の散策に飽きたゆえ、こうして迎えに来たとゆうのに。ついでに危ない所を助けたでわないか。』
いや、それ・・・自分が暇だから戻ってきただけだよな?
まぁ、確かに助かったけどさ・・・。
それにしても、この刀・・・マジでどうしよう。
それと後ろの動けない二人も・・・。