第29話/殺すか、生かすか、それが問題だ!
一部修正&追加
まずは状況確認だ。
相手は3人、こっちは二人と一匹・・・うん、数だけなら互角だな。
そういえば、チノは戦力に数えていいのだろうか?
「チノは勿論、殿も下がっていろなの。」
へ?どういう事?
そりゃシノよりもレベルは低いかもしれないが、戦えなくはないと思うだが・・・。
「自分のHPバーを見てから言えなの。」
HPバー?うぉ!そういえば、ワイルドキャットに絡まれて黄色のままだった。
「ぶっちゃけ足手まといなの。殿は大人しくチノと下がって見ていればいいなの。」
はい、わかりました。
せっかく夜刀桜花を抜いたんだけどな。
・・・それにしてもこの妖刀、黒霧の刀より重いんですけど、左手プルプルしてるよ。
俺がチノと大人しく後ろに下がったのを確認したシノは、山賊にクナイを投げ始めた。
・・・おお、山賊すげー!よくクナイを曲剣で叩き落とせるな。
「大人しくドロップしろや、チビ!」
「・・・黙れなの!」
あ!シノの奴、チビって言われて怒ったな。
でも確かに、シノって小さ・・・ちょ!シノさん!?こっちは味方ですよ?クナイ投げないで。
「ウゥー。」
ちょ、チノ?・・・その威嚇、俺に向いてません?
いや、主人想いなのはわかったけど・・・その爪、しまってくれませんか?
というか、どうして俺の考えってばれるのだろうか?
「おら!どうした穣ちゃん!威勢がいいのは最初だけか?あン?」
おっと、ふざけている間に、シノが山賊に間合いを詰められてる。
手にしてるのは・・・小太刀?
シノってクナイ以外にも装備してたんだな。
・・・じゃなくて!このままだと結構ピンチじゃないか?これ。
鍔迫り合いで押さえてる山賊リーダーはともかく、残り二人は問題だな。
あの状態じゃ、迎え討てないだろう。
「ニャ!」
「おい、チノ!」
俺の呼びかけを無視して、チノが山賊の一人に飛びかかった。
山賊も曲剣でチノの爪を受けているが、意外といい勝負だ。
「くそ、この糞ネコが!」
「おい!大事な商品だ、傷つけるんじゃね~ぞ!」
ほほう、なるほど。
この後、売る予定があるから下手に切りつけられないのか。
これはチャンス!今のうちに俺も回復して・・・ん?
「余所見してるとは余裕じゃねーか!」
おっと!何故こっちに来たし!?
状況からして、2体1でシノを責めるべきじゃないのこれ?
「んな、卑怯な真似できるか、ボケ!」
「いや、山賊やってる時点で、十分卑怯だろ!」
斬りつけてきた山賊・・・仮に山賊Aとしよう。
山賊Aの曲剣を咄嗟に左手で握る夜刀桜花で受けたが、一本では受け切る事ができなかった。
俺は慌てて夜刀桜花の後ろに、黒霧の刀を充てる事で何とか受け切れた。
しかし 状況的には、山賊Aの曲剣を正面の若干左側で、夜刀桜花と黒霧の刀をクロスして受け止めてる状態である。
よって山賊Aから力が加えられるたびに腰が!
マジで腰、やばいって!
正直、この体制に無理があり過ぎる。
腰に来る負担が半端ない!
全く、腰は男の命だと言うのに。
「ちっ!受けやがったか!だが、そんな態勢でいつまでもつかな?」
いや、持たないよ、もう腰が悲鳴上げてるよ!
山賊Aが曲剣に力を追加するので、俺の腰がさらに悲鳴を上げる。
それでも押し切られたらHPバーが無くなるだろう俺は、ここで押し負けるわけないは行かない。
何より、これ以上腰を痛めてたまるか!
少しでも腰の負担を無くそうと、両腕に力を込めて気合で山賊Aを押し返す。
押し返すけど・・・戻らない!くそ!
ん?今、夜刀桜花の刃が鈍く光った様な・・・。
「くそ!しぶとい野郎だ!」
お!何だか知らないが、山賊Aの力が緩んだ。
これは、このまま巻き返せすチャンス?
よし、ここは掛け声で気合を入れて!
せーの!
「和装を失ってたまるかっ!」
「くっ!なんつう掛け声だ!」
あれ?おかしいな、掛け声がつい本音に・・・。
まぁ仕方ないか。
だって、死んだらきっと装備破壊されるわけだろ?
そしたらこの和装を買い直す資金なんてないわけだし・・・間違ってはいないよな?
結果的には相手の力が一気に抜けたので、不利な体勢から脱出に成功したしな。
脱出した際に一瞬、夜刀桜花の重みに引っ張られる形で仰け反ったが、どうにか体制を立て直した。
よし、この距離ならいける!
「くらえ!一刀流【五月雨】!」
・・・って、あれ?発動しない?
おかしいなスキルが発動すると思って俺・・・思いっきり山賊Aに走り出してるんだけど。
ふむ、何故だろう?気合は足りていると思うのだが・・・あ!俺、今二刀流だった。
・・・と言う事はスキル不発?
それって、まずいんじゃ・・・。
「馬鹿か、てめー!自分のスキルも把握してね~素人とは、笑えるぜ!」
うるせー・・・こっちはこの間まで一刀流だっただよ!
っと、それよりもまずは目の前の山賊Aをどうにかしないと・・・。
山賊Aは俺が曲剣の間合いに入ると、こちらに向かい斜めに振りおろして来る。
走り出したのもはしょうがないので、この勢いのまま右手の黒霧の刀で弾くしかない!
俺は弾き返す為に右手の黒霧の刀を振るう・・・やばい、外した。
しかも 黒霧の刀を振り抜いた反動で、体が半回転してるし。
今さら黒霧の刀を引き戻しても、曲剣を弾くには間に合わない!
逆に避けるにしても、中途半端に半回転しているせいで、横っ跳び回避もしゃがみ回避もバランスが悪くてできる気がしない。
残る手段は・・・左手に握る夜刀桜花を回転する力を使って曲剣に当てるしかない!
こうなったら、一か八かだ!
半回転中の為、曲剣から視線が逸れている状態で夜刀桜花を振り上げた時、金属同士がぶつかる嫌な音で、俺はギリギリで曲剣から身を護れたと思った。
そう、そこまでは思った事と一緒だったんだが・・・勢いのまま一回転した俺は、次に目にした光景が理解できない。
・・・何で、山賊Aが血を流して倒れてるんだ?
良く見ると手にしている曲剣の刃は、中程から綺麗に無くなっている。
不思議に思い夜刀桜花を見ると、刃にはたっぷりと血が付いていた。
ふむ。・・・どうやら夜刀桜花で受けた際に武器破壊をして、そのまま山賊Aを切った様だ。
山賊Aを見るとまだ生きている様だが、何故か起きあがらない。
いや、起きれないのか?
「くそ!武器破壊に・・・流血効果かよ。」
流血効果?何それ?
山賊AのHPバーを見ると、ゲージがどんどん減って行くのがよくわかる。
ふむ、これが流血効果か。
しかし、このまま回復されると面倒なので止めを・・・。
「おい!いいのか?ここで俺を殺せば、お前はPKユーザーになるんだぞ?」
あ~。・・・やっぱりなるのか。
どうしようかな・・・ぶっちゃけ、PKだとは思われたくないな・・・。
まぁとりあえずは相手に隙を見せ無いよう、山賊Aに上から夜刀桜花を付きつける事にしよう。
倒れてる相手の上に刀を向ける・・・何て言うか侍っぽい?違うか。
なにはともあれ、これでよし!っと。
さて、殺すべきか、辞めるべきか・・・。
「おい!・・・人の話を聞いてるのか?俺を殺せばPKユーザーになるんだぞ?」
うん。聞いてるよ?
聞いてるから殺すか、殺さないか迷ってるわけだしな。
全く、それにしても夜刀桜花・・・血を吸ってからますます重く感じるのは気のせいだろうか?
おっと、思考が逸れた・・・。
さて、どうしよう?
対人戦、まだ続きます。




