第2話/キャラメイク
意識の覚醒した俺の目に飛び込んできたのは、大きな鏡だった。
映っているのは、何処ぞの犯人よろしく全身黒タイツの人物だけだ。
「これが、来夢の言ってたキャラメイクシステムか・・・。」
先週オープンβが終わり、正規サービスが開始されたばかりのEND OF THE WORLD(通称EOW)。
これはVR機を使用している以外は、基本的には従来のMMORPGと同じく剣と魔法のファンタジー世界で、クエストをこなしていくらしい。
ただ、初心者でも楽しめるようにと、スキルカードシステムを適用してるようだが。
そして、このゲーム特有システムがさらに人気の原因らしい。
1.キャラメイクをしてからログインするのではなく、初回ログイン時に作成する。
2.装備品の自由度の高さ。
3.AIによるシナリオのランダム進化。
他にも有るらしいが、来夢が言うには特に3がすごいらしい・・・。
「何はともあれ、まずはキャラメイクだ。」
EOWの様に、自分の体を動かすようにして操作するゲームでは、リアルボディ(実体)の影響を受けやすい。
その為、余りにもリアルボディと離れたキャラメイクをすると、その影響がゲーム終了後に出る場合があると聞く。
それらを考慮して、EOWではLINKSの初回起動でボディタッチにより入力されたデータを元に、キャラメイク時のベースが自動生成される。
それが今、鏡に映っている全身黒タイツの人物だ。
「確かに、このキャラメイクならどの程度まで変化させたら違和感が出るのか、良くわかるな・・・。」
俺は目の前の鏡を見ながら、試しに自分のベースを周りに浮かぶウィンドウを操作して、身長を伸ばしてみる。
リアルボディが170センチなのに対し、今ウィンドウでは180センチを超えた。
視点の高さが変わったせいか、バランスが取りにくい。
結局、俺はリアルボディのベースにステータスを戻し、キャラデザインを構築する事にした。
俺は数あるキャラメイクデータを、体感時間で30分程いじった所で、早くも飽きた。
髪型は短めのオールバック、色は薄めの黒。
肌の色はライトベージュ。
目はつり目で、色は黒。
眉は細めにした。
後は基からある固定パターンを適当に選んだ。
最後に、キャラクターネームに【KAI】と入力・・・どうやら既に名前は使われていたらしい。
仕方がないので、【KAIN】に変更・・・今度は通った。
ウィンドウに浮かぶ同意ボタンをクリックした所で、俺を取り囲んでいたウィンドウが消えた。
残った鏡に映っているのは、初期装備とも言える白いTシャツに黒いズボン。
そして、足元には黒いシューズを履いた、俺の分身だった。
それにしても、ボディタッチデータは個人情報に入らないのだろうか?
あ、その為のLINKS内の同意書か・・・。
分身を見ながら俺は、そんなくだらない事を考えていた。