第28話/ツンネコ様はご機嫌斜め?やめて、俺死んじゃう。
わ~お!ネコ天国だ。
今、俺はシノの受けたクエストに付き合って、町から少し離れた森の中にあった農場みたいな所に来てます。
小屋の中に入ったら、シノはNPCから子猫を渡されて現在、子育ての真っ最中。
ここまで来る間に簡単にシノから受けた説明によると、このクエストは貴重なモンスターの育成保護らしい。
つまり、ここに居るモンスターの野生版は、絶滅危惧種ってことか・・・近いうちにシルバーファングも入りそう。
そしてシノがクエスト受けてる間、暇な俺は農場内の子猫を見てなごんでいるわけだが・・・。
触ろうとすると、これがまた綺麗に尻尾で叩かれる。
ちなみに、このクエストはペットを既に持っている人は受けれないらしく、NPCと話してもご見学ですか?しか言われない。
「可愛いなの。早く大きく育つなの。」
ん~何だろう、ぱっと見では子供が子猫を甲斐甲斐しく世話してるようにも見えるんだけど、俺の頭に浮かんだ言葉は・・・。
好奇心ネコをも殺す。
うん、ばれたら俺がシノに殺されそう。
まぁNPCの助言もあるし、あのまま行けば大丈夫だろう。
さて、俺は外の農場でも見てみるか・・・。
外の農場に出たのは間違いだったようだ・・・。
おい!これ、ネコじゃないだろ!
農場で放し飼いされているのは、どう見てもチーターにしか思えないのだが・・・。
試しにネコ(?)の頭の辺りを見てみる。
【ワイルドキャット】・・・つまりヤマネコですか?
いやいや、ヤマネコってこんなにでかくないでしょ!
ゲーム開発スタッフは、ちゃんと考えて付けたのだろうか?
それはともかく、玉藻とは違った毛並みがまた何とも肌さわりよさそうで・・・。
「ニャ!」
試しに寝ている一匹を触ろうとしたら、思いっきり引っ掻かれました。
う~・・・HPバーが何気に減ってるし。
というか、ここダメージ受けるのか!?
あれ?ワイルドキャットって、肉食系か?・・・なんか集まってきてる気がするんだけど。
「ニャー!」
「ニャア!」
「ニャ!」
うん、声だけは可愛いんだけどね・・・どう考えても俺、狙われてる?
ひとまず撤退だ!
「痛っ!」
後ろ向きに小屋に入ろうとしたら、後ろから何かに蹴り飛ばれたよ。
おかげで地面に顔面から突っ込んだじゃないか!
しかも、ワイルドキャットに囲まれてるし・・・一体何が俺を飛ばしたんだ?
「チノ!飛びだしたらダメなの。」
ん?シノか?丁度良かった、この状況からちょっと助けて!
「殿?一体何やってるなの。それよりチノを追いかけるのが先だから後でなの。」
おい、忍び!主人を助けるの忍びになるじゃなかったのか!
まぁシノのあれはどちらかと言うと、なりきり設定のなんちゃって忍びな気がするが・・・痛い、お願いだから引っ掻かないで、俺死んじゃうから。
どうにかワイルドキャットの群れから逃れたけど、ここの動物って躾られてないのか?
さて、シノは・・・お!成長したワイルドキャットと一緒にいるな。
うう、あんなに撫でても引っ掻かれないなんて、うらやましい。
「シノ。そのワイルドキャットは?」
「チノなの!というか、殿。よくあの状態で生きてたなの。」
いや、死にかけたからね?今、HPバー黄色だからね?というか、見てたなら助けてよ・・・。
それにしても、チノ?名前だろうか・・・というよりも勝手に名前付けていいのか?
「私が育ての親だから問題ないなの。」
育ての親って・・・もしかして、さっきまで世話してた子猫ですか?
どんだけ成長早いんだよ・・・。
「にゃー。」
「あ!クエスト成功なの。」
気持ちよさそうに撫でられていたチノが一声泣くと、シノはチノを連れて小屋の中に入って行った。
ふむ、NPCに報告でもしてくるのだろうか?
そういえばこのクエスト、報酬って何なのだろうか?
ともかく俺もここを出よう、このままだとワイルドキャットに殺される。
小屋の中では、既にエプロンを外したシノが待っていた。
その横には、シノの胸くらいまで高さのあるワイルドキャットが・・・。
【ワイルドキャット:チノ】となっているんですけど・・・どういうことですか?
「殿には言ってなかったなの。このクエストの報酬はペットなの。育てた生き物が懐いてくれればペットになるなの。」
なるほど・・・あれ?ってことは、こっちは本当のペット入手クエストなんじゃ。
だって、鞍って確か移動手段をGETする方法だし・・・ふむ。ばれたら俺、また晒されるんじゃないか?
試しにシノのステータスを見てみる。
<ステータス>
LV:24
HP:1200/1200
MP:1200/1200
経験値:3500/8400
名前:シノ
職業:忍者lv1
ギルド:無し
コール:50000c
特殊項目
ペット:ワイルドキャット(育成)
ああ。育てると育成ってつくのか。
いい機会なので、NPCに話しかけてペットについての詳細な説明を聞いてみた。
それによると、ペットは大きく2種類あるらしい。
野生を捕まえて手に入れる方法と育成で手に入れる方法。
前者は俺の玉藻で、後者はシノのチノだろう。
そして前者は、基本的に移動手段として使用される事が多いようだ。
その他に2種類の決定的な違いとして、譲渡の有無である。
野生から手に入れた場合は譲渡不可らしいが、育成から育てた場合は他人に譲渡できるらしい。
野生の場合は消滅か逃走らしいけど・・・消滅の可能性が多いらしい。
まぁ考えたら、無理やり捕まえてるしな。
譲渡は・・・里親募集中みたいなものだろうか?
それと、譲渡されたペットは最大5匹まで同時に持てるらしい。
ん?ちょっと待てよ?と言う事は二人一組で動いて、片方がペットを露天して片方が育てるなんて商売が出てくるんじゃないか?
生き物の扱いとしていいのかな・・・これ。
むしろ考え付いた俺が非道なのか?
まぁゲームだし、深く考えるのは辞めよう。
何はともあれ、ペットをGETしたシノと共に、俺は町に居る玉藻と合流する為、リムタウンへ戻っている事にしたのだが・・・。
え~っと、前方にいかにも怪しい山賊っぽい装備の方々が3人ほどいるのですが・・・。
・・・何か御用ですか?
「おう。あんたら、ペットを手に入れたみたいだな。さっそくで悪いが、こちらに寄こしてもらおうか?」
はい?何を言ってんだろうか、この山賊は。
なんか、抜刀してるし・・・あれは曲剣か?
『KAIN!あんた、今どこに居る?』
お?このタイミングで、念話とは空気読まないな凛。
「リムタウンの近くで山賊に囲まれてるけど・・・どした?」
『あちゃ・・・遅かったか。その辺りにペット専門の盗賊プレイヤーが出るから気をつけてと警告しようかと思ったんだけど・・・遅かったみたいね。というか、やっぱりペットをGETしに行ったのね。』
警告、遅いです。
それに、俺はペットをGETしたけど、育成はしてませんよ?
まぁそんなことは今は置いといて・・・絡まれたのは仕方ない。
それにこの場合、狙われるのは俺では無くシノだろう。
「・・・チノは渡さないなの。死にたくなければそこを退くの。」
お!シノもやる気みたいだな。
「そうかい、なら悪いけど殺してでも奪わせてもらうぜ!野郎共!」
「うっす!」
うわ・・・相手のプレイヤー、超ノリノリだ。
周りの奴らを含めて、見ていて痛いんだけど・・・自覚あるのかな?
「うるせ!ほっておけ!」
ああ、自覚あるみたいだな・・・さてと、こちらも殺されたくないし、せっかくなので2刀流の試し斬りをやらせてもらいますか。
抜いた瞬間、毒々しいくらい桜色が・・・綺麗だな夜刀桜花。
思わず刃に血を吸わせたくなる・・・って!俺、取り込まれてる!?
流石、妖刀・・・恐ろしい。
さて、戦闘開始かな?・・・そういえば、このゲーム始まっての初対人戦だ。
・・・これって、殺したら俺もPKになるのだろうか?
さて、次は初対人戦!
というか、初対人戦でいきなり2刀流使う主人公
・・・そんな装備で大丈夫か?