第1話/ログイン
技術進歩と言うのは早い。
特にIT業界は・・・。
5年前位にヘッドマウントディスプレイ(HMD)が開発され、盛り上がりばかりだというのに・・・。
「何で、俺はこれを買ってしまったのだろうか?」
今、手にしている物を見て、俺はため息をついた。
物の正体は1年程前からHMDに変わり、主流となったヴァーチャルリアリティ(VR)体感装置。
その家庭用VR機の最新型、LINKSだ。
フルフェイスヘルメットの様なLINKSだが、値段は諭吉が20枚でお釣りが来るくらいだ。
「何でって、僕と一緒にEOWやるためでしょ!さぁ、早くセットアップしてよ。」
俺の独り言に返答してきた声の主・・・名を桜木 来夢という。
中性的な顔と肩まで伸びた髪と名前に、初めての奴は大体女と間違える。
だがこれでも一応は、男である。
そう、一応は・・・。
彼が不幸だとすれば、両親が流行ってたキラキラネームを付けた事と、当時流行ってたアレで彼を染めた事だろう。
そう思うのは俺だけで、本人はノリノリなのだが・・・。
「わかったから、焦るなって・・・ほら、セットアップ終わったぞ。」
LINKSを被り、リクライニングシートに寝そべる来夢の横で、俺ももう1つのシートへ寝そべった。
「OK!じゃ行くよ!」
来夢の声に合わせて彼のLINKSが起動した。
「あ、そういえば・・・お前、あっちでもそれなの?」
どうやら、俺の問いかけは聞こえてないなかったらしく、返答はなかった。
まぁ、きっとすぐに見つかるだろう・・・。
男の娘をしてる奴なんてそうそういないから・・・。
俺、武見 誡は人生初のVRの世界へとダイブした。
一部修正。