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END OF THE WORLD ONLINE  作者: 岸村改
19/103

第18話/和服・花見・宴!・・・そして時々悪戯!

「これは・・・すごいな!」


転送代100c使って、やってきました!【桃源の里】。


転送ゲートを出て見えるのは、長屋が立ち並ぶ街並みとその奥に構える大きな城。


まさに、江戸時代の日本。


現在時刻はリアル時間で、土曜日の午前9時。


パーティーは午後1時からなので、4時間は余裕がある。


【桃源の里】はどうやら東洋文化がメインになっている様だ。


もはや里というより町な気がするけど、細かい事は気にしない!


戦国時代とか江戸時代とかが好きな俺は、テンションが上がるのを止めらない。


「さて、とりあえずは【忍びの森】へ向かうか。」


里の外に広がるダンジョン【忍びの森】へ向かい、全力で里を抜ける。


そこで気がついたが、里を抜ける途中ですれ違うNPCやプレイヤーの服装を見る限り、和服が主流の様だ。


現状の装備が妙に浮いている気がする・・・。


よし、予定変更。


まずは呉服屋だ!


前方に見えた【呉服屋:月影】の看板を掲げた店に入る。


「いらっしゃいませ、本日はどのような物をお探しで?」


店のNPCは背中に月の文字が入った着物を、皆着ていた。


うん。何て言うか職人っぽい。


「40000cで買える一式を。」


有り金の大半を使う事になるが、和服一式が揃うなら後の事なんて考えない!


だって想像してみてくれ、和装に刀・・・最高にかっこいいだろ?


「それでしたら・・・こちらではどうでしょう?」


NPCの持ちだした和服一式を見てみる。


【羽織:10000c】

【着物:10000c】

【袴 :10000c】

【帯 :5000c】

【草履:5000c】


羽織と着物は濃紺に白の飾りラインが入っており、袴は単色の灰色だった。


帯はブルーグレーに黒で細かなデザインが入っている。


うん、かなり気にいった。


俺は即決すると、店の奥で装備する。


<防具>

  頭:無し

 上着:羽織

上半身:着物

  腰:帯

下半身:袴

  脚:草履

  腕:革の指開きグローブ黒


追加スロット数:0


腕のスロットが空いていたので、グローブだけはそのままだ。


残金は600c程になってしまったが、まぁ仕方ないだろう。


そして嬉しい事にこの装備、装備効果で固有スキルが増える。


<固有スキル/発動可能スキル>

固有スキル:


・剣術強化


・闘志


・剣双乱舞


発動可能スキル:


・ブレイクダウン


・一刀流【五月雨】・【虎牙】


この剣双乱舞は刀を装備時にのみ、攻撃モーションの速度を上げてくれる。


また、2刀流もできるようになるみたいだ。


まぁ俺は刀を一本しか持っていないので、2刀流は機会があれば試そう。


さて、装備も整った所で本来の目的を遂行しよう。


CBから聞き、是非にやらねばと思った本日の課題。


愛馬の調達を!


なんでも【忍びの森】で鞍のアイテムを持っていれば、一定確率で野生の馬を相棒にできると言うのだ。


そんなわけで4時間も前に現地入りして、俺は愛馬を手に入れる為に【忍びの森】へ来たのだが・・・。


「む、無理だ。何だこいつらは・・・。」


【忍びの森】に入ってすぐに速くも挫折しそうだった。


別に野生の馬が居ないわけではない。


むしろ選び放題と言ってもおかしくないくらい、生息はしているのだ・・・。


問題はその全てがアクティブモンスター・・・つまり攻撃してくる。


おかげで鞍を背中に付ければそれで終わりなのだが、これがなかなか決まらない。


鞍をつけようとすると馬が暴れ、その度に俺のHPバーが減っていく。


時には周りの馬も便乗し、連続攻撃を受ける事もしばしば・・・。


結局、タイムリミットの午後12時55分になった為、今日は止むなく愛馬を手に入れる事を諦めた。


また明日以降にでも挑戦するとしよう。


【桃源の里】に戻ると、転送ゲートの前に凛とCBが待っていた。


「KAIN、遅いぞ!」


「KAIN、遅いよ!」


二人に近づくとそれぞれが同タイミングで文句を言ってくる。


・・・どうやら少し遅れたらしい。


それにしても俺の名前を呼んだので、互いにびっくりして顔を見合わせてるのはどういうことだ?


あ、そうか。この二人、実際に会った事は無かったな。


・・・というか、知らずに並んで立ってたのかよ。


「悪い、二人とも。」


「二人?そっかぁ。君が凛ちゃんだね。よろしく!僕はCherry blossom。桜花狂乱のメンバーだよ。」


CBは納得したように頷いて、握手を求めてる。


「あ・・・ど、どうも。凛です。」


1テンポ遅れて凛も握手を返した。・・・なんか凛が、CBをぽーっと見てるし。


自己紹介が終わり、ついてきて。と歩き出したCBの後ろを凛と並んで歩く。


てっきり里の中で行うと思っていたのだが、里の外にある近くの森に向かって居るようだ。


「桜花狂乱が美女ばかりだとは聞いてたけど・・・KAIN。あんた、一体どこで知り合ったのよ?」


美女?ああ、CBを女性だと思ってるのか。・・・まぁ訂正するのも面倒だからこのままにしておこう。


「いや、知り合ったというか・・・俺はこいつに誘われて、このゲームを始めたんだ。」


「え?それじゃリアルでの知り合いか!?」


一体、何がショックだったのだろうか?


下を向いた凛は、こんな美女が近くに。とか、まだ可能性はある。とか、よくわからない呟きをしている。


俺としては、森の中で前を向かないのは危ないと思うのだが・・・。


CBに案内されて森に入っているうちにすっかり日が落ちた。


森を抜けると、大きく開けた場所に出る。


そしてその先には、満開の桜が咲き乱れていた。


「あ~!ちーちゃん、やっと来た!遅いよ~!」


咲き乱れた桜の木々が立ち並ぶ中、その中央に5人の人影が見える。


そのうち一人がCBの横に来ると、俺と凛を見てにっこり笑った。


うん。ぶっちゃけ、かなり美人。


「ふむふむ。君がちーちゃんの彼氏でK君。こっちの可愛い子が凛ちゃんだね。ようこそ。ギルド、桜花狂乱の宴へ!ギルドマスターの桃華とうかです!」


「・・・彼氏。」


ちーちゃん?ああ、Cherry blossomでちーちゃんか。それでKAINだからK君、なるほど。


・・・って、おい!ちょっと待て!何で、俺がCBの彼氏になってる!?


それと凛。テンション下げながら不穏な言葉呟くのは辞めてくれ、いろいろと怖いから。


「・・・CB、俺はいつからお前の彼氏になったんだ?」


「ん~?僕もKAINを彼氏にした記憶はないよ?それに僕は、男の娘ではあるけど同性愛者ではないし。まぁKAINの事はお気に入りだけど。」


ふむ。CBを見る限り、嘘はついていないようだが・・・なんか不穏な発言が聞こえたせいで鳥肌が。


しかし、そうなるとこの巫女は、一体何を言ってるのだろうか?


どうも今の様子を見る限りCBは、自分が男の娘だという事を隠して無いみたいだしな・・・。


「え~!ダメかな?ダメかなぁ?だって、その方がいろいろ萌えるでしょ!」


あ~・・・うん。わかった。桃華の中の人はいろいろ残念な人だ。


「ふむふむ。しょうがないぁ。でもよかったね、凛ちゃん!K君まだフリーだって。」


「な、なんで私に言う!?」


何かに納得したように頷いてから、桃華が凛に微笑みかけてるんだが・・・どう見てもその表情は面白い悪戯が思いついた、子供にしか見えない。


この巫女服を着た黒髪の姉ちゃんは、何を企んでいるのだろうか?


というか誰もフリーだとは言ってないのだが・・・まぁフリーだけど。



「モモー!いい加減、そんな所で立ち話してないで、こっちに連れてきなよ~!」


「今連れてく~!ささ、こっちに来て!」


中央に残っていた4人の内、一人に呼ばれて桃華と共に近づいてみる。


そこには、魔法だろうか?蛍光灯が割に光の玉を浮かべ、巫女さんの格好や色とりどりの和装した美女が4人。


そのうち1人は吟遊詩人の様だ、飲み食べする間に時折演奏をしている。


吟遊詩人は音ゲーの様に、自分の周りを飛ぶ色とりどりの光に合わせて手にしたギターを弾いていく。


その口からは、スローテンポで物語が紡がれて・・・いるのではなく何処かで聞いた事あるような曲だった。


着物でギターを弾いているのだが、その格好が和ゴスなので和感がない。


というか、和ゴスは和装に入れていいのだろうか?



「やぁ。よく来たね!ささ、飲んで飲んで。駆け付け三杯!」


「いや、私・・・お酒は。」


敷かれたレジャーシートの空いている所に俺と凛が座ると、いきなり緑髪をポニーテールにした巫女は、断ろうとする凛にコップを持たせ、並々とボトルから赤い液体が注ぐ。


同じものを俺にも用意されたので、とりあえず一口・・・甘い。


瓶を見ると【ブラット・オブ・レッドドラゴン】と書かれている。


基本的には、このVR内での飲み食べによる人体への影響はない・・・が、これはお酒なのだろうか?体が妙に熱くなる。


「ほにゃ~。んぐんぐ!はぁ」


「おお!いい飲みっぷりだね!」


隣では3杯を一気に飲んだ凛がふらふらしつつも、4杯目を注いでもらっている。


酔っているようにしかみえないのだが・・・大丈夫だろうか?


「これ・・・お酒か?」


「いや~厳密には、ちょっと違うかな?氷山地帯で体をあっためる為のドリンクだよ。ただ、一度に飲みすぎると体がふらふらしだして、中毒によるバット効果が発生するから・・・最悪は睡眠状態になるね。氷山地帯でそうなったら完全死亡確定だよ!」


でも、お酒より効くでしょ?とポニーテール巫女は答えてくるのだが・・・このゲーム内でお酒を飲んだ事がない俺には正直わからない。


あ・・・凛が倒れた。


どうやら効果による睡眠扱いでは、LINKSの接続は切れないらしい。


しかし凛自体は眠っている様な状態を感じているのか、体を動かす意志の様なものは感じられない。


それを良いことに倒れた凛を支えて、ポニーテール巫女は何処かに連れていく。


しばらくして戻ってきた凛の姿は、浴衣装備だった。


白地に色とりどりの朝顔模様が良く似合っている。


まぁ当の本人はレジャーシートの端で、あどけない寝顔を晒してるのだが・・・。


それにしてもポニーテール巫女よ、めちゃくちゃやり遂げた感のあるいい顔してるな。


それから俺はちびちびと【ブラット・オブ・レッドドラゴン】を飲みつつ、重箱から適当に食べ物を摘んでいく。


状況は、完全に花見だ。


CBや桃華は、他のメンバーと吟遊詩人の曲に合わせて舞ったり、歌ったりしている。


「ん~・・・?みゅ~。ここは?」


「お!起きたか?ほら、水。」


【ブラット・オブ・レッドドラゴン】飲んで、2時間位倒れていた凛が目を覚ましたみたいだ。


まだ寝ぼけているのか、目を擦りながらむくりと起き上がる姿に、不覚にも可愛らしいと思ってしまった。


落ちつけ、俺はロリコンじゃないはずだ。


リアルの凛が本当に見た目通りの少女であるかは、不明だけど・・・。


お酒じゃないので効くか不明だったが、どうやら効いたらしい。


受け取った水を飲み干した凛は、ようやく己の状況に気がついたらしい。


「・・・KAIN。何で私、浴衣着てるの?」


「巫女が装備させた。」


あ、すげー嫌そうな顔してる。


似合ってるのに・・・。

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