第12話/あれ?・・・勝手に倒れたけど?
一体、どうしてこうなったのだろうか?
ただ聖堂協会からまっすぐ、進んだだけなのだが・・・。
今、目の前には若い女性が1人。
「お願いします。【シルバーウルフ】の群れを退治してください!」
ボロボロな姿で懇願してくる。
どうもモンスターを退治してくれる人を探して、声をかけている様だ。
クエストか何かだろうか?それにしても、とてもNPCには思えない程その表情は必至だ。
「【シルバーウルフ】って?」
「助けてくれるんですか!ありがとうございます。」
いや、助けるとは言ってないけど・・・話しかけたら女性は淡々と話し始めた。
何でも、町の西にある【月夜の草原】に、最近になって【シルバーウルフ】が住み着いたらしい。
そのせいで近くにある【リスリム村】が襲撃を受け、大変な事になっているとか。
この女性は、【シルバーウルフ】を退治してくれる人を探して、命がけでこの【リムタウン】来たようだ。
女性が説明を終えて泣き崩れると、クエストを承諾するかYES/NO画面が出た。
というか・・・泣き崩れてる女性を放置とか、絶対後味悪いだろ。
仕方がないのでYESを押す。
≪クエスト・銀狼の討伐を受注しました。≫
システムボイスが流れ、クエスト受注ウィンドウが開かれた。
どうやら、20匹程倒せばいいらしい。
そして、受注しているのにこの女性、まだ泣き崩れている。
何はともあれ女性を泣きやませる事にしよう。
このまま放置はいろいろ世間体的に悪い。
「受けたから、まずは泣きやんでくれ。」
「本当ですか!ありがとうございます。あの・・・こんなものしか有りませんが、どうかお役に立ててください。」
おい。さっきまでの泣き顔は嘘泣きか!
一転して、笑顔で女性はアイテムを俺に渡して来る。
レッドポーションを5個GETしました。
飲むと、1個につきHPが50回復するらしい。
女性と別れた後、町の外に出た俺は有る事に気がついた。
マップを持っていない。
さて、方向音痴の俺が無事に【リスリム村】へ辿り着けるのだろうか?
【リムタウン】の門を前にして、右を向く。
どうも、このゲーム平面でとらえた場合、上が北、下が南、左が東、右が西の様だ。
頭の中でイメージを描き、真っすぐ右の方へ向かい歩き出した。
芝生の絨毯みたいな道がひたすら続いていた。
それにしても、この辺りで寝たら気持ちよさそうだな。
「キュイ!」
寝るかどうか迷っていると、白綿を身にまとったサッカーボールサイズのネズミが出てきた。
モンスターの頭上を見ると、【シルクマウス】と出ている。
それにしてもモコモコが気持ちよさそうだ。
どうやら、モンスターの様だが攻撃してくる気配がない。
これはモコモコを触るチャンスなのでは?
逃げられないように後ろから近づき、モコモコに手を触れてみる。
「キュイ!キュイ!」
「何だ!?」
モコモコに触れただけで、シルクマウスは急に動きを激しくしてこちらに突進してくる。
突然の事で避けらなかった。
ダメージを受けた俺のHPバーが5程経る。
追撃してくるシルクマウスの攻撃を避けつつ、相手に視線を向ける。
そして気がついた、シルクマウスのHPバーが1ドット程減っている。
どうやら、触った時にダメージ判定が出たらしい。
・・・というか、触るだけでダメージ受けるってどんだけ弱いんだよ、このモンスター。
黒霧の刀を鞘から抜き、右手に構える。
シルクマウスは動きは速いが、攻撃モーションは単調だった。
基本的に正面からの突撃しかしてこないようだ。
体の前に刀を構え、突撃に合わせて掛け声一つで振るう。
「やぁ!」
「キュゥゥゥ。」
クリティカルヒット。
シルクマウスのHPバー0になり、その亡骸はガラス細工みたいに砕けて消える。
経験値が、少しだけ入った様だ。
「なるほど。ここは所謂、初心者エリアと呼ばれる所か。」
刀を鞘に収め、アイテムストレージを見てみる。
白綿×2・ショートソード・スキルカード【キック】
このドロップアイテムは、何に使えるのだろうか?
今度、CBにでも聞いてみるとしよう。
その後もシルクマウスに何度も出くわしながら、1時間程で【リスリム村】に付いた。
村に入ると、外には誰一人居なかった。
本当にこの村、人が居るのだろうか?
村の奥に進むと、何やら動く物体が。
人かと思い、駆け足で近寄ってみる。
「グルルルル。」
・・・居たのは、3匹の【シルバーウルフ】でした。
どうもこの【シルバーウルフ】はアクティブモンスターらしい。
目があった瞬間、襲って来やがった。
どこぞの歌詞じゃないが、目と目が合う瞬間に・・・襲われる!
なんという肉食系・・・狼だし当然か。
「ガゥ!」
「くっ!何だこいつ、重てぇ・・・。」
飛びかかって来た1匹目を、刀で受ける。
しっかりガードしたはずなのに、HPバー20程削れる。
しかも、このモンスター飛び去る事はせず、そのまま刀を牙で押さえやがった。
その後ろから、残りの2匹も走ってくるのが見える。
どうやら1匹目が動きを封じている間に、残り2匹が追撃するようだ。
「くそが!離れろ!」
「キャン。」
右手一つで刀を支え、左拳でシルバーウルフの顔面を殴る。
スキルカードのおかげか、モーション補助の入った左拳が綺麗に決まると、シルバーウルフは後ろに吹き飛ぶ。
その間にも左右から同時に、2匹のシルバーウルフが迫る。
俺は、前へ走った。
スキルカードの補助で、前に進む動きが加速されるのを感じる。
そのまま抜き身の刀で、すれ違いざまに右から来るシルバーウルフを斬りつける。
何かを切った感覚はあるが、どうも浅い気がする。
ダッシュの補助モーションが尽きる寸前で、吹っ飛ばした1匹目のシルバーウルフをジャンプで飛び越える。
正直に言うと・・・飛びすぎた。
3匹のシルバーウルフと2メートル程間が空いてしまった。
こうなるとモーション補助も考えものだ。
着地して振り向くと、先ほどすれ違いざまに切りつけたシルバーウルフの色が、紫に変わっているのに気がつく。
それに、徐々に弱っている気が・・・。
「グルルル。ガゥ!」
リーダ格なのだろうか、1匹目が飛び出すのに合わせて他の2匹も追随する。
しかし、紫色に変色したシルバーウルフが途中で倒れた。
「クゥン。」
弱々しい声と共に、地面に倒れると砕け散る。
≪スキル・一刀流【五月雨】を習得しました。≫
システムボイスが頭に響く。
どうやら、スキルを覚えたらしいが・・・どうやって発動するのだろうか?
こうしている間にも、2匹になったシルバーウルフが迫る。
こうなったら仕方がない・・・昔の偉い人の意見を参考にするか。
昔の偉い人は言いました、叫べば何とかなると。
「一刀流【五月雨】!」
≪スキル発動・一刀流【五月雨】≫
システムボイスが響き、刀を構えたまま前に走り出す。
もう少しでシルバーウルフに剣先が当たるという所で、体が右回転をした。
モーション制御された刃は白く、光を放っている。
そのまま流れに身を任せるように、一回転した俺は先頭にいるシルバーウルフの首を斬りつける。
そこで動きは止まらず、振り抜いた刀を今度は斬り返す。
飛び散った血を受けて、白く輝いた刃が赤く染まる。
そのまま再び斬り返し、今度は水平に斬り捨てる。
五月雨は、3連続斬りの技だった。
「クゥン。」
声を残して、シルバーウルフは地面に体をつける間も無く砕け散った。
後ろに続いてたもう1匹は、どうやら逃げたようだ。
刀の血を掃うと鞘へ納め、自分の体を見てみる。
・・・この返り血、なんとかできないだろうか。
ぶっちゃけ、グロい。
戦闘から30秒程で、返り血は消えた。
返り血とかのエフェクトは戦闘中だけの様だ。
そして今回の戦闘で結果、こうなりました。
<ステータス>
LV:5
HP:275/300
MP:290/300
経験値:150/1500
名前:KAIN
職業:冒険者lv1
ギルド:無所属
コール:2000c
<武器>
右手武器:黒霧の刀
左手武器:無し
追加スロット数:0
<防具>
頭:無し
上着:無し
上半身:冒険者のシャツ
腰:冒険者のベルト
下半身:冒険者のズボン
脚:冒険者の靴
腕:無し
追加スロット数:0
<ジョブスキルカードスロット>
カードスロット1:パンチlv3
カードスロット2:剣技lv5
カードスロット3:ジャンプlv1
カードスロット4:ダッシュlv1
追加スロット数:0
<固有スキル/発動可能スキル>
固有スキル:
・冒険者の加護
発動可能スキル:
・ブレイクダウン
・一刀流【五月雨】
剣技ばかり鍛え過ぎた・・・。
そして、アイテムステータスを見てわかったが、どうやら黒霧の刀は猛毒の追加ダメージが与えれるようだ。
流石、アシッドフラワーのドロップ品。
ちょっと長くなりましたけど・・・どうでしょう?




