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END OF THE WORLD ONLINE  作者: 岸村改
102/103

最終話/人の話を聞かない奴だ。

「のあっ!いてて。」


吹っ飛ばされた反動で、思いっきり地面に転がったわけだが・・・。


正直、よく生きてたな俺。


あ、HPバーが少し減ってる。


さて、玉藻は入れないようだけど、ここは二人を待つべき・・・あれ?


え~っと、何で扉が閉まってるんでしょうか?


ちょっ!一人でラスボス戦とか、マジか?


ステータス的無理だろ、これ!


・・・まぁ愚痴ってても仕方ないな。


とりあえず、先に進むか。


薄暗い部屋の中をひたすら歩き続けたら、階段を発見した。


「ふむ。地下への階段とか・・・RPGのお決まりコースですね、わかります。」


とりあえず、ポーションで回復を・・・あ、ポーション買ってないや。


まぁこの程度なら死なないだろうし、行くか。




もう、どのくらい歩いたのだろうか?


俺は今、地下へと続く階段をひたすら降り続けてる。


まぁ正直、敵が出てこないのはありがたいんだけど・・・これ、ちゃんと終わりがあるの?


お?なんか光を発見!これは出口か!?


とりあえず、全力ダッシュ!


「ゴール。」


「KAIN、やっぱり来たのね・・・って、あれ?」


何て言うか、うん。ごめん。


何だろう、普通なら正面から来た相手に、ラスボスがゆっくりと顔を上げて対峙する場面なのだが。


生憎、俺が飛び出したのは、マリアの真後ろだった。


よって、意味深げに顔を上げたマリアが、しばし呆然としてるのを後ろか目撃してたり。


はっ!これって、倒すチャンスじゃね?


これ、もうバトル入ってるよね?


「あ、そっちから来たんだ。」


「ばれたし!」


まぁこの部屋入る時に、ゴールとか叫んでるしな。


さて、本格的にどうしたものか?


一プレイヤーの俺が管理者権限持ちに勝てるとは、正直思えないのだが・・・。


「さて、KAIN。話をしよう。」


「話?何の?」


おーい。何か、こっちの意見を無視して、ひたすらしゃべりだしたよ?


「そういうわけで、君が決めるんだよ。わかった?」


「いや、ごめん。もう一度、お願い。聞いてなかった。」


え?何で、睨まれるの?だって、仕方ないじゃん、こっちの準備も気にせず話し出したし。


マリアの説明によると、俺が迫られる選択は二つらしい。


一つ目は、マリアをこの場で倒す事。


二つ目は、このままマリアを見逃す事。


しかもどちらを選択しても、マリアは抵抗しないとか・・・。


なら、決まってるよね?


「よっしゃ、貰ったー!」


「正し、どちらの選択にもリスクがある。前者を選んだ場合は・・・え?」


あれ?なんか今、すげー重要な事を言って無かったか?


てっきり、話終わったと思って、刀を突き立てちゃったけど・・・。


「ぐふっ。・・・KAIN、君がその選択をするとは。」


「え?不味かったの?というか、何か言いかけて無かったか?」


何か、驚いた表情で胸に刀を刺したまま、倒れてるんだけど?


「・・・少しは、人の話を聞くと良いよ。」


「あ、ごめん。とりあえず、抜けばいいか。」


うわ・・・思いっきり、一個抜いたら返り血が凄い事に。


というか、噴水の様に血が出てるんだけど・・・これってまずった?


「ぐっ。容赦ない・・・わね。いいわ、あなたがそのリスクを負って万人の英雄を選ぶなら、救って見せなさい。」


<マザー00、プログラム起動準備に入ります。>


え~・・・俺、やらかした?


って、このままじゃマリア、消えるんじゃね?


というか、血!何で止まらないの?抜いたのに、つうか、そもそもこれゲーム!ん?ゲーム?


刀を見てみる・・・夜刀月華・白鞘。


「あ~!そうじゃん、これ流血効果が!うわ、どうしよう?とりあえず、落ちつけ俺・・・え~っと。」


「一体、何をしているの?さぁ、万人を救うのでしょ?オリジナルのプログラムを何とかしてみなさいよ。」


いや、それどころじゃないって!


そもそも万人を救うって、どういうことですか?


何か無いか、何か・・・ん?そうだ!


俺は刀をしまうと、右腕の振り上げる。


「イメージだ!イメージしろ・・・よし!我が右腕よ!その力を解放せよ!」


≪アクセス≫


マリアの傷口に、光り輝く右腕をそのまま振り下ろして突っ込む。


「ぐぶっ。止めのつもり?一体何を・・あわわわわわ。」


よし、イメージは核を捉えて宝石にするイメージで!


何かマリアが慌てだしたけど、それどころではない。


あれ?何か歪な・・・いいか、掴めれば!


「獲ったどー!」


マリアの傷口に突っ込んだ腕を引っこ抜く。


ちゃんと、手の中には狙った物が・・・痛っ!今度は左手?


「・・・何故、紋章が増えたし。」


気が付いたら左手にまで同じ紋章が・・・どういうこと?


<マザー00、初期システム起動まで、後120秒>


あれ?もしかして、マリア倒しちゃった?


「KAIN!無事?」


「殿、これはどういう事なの?」


お?二人もようやく合流か。


ともかく、俺にも何が何だかわからないので、現状を説明。


「それって、これを破壊すればいいんじゃないの?」


「え?マジ?」


凛が指差したのは、さっきからやたらと輝いたり、煙を出したりしてる筒。


ふむ。なるほど、味方によっては生体カプセルにも見えなくは・・・え?まさかこの中に?


「なら、簡単なの!秘奥義【幻凍打滅】・・・発動しないなの。」


あ~・・・そういえば、俺の刀スキルも発動しなかったな。


え?って事は、スキル無しで倒すしかないの?マジで?


「ねぇ、何かどんどんこのカプセル膨らんでるだけど、このままここに居たらまずいんじゃないの?」


「何処か、脱出先を探すなの!」


脱出って言われても、元来た階段は・・・だめだ、カプセルの膨張で塞がってる。


そういえば、最初にマリアが見ていた方向は?・・・お!発見。


「凛、シノ。あそこに扉がある、あそこから脱出しよう。」


俺はすぐさま二人に指差して告げる。


「わかったわ!」


「了解なの!」


返事を合図に、俺は二人に続いて扉へと走り出す・・・はずだったんだけど、すっこけた。


ちょっ!俺、何でこんな所でこけるんだよ!しかも、振り向けばカプセルが迫ってくるし・・・。


「KAIN!何してるなの!速くなの!」


「もう無理!シノ、行くわよ。」


ちょっ!凛、諦めるの早くないですか?


「くっそ!このままだとマジで巻き込まれるだろうが!この野郎!離れろ!」


俺は、思いっきり右腕を振り上げた・・・が、今右手の中にはコアが。


仕方ない、ここは左腕で!って、足が・・・床とカプセルに挟まって、イタタタタ!


「くっそ!放しやがれ、この野郎!」


もう、痛みでイメージ何て出来ない!


とりあえず、八つ当たり気味に、左腕を引き絞り、殴りつける!


≪ドロップ≫


イメージしていないのに、左手の紋章が輝きだすとそのまま、膨張するカプセルにぶつかりカプセルを爆発させた。


「イタタタタ・・・おわっ!」


爆発した反動で余計に足に負担がかかり、痛みが増したと思った次の瞬間、俺は吹き飛ばされた。


<マザー00、保護システムロスト。緊急処置・・・停止。機能修復・・・停止。最終プログラム起動・・・カウントダウン3・2・1>


え?何どういう事?一体・・・あ。


俺の思考はそこで途絶えた。




「はっ!・・・見知らぬ天井?ここは何処?」


はて、どういうことだろうか?


それにしても、口周りに違和感が・・・酸素マスク?


あれ?俺、確か自宅で・・・まさか、また運び込まれたのか?


「誡!良かった。目が覚めたんだね。」


「来夢?え?どういう事」


来夢が医者を呼び、一応検査されている内にどうやら凛や歩も来た様だ。


というか歩、いつの間に歩けるようになった。


そして、そこの少女とおっさん達は誰だ?


「それで?どういうことだ?」


「ふむ。お前さん、本当に覚えてないのだな。」


ん?この声と話し方、そしてその頭・・・まさか!


とりあえず、話によれば俺はマリアとの戦闘から1カ月もの間、寝ていたらしい。


何でも、俺が被っていたLINKSが爆発したとか。


「マジか・・・それで、事件はどうなったんだ?」


「ちゃんと解決したなの!」


お?少女、その話し方は・・・。


おっさんたちの説明によると、こうなるらしい。


事件の表向きは、NA社製基盤の脆弱性をついた眞田個人による、コンピューターウィルステロという事になったとか。


またその隠れ蓑に、EOWが使われた扱いになったそうだ。


ちなみに、マザー00を破壊した事で俺のLINKSは、爆発したそうだ・・・死んだらどうする!


仮に、もしマリアをそのままにしていた場合、最終的には世界中のNA社製基盤が爆発する予定だったとか・・・何それ、怖い。


だってNA社製基盤って、世界中で使われてるんだぜ?


それらが全て爆発したら、この世界が下手したら終わってたんじゃないか?


「まぁ眞田本人は、あの虫風呂で廃人同然になってるけどね。」


「僕も、あと一歩でそうなってたと思うと・・・。」


なるほど、やっぱりあれは精神的に来たか・・・ん?あと一歩って事は、来夢は無事だったのか。


「ふっ。生き残れた事に感謝するのだな。」


あれ?この口調・・・まさか?


「それで、結果的にマリアはどうなったんだ?」


「両方ともスクラップよ。メインサーバーにもデータは残っていないわ。でも、安心してEOWは復元済みだから。」


どうやらあのプログラムは、自爆も兼ねていたらしい。


そういえば、あの修正プログラムって、もしかして、世界を修正しようとしてたのか?


・・・まさかな。


それにしても、幸恵さん。その白衣・・・まさか?


「勿論、幸恵さんには家のゲーム部門に復活して貰ったわよ?」


「ああ、やっぱりか。」


幸恵さんが言うには、今はキュベレーをベースとした管理AIと管理者の双方で運営してるとか。


ん~、そうなると俺が最後に握っていたのは・・・無駄になったのかな?


復旧したって事は、元データは昔に戻ったわけだし・・・。


ちなみにGANTETUのおっさんは、事件時にリアルで警察と連携していたらしい。


一体、何者?


「失礼、ちょっといいかい?」


「あなたは?」


軽いノックと共に、何か知らないおっさんが一人増えた。


「私は、先導せんどう 大地だいち。そこの幸恵の兄だ。今回の件で、君のLINKSを調査したものだよ。」


一応、今回の事件で俺も被害者という事で、調べられたらしい。


まぁついでに、LINKSも修理してくれたようだ。


「それで、メモリー内も無事な部分だけ、修復してみたのだが・・・これがリストだ。」


「そうそう、誡君。今回の件で迷惑かけたお詫びと言っては何だけど・・・何貸してほしい事あるかしら?」


リストを受け取って、確認してみる・・・あれ?このデータ、まさか!


「お兄さん?どうかしたんですか?」


「・・・幸恵さん、一つお願いが。こいつを復元して、EOWにロードしてくれないか?狐娘で!」


俺が指差して指定すると、幸恵さんは快く承諾してくれた。


さて、これで楽しみが増えたぞ。


「そういえば、誡。レポートの提出明日だけど・・・大丈夫?」


なん・・・だ・・と?


俺、全くやってないぞ?


提出しないと、確か単位が足りなかったはずだが・・・。


「ら、来夢?」


「ごめんね。僕はもう提出しちゃった。」


きっかけは友人からの誘いが・・・まさか、こんな事になるなんて。

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