第100話/困った時は、この娘に限る!
「あの蠢いている物はなんだ!」
「バグの修正プログラムだ!いいから、この矢を外せ!」
こうしている間にも、物体の波はこちらへと物凄い勢いで迫っている。
「このままでは、間に合いませんね。あなたにこれを預けます。」
「痛っ!またこれか!」
マリアに貰った時と同じような紋章が、今度は右手に。
「おい!キュベレー。何を勝ってな事を!」
「うるさい!あんたは黙って、そこで張り付けられていればいいの!」
いや、凛さん。いくらキュベレーに眞田が文句を言ったからって、その扱いをこの状況で・・・うぉっ!
やばい。気が付いたら、何か足元から黒の四角いボデから、大量の蟹の様な足が生えた物体が。
「皆さん、気をつけて!それに触れてはいけません。さぁ、こちらへ!」
「おい!俺を見捨てるのか!た、助けてくれ!頼む!」
キュベレーよ、何気に自分の生みの親を見捨てるとか・・・お前がマリアのコピーだとよくわかるよ、そ
の酷さとか。
「アレは放置でいいのか?」
「もう、間に合いません。」
一応、確認するアチャーにキュベレーは目を微かに伏せつつ、答えた。
ともかく、ここに居ては俺達もやばそうなので、キュベレーに従いひたすら逃げる事に。
何か、後ろの方で凄く嫌な断末魔が聞こえたけど・・・うん、気のせいだな。
「それで、どうするの?」
「これを操作しているのは、間違いなくマリアです。なので、彼女を止めれれば。」
逃げながら質問する凛に、キュベレーは答えてから焦った様な顔をした。
「【封印されし】【古の】【母】きっと、そこにマリアは居ます。」
「どうするつもり?なの。」
突然、立ち止まったマリアにシノが話しかける。
「ここで足止めします。長くは持ちませんが早く!」
「この先に、転送門があるよ!皆、急ごう。」
探知系のスキルをいつの間にか使っていたCBに従い、キュベレー以外のメンバーは走り出す。
「・・・キュベレー。ごめんな。」
「いいえ、気にしないでください。これも私の役割です。さぁ!早く。」
何でだろうね?なんか、急に謝らないといけない気がしたからさ。
まぁそのせいで、転送門に危うく入りはぐる所だったわけだが・・・。
「それで、この先は何があるの?」
転送門の先にあった巨大な門の前で、俺達は立ち止まっていた。
だって、開かないんだもん。
「ん~。キュベレーから渡されたデータによると、マスターAIらしい。」
「マスターAI?」
キュベレーのデータによると、元々マリアもメインデータでは無い様だ。
マリアの原形となった、マスターAIのマリアが居るらしい。
どうもそのデータは、ゲームで使用する際に、先導教授の指示で凍結されたらしいが・・・。
まぁ幸恵さんは知らなかったみたいだけど。
という事は、このマスターAIが元々研究してたAI?
「それで、マスター。マリアは何をするつもりなのかね?」
「どうも、このマスターAIで何かをやらかす・・・つもりみたいだな。ちなみに、マスターAIの解凍
を始めると、バグ修正プログラムが発動する様にしてあるみたいだ。」
なるほど。それでさっきの黒い塊が来たのか・・・捕まったら虫風呂に入る見たいで嫌だな。
「それよりも、この扉を開ける方法は何かないの?」
「ここが開かないと、さっきのに捕まるなの。」
どうやら、虫風呂を想像したのは俺だけじゃない様だ、凛とシノも顔色が悪い。
「ん~どうやら、この紋章で開くように指示を出せば・・・ギブギブ!首、首締ってるから!」
「なら、速くやりなさいよ!」
俺、何か悪い事したのだろうか?めちゃくちゃ苦しかったんだけど・・・。
ともかく、キュベレーからのマニュアルを元に、右手をかざして開けと念じれば・・・お!開いた。
なるほど、これがイメージって奴か。
それにしても、こっちの方が使いやすい気がする。
「さて、行くか。」
「ん~・・・どうやら時間切れみたいだよ。」
え?うわ・・・転送門からうじゃうじゃ出て来始めた。
「ふむ。ここは私が足止めしよう。マスター、倒してしまってもかまわんのだろう?」
「なら僕も。KAIN。無事に生きて戻ったら、結婚しよう!」
うわ~・・・二人揃って見事な死亡フラグ。
しかし、一応ここは・・・。
「ルシファー・・・すまない。頼む。CB、だが断る!」
ほら、この手のネタって答えが大事じゃん?
「!心得た。」
「ちょっと、KAIN!そこは受ける所だよ!」
うん、二人とも良い反応だな。よし、俺は逃げると・・・凛、その凛々しい狼は何?
「何してるの!KAIN、あんたも早くペットに乗りなさい!」
「走るより、こっちの方が速い!なの。」
なるほど。ってことは、あの狼が凛のペットか。
そういえば、ずっと忘れていたけど・・・玉藻、言う事を聞いてくれるかな?
走りながら、アイテムストレージを開いて・・・玉藻を召喚!
「玉藻!乗せて!そして、ダッシュ!」
「主、ずっと放置して置いて、いきなりそれとは・・・わらわの主は鬼畜よのぅ?」
口答えはしているけど、なんだかんだで乗せてくれる玉藻・・・いや~このもふもふ、いいわ。
って、のんきにしてる場合じゃない。
「悪い、玉藻。この先にある部屋に突っ込んでくれ!」
「ふむ、何かに追われて居るのかぇ?仕方ないのぅ。しっかり、捕まっておれ!」
ちょっ!玉藻さん、加速しすぎ!って、シノと凛を引き話してるし!
お?でも、目的地の扉はどんどん近付いて・・・お!勝手に開いていく。
「主よ、すまぬのぅ。わらわはここまでしか行けぬよう作られておるゆぇ。」
「って!いきなり止まるなよぉぉぉぉ!」
俺は、急停止した玉藻から飛ばされ、一人目的の部屋へと飛び込んだ。




