第9話/アイドルって…こんな感じなのかな?
目を開けた俺が一番に見たのは、心配そうにこちらを覗き込む来夢の顔だった。
「誡、大丈夫?」
「・・・ああ。つうか、近い。」
心配してあげてるのに!とか不満を言っている来夢を余所に、俺はLINKSを頭から外す。
ログインしたのが17時頃だから・・・1時間程しかたっていない。
個人的には、かなり濃厚な1時間だったが・・・。
「誡。大丈夫なら食堂行こう。そろそろまずいよ?」
「そうだな。」
廊下へ向かう来夢を追う形で、俺も続いて部屋を出た。
ここは、私立先導情報工科大学の男子寮。
俺と来夢はこの大学の2年生同士で、寮のルームメイトでもある。
もっと言うなら、幼等部からの腐れ縁である。
「今日は何食べようかな、誡は何にする?」
「・・・俺は購入できるか、まずはそこが問題だ。」
寮の1階にある食堂は、男子寮と女子寮の共通フロアでもある。
従って、食事時になるとそれは混む。
しかも人気のあるメニューは数に上限がある為、なかなかの争奪戦になる。
例外として俺の隣でのんきに何を食べるか考えてる、こいつ以外は・・・。
今日は完全に出遅れた様だ、食堂入り口はかなりの人が並んでいる。
「ん~混んでるね。誡、どうしようか?」
顎に人差し指を当てて、首を傾げて聞いてくる来夢。
さて、今日は何人反応するだろうか?
「あれ?今日は遅いね。来夢ちゃん、何頼むの?」
まずは1人目・・・俺の前に並んでいた女子が反応した。
「来夢。まだ選んでなかったの?そう、なら私と一緒のパスタにする?」
続いて、2人目はどうやら先輩の様だ。
「ミートスパにオレンジジュースね・・・了解。もしもし、まだ買ってない?」
来夢からのオーダーを聞いた3人目は、何処かに電話をし始めた。
「さて、来夢。こっちでお姉さん達と食べようね。」
そんな会話を最後に、5分と経たない内に来夢の姿は俺の前から消えた。
毎回思うのだが・・・来夢は何故女子に人気なのだろうか?
食堂に来るたびに、気がつけば女子に拉致られてる気がする。
そして、その代償の如く食べたい物をGETしているのだから、ある意味やりくり上手なのかもしれない。
「・・・はぁ。並ぶか。」
とりあえず、まともな物が残っていれば良いが・・・。
結局、俺が夕飯をGETできたのはそこから10分後だった。
本日の夕食は、マグロの漬丼だ。
お値段なんと、300円・・・この安さだからここは混むのだろう。
所で、この金額で採算取れるのだろうか?
あ。・・・俺、来夢に聞く事あったんだ。
フラグ回収的に、説明回がちょっと続きます。




