デュエル
謎のGMからデスゲーム宣言をされてから3週間が経った。俺達ユーザーの体はどこかの病院に搬送されて安全は保障されているようだ。そうでなければ今頃餓死などで死んでいるからだ。それが分かったのが始まってから3日目のことだ。
それから俺はひたすら狩りを繰り返し前線でも戦えるまで自分を鍛えた。廃ゲーマと言える者達は初日から狩りをしているため必然的に差が出るがせいぜいlvで言うなら2~4程度だ。これぐらいの差は問題無い。
しかしこのゲームは恐ろしいことにlvが上がるのが異様に遅いのだ。3週間―――要は21日たった今も最高lvが25で俺のlvが21と言う。と言ってもこれは仕様らしく、lvが上がるまでの戦い方がlvUP時のステータス上昇に影響されるからのようだ。
それとlv10の時、職業決めクエストが解放された。俺はいくつかある報酬の職業選択で剣士を選択した。これは単純に俺があらゆるゲームで剣士やそれに似た職、戦い方をしていたからだ。命のかかったゲームでセオリーから抜けるのは自殺行為に等しい。
使用可能武器は直剣、刀、弓、小剣の4つ。―――使用可能武器と言うのは選択した職業で使用可能な武器、まぁそのままの意味合いだ。
俺はその中で直剣のみで戦っている。理由は扱いやすさだ。他は色々癖があるが最大の理由は俺がソロプレイヤーだからだ。
現実での友人何人かがこのゲームに入ると言っていたがアバター名を知らないし、空似は居ても、もしかしたら違うかもしれないため話しかけることができない。自分の対人能力の無さに初めて呆れた。
「さて、なんとなく回想してみたがこれでいいか?」
「ああ、それでいい。今から死ぬんだからそれぐらいの時間与えてやるさ」
「っそ」
俺は今PK……と言うわけではないが厄介な問題に巻き込まれた。会話通り俺を殺す気でいるようなプレイヤーと真正面から話し合っている。周りにはギャラリーが数十人居る。なんとメンドクサイ。
で、問題と言うのが、
「今謝れば、持ち金と装備だけで許してやろう」
俺が彼に衝突して謝らなかったということらしい。正直そんなこと覚えていない。
しかも衝突した彼はトッププレイヤーの1人らしく俺より2つlvが高い。
「てめぇ無視すんな!」
「あー、悪い悪い」
「お前調子乗ってるだろ」
「乗ってませーん」
わざとらしく言う。まぁ相手の機嫌を悪くさせるのは対戦時のセオリーだ。これは相手の集中力や判断力を狂わせることができ対戦で有利になるのだ。
「ま、まぁいいか。どうせ死ぬんだしな。―――さっさと始めよう」
「ああ、そうだな」
流石トッププレイヤーと言うべきか、俺の挑発した言葉が微塵も効いていないように見えてきた。
まぁその程度なら俺と会う前に死んでたな。
「ルールはHP1までのラストワン制。負けた方は勝った方の言うことをきくでいいな?」
「ああ、いいぜ」
そう言うなり俺たちの間に何かを投げてきた。四角い物体で目測4cmのキューブだ。
と真ん中まで止まるとそれが上へと浮上しカウント300と出る。
開戦の合図だ。
□ □ □
始まるなり男が一気に距離を詰めてくる。中々の速さだ。
だが俺の反応速度が追いつけないほどではない。
俺のステータスはいわゆる《極振り》と言うやつだ。このゲームの売りの一つ自動ステータス振り、LvUPまでの戦闘スタイルから振られるステータス。これを利用して俺はあらゆる戦闘を同じスタイルで戦い続けた。
それは―――、
「チッ」
相手の剣をさばきながらいなし、躱し、隙あらば斬る。
それは―――カウンタースタイル。
「お前、その戦い方ただ対人戦を予測した戦い方だろ!」
男は疑問詞ではなく、決めつけるように言い放つ。
内心、俺は笑ってしまう。―――間違ってないからだ(・・・・・)。
「あぁ、その通りだな」
どうして俺がそのようなスタイルかと言うと身を守るためと、戦闘において最も安定しているからだ。さらにその中でも突出した、反撃に徹する戦い方。
「フォールスラッシュ!!」
男がスキルを放つ。この技は上段からの剣を振り降ろすだけのスキル。
俺はそれに合わせ、
「……ライズブレイク」
これはフォールブレイクの逆と言ってもいいスキル、下から上へと振り上げる技。
「なっ」
相手の男は驚きを隠せない。――――何せ武器が折れたのだから。