無職だけど画面の向こうの命を救うプロになってお袋にマック奢った件
43歳無職の俺がネットの奥底で見つけた、超リアルな異世界を舞台にした神ゲー。クエスト報酬はなぜかリアルな現金。ボイチャ仲間とワイワイ敵を狩り、月13万稼いで親孝行する俺は英雄だった。あの一言を聞くまでは。
ある日、いつものようにカーテンを閉め切った部屋の中でfpsゲームという俺の仕事にとりかかろうとして最近はやってたゲームに飽きてたのもあってsteamでゲームを探していた。するとふとこんなゲームが目に浮かんだ。英雄の帰還。どうやらドローンを操縦して敵を倒すゲームらしい。グラフィックもすこぶるいいらしく、さらに敵を倒すごとにpaypayキャッシュがもらえるらしい。これでやっとあのくそばばあに一泡吹かせられる。彼は思った。彼は息をする暇もなくゲームのインストールボタンを押した。
そして、俺はさっそくゲームのスタートボタンを押した、操作するドローンは課金して手に入れるらしい。けっ。俺は思った。銭ゲバ企業め。でも背に腹は代えられない。これで金を稼いで、あのくそアマ、俺に働けと毎日行ってくるあの悪魔をぎゃふんといわせられるんだ。そう思い、さっそくクレカ情報を盗み見て支払った。これは投資だ。これは投資だ。彼は愉快顔だった。
さっそく、ドローンを操作する。大平原を駆け回る。そのスリルはすさまじく風切り音もする。これはいつ頃の感覚だろう。こどものころだろうか。。それとも...まあいい。昔過ぎて思い出せない。あまねく雲もなく太陽がさんさんと降り注いでる地を飛び回っていると、ふとどこまでもどこまでも続く穴掘りが、つまり塹壕があった。彼はどうすればいいのか説明すら受けてもまったく聞いてはなかったが、敵兵が塹壕の中にいて、それを殺すのが目標だと、かれは熟練のニート生活からわかりきっていたからだ。自認軍師の彼にとってはお手のもの。さっそく貧乏くさい頬がこけた人を見つけて。俺の前で命乞いしてきた。涙を流している。俺をじっと見つめている。銃をおろして、おれをじっとじっと見つめている。このゲームの世界観もあって珍しく俺様のこころが動きそうになったが、所詮はゲーム、空想、これも一つの演出に過ぎない。軍師様の俺を欺こうなんで百年早い。彼は迷わずドローンを突撃させた。止まる映像。断末魔。上がる血吹雪。
彼はこのゲームにのめりこんだ。熱中した。恋をした。お金ももらえた。彼はそれ以降ゲームにのめりこんでいった。ゲームにはなれると称号がもらえる制度らしい。10キルでベテラン。
100キルで英雄。1000キルでウクライナ民族の救世主。なぜウクライナ何だろう。そう思ったけど、深くは考えなかった。
それから同じドローンを購入した仲間と協力して、囲い込み、殺しを繰り返した。かもめと仲間のドローン。見渡す限りの大平原。空はどこまでも青く、おひさまがさんさんと輝く。仲間もサラリーマン、自営業者、主婦など様々な人がいて彼は楽しかった。ボイチャしながらワイワイだ。
初めて社会の一員になれた気がした。もちろんニートであることは伏せた。
あれから数か月、くそばばあが俺に働け働けといっても俺はもう返事をしない。にやにやしながら、だまりこくるままだ。いつもは必死に罵倒していたが。なぜなら俺は稼いでいる。あの年金暮らし、国から金をもらうことしかない老婆とちがって、俺はじぶんでかせいでいる。13マン、多い額じゃないが、俺は稼いでいるのさ。
なあ、おふくろ、今日は俺が飯を奢ってやる。マックだ。マックを奢ってやる。
母は驚きの声を上げ、久しぶりに口角を上げた。息子がどんな仕事をしてるのかはわからないが仮にも仕事をしていることを読み取ったのだろうか。
彼女は終始上機嫌だった。おふくろは思いを巡らせ、父が死んで、めちゃくちゃだった、学生時代の苦労を話しまくって、まあ耳が腐るほど話していた。まあおかしくはない。俺がやっと働いたのだから。感極まっているのだろう。
おふくろおれでかけてくるわ。
こんないい日には風俗に行こう、少なくはない5万円を握りしめて、高校時代のコスプレをした嬢にもみあげの上にまたがって、陰部をこすりつけてもらうというすばらしいプレイをもらった後に女子高校生を電車の中でレイプするというシチュエーションを楽しんだ。
雲一つない空、月はまんまるで明るかった。
来る日も来る日もログインし続けて、殺しまくった。殺して殺して、殺した。ゲームだから詳しくはわからないが、とにかく殺しまくった。とにかく風俗嬢にこの話を話したときは、誇らしかったな。すごいなって言ってくれたよ。俺は、頭の中で思い起こしただけだと思ったが、どうやら口走ってしまったらしい。走る沈黙。
チームメンバーがいう。おまえ自分が今何やってるかわかってるのか?
え、わからないですけど。さらに、走る沈黙。
リーダーが言う;そういえばおまえの称号はなんだ?。あー、英雄です。あと30キルで民族の救世主ですね。
再び走る沈黙。あまりにも静かになったので、俺は口を切ってしまう。
え、なにか悪いことでも言った?と
そして、リーダーが言った。あの、実はなこれは戦争なんだよ本当の戦争なんだよ。第一ウクライナ政府がなんで、協力してると思う?チームメンバーは一斉に俺を気遣う言葉をかける。おれは訳も分からず。パソコンをシャットダウンする。
そんなわけない。俺が殺したやつは、涙を流しながらおれに命乞いしてきたやつは。。。
そんな、そんなはずはない。シゲオは過呼吸になりながら言った。そんなそんなわけない。俺の殺した間抜け、いやあいつらがほんものだったら俺は何人殺したことになるんだ?そんなはずは、そんなはずは。ぜえはあぜえはあ息を漏らす。
そして、俺のチームメイトは?俺がわかっていなかっただけで、みんな殺人犯だったのか?あんなに和気あいあいと(ゲーム)をしていたのに、?
長年ニートの男には、理解ができなくなってしまった。男は涙目になって
はなみずを首まで垂れるほどに出しながら、
ぶへえぶへえぶへえへえ!!!!ボイスチャットごしに聞こえる嗚咽。ぶへえぶへえぶへえへえ!!!ヒックヒック!!ぶへえぶへえぶへえへえ!!
アオーンアオーン!!ぶへへへバオーーーン。
この世とは思えないように叫ぶ。バオバオバオバオーーン!ブリュブリュブリュブリュ、ぶちっぶちっ。ブリュブリュ、ぶちっぶちっ。ブリュブリュ。
シゲオ!シゲオ!ピーポーピーポー。
43歳シゲオ、職歴なし、彼女なし、ようやく転職をみつけたのに、運命は残酷だ。彼の脳みそはもうめちゃめちゃになっていた。そして、話すことも自分から動こうともしなくなっていた。
病院の白い壁、鼻につくにおい、からからとなる車いす。乗せられた中年男と高齢の女。
女は心配そうに、男を見つめる。そして、憂いのおくそこはどこか、すがすがしく、晴れやかだった。




