第3話 前編
私はまっすぐ疾走し、軌道上の兵士を大鎌で始末する。
四肢や胴体を輪切りにされた者達は、声も上げられずに崩れ落ちていった。
数人は反撃を仕掛けてくるが、あまりにも遅い。
奇襲で動揺していることを踏まえても粗末な動きである。
私は攻撃を躱しながら跳びかかり、相手の首を刈った。
さらに身体を回転させて、背後で魔術の詠唱をしていた者の喉を抉る。
「……ッ」
魔術師は驚愕し、血の泡を噴きながら絶命する。
暴発した術が別の兵を焼き殺すのを横目に、私は生き残りを適当に殺害した。
戦闘時間はほんの僅かだった。
正直、想定よりも簡単に終わって拍子抜けしている。
(昔よりも兵の練度が下がっている……魔道具に頼りすぎた結果か)
各種魔道具は、魔力を流すだけで様々な効果を発揮する。
非常に便利で戦闘においても勝敗を左右するほどのものが多いが、依存すれば当然地力は下がる。
鍛錬による実力向上も阻害しかねない。
即席で戦力を高めるには良いのだろうが、こういう肝心な場面では致命的な結果を招いてしまう。
死体の装備を観察していた私は、遠くから傍観していたノルを手招きする。
ノルは揉み手をしながら、ぎこちない笑みを浮かべていた。
「へ、へへ……さすが旦那だ……見事な手際で。現役時代の力は健在……どころか強くなってねえか?」
「仕事ではなく復讐心で動いているからな。やる気が違う」
「なるほどなァ……おっかねえや」
そういった会話をしていると、屋敷から増援が飛び出してきた。
彼らはいきなり私達に向けて魔術を放ってくる。
ノルは仰天して逃げ出そうとする。
「うおっ、やべえ!」
「大丈夫だ」
私は魔術に向かって手をかざし、展開した影を盾にする。
魔術は音もなく影に吸収されて消えた。
攻撃に失敗した増援は狼狽している。
それなりの量の魔力が込められていたので、おそらく奥の手の一つだったのだろう。
「見込みが甘いな……」
私は大鎌を二振りの剣に変形させて、増援の只中に飛び込む。
そして彼らの額や心臓を瞬時に貫いて殺した。
辛うじて反撃を試みた者は腕を絡めて投げ飛ばし、倒れたところに剣で突き刺す。
(これ以上の増援は来ないようだな)
私は地面に手を当てて、触手のように伸ばした影を屋敷内へと巡らせる。
無数に分岐させた影で室内を探索し、誰がどこにいるかを完全に把握した。
私はこっそり逃げていたノルをまた呼んで歩き出す。
「行くぞ」
「は、はいっ!」
私達は屋敷内へと踏み込んだ。




