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『ただの収納スキルですが、神様から「解釈」の変更してもらって現代に戻ったら、人生楽勝でした――』  作者: だい


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第25話:【ミク視点】如月ミクは諦めない。いつか隣に立つために(でも正座はご免です)

私の名前は、如月ミク。現在高校三年生。

 学校では部活に勉強に打ち込み、放課後は商店街にある焼き鳥屋でアルバイトをする、ごく普通の女子高生だ。

 でも、私には普通じゃない「秘密の目標」がある。


 それは、常連客である『小林淳志さん』の、特別なお隣の席に座ること。


「ハロー、淳志さん! 今日の発音、どうだった?」

「おお、ミクちゃん。すごく自然になってきたね。その調子なら、俺のいる商社の面接でもバッチリ通用するよ」


 カウンター越しに英語で話しかけると、淳志さんはいつものように優しく頭を撫でてくれる。

 語学堪能で、どんな時でも余裕があって、さりげなく私や周りの人を助けてくれる、私のちっぽけで最高なヒーロー。

 彼と同じ商社に入りたくて、私は今、大学受験の勉強と英会話の特訓に全力で打ち込んでいるのだ。


 だけど、淳志さんの「特別」になるための壁は、とてつもなく高く、そして美しい。


「あらミクちゃん、今日も頑張ってるわね。これ、海外出張のお土産よ」

「ミクちゃん! 淳志さんの英語もいいけど、私の発音チェックも受けてみる?」


 お店にやってきた二人の美しい女性。

 一人は、淳志さんの上司であり恋人でもある、香織さん。どう見ても三十代前半にしか見えないけれど、実は四十八歳の完璧な美魔女だ。

 そしてもう一人は、最近よくお店に来るようになった沙織さん。彼女は世界中を飛び回ってプロジェクトを動かす「生態系エンジニア」で、香織さんの実の娘。二十八歳の、息を呑むような大人の女性だ。


 二人とも、私がどれだけ背伸びしても届かないくらい、完璧で自立した大人の女性。

 ちっぽけな自分が嫌になることもあるけれど……でも、私は絶対に諦めない。いつか必ず、淳志さんの隣に立っても恥ずかしくない、素敵な女性になってみせるのだ。



 そんな私の平穏な日常に、突然のピンチが訪れた。


 私がアルバイトをしているおでん屋がある商店街に、タチの悪い半グレや詐欺グループが居座り、強引な立ち退きや嫌がらせを始めたのだ。

 大将は「気にするな」と笑っていたけれど、客足は目に見えて減り、お店の空気も日に日に重くなっていった。


 私には、お父さんがいない。

 母子家庭で育った私にとって、いつも温かく見守ってくれる大将は、本当のお父さんのような存在だった。このお店は、私の大切な居場所なのだ。

 それに、大学に進学するための費用を貯めるためにも、ここでアルバイトができなくなるのは本当に困る。


(どうしよう……。このままじゃ、お店が……)


 不安で押し潰されそうになりながら、商店街の入り口を掃除していた日のこと。

 信じられないニュースが飛び込んできた。


『商店街を脅かしていた詐欺グループ、証拠品と共に生配信で全国に晒され、警察に一網打尽!』


 ネットのニュースでその動画を見た時、私は思わず目を丸くした。

 隠しカメラの絶妙な配置。まるで手品のように玄関前に並べられた証拠品の数々。

 警察も手を焼いていた悪党たちが、あっという間に壊滅してしまったのだ。


「……よかった。本当によかった……っ」


 ホッと胸を撫で下ろした数日後。

 すっかり平和を取り戻したおでん屋のカウンターで、私はある光景を目撃することになる。


「……そういえば。あなたたち、最近妙に動画の撮影や編集の話に詳しいわよね?」


 仕事終わりに合流した香織さんが、淳志さんと沙織さんを冷ややかな目で見下ろしていた。

 そこから先は、もう完全に「絶対零度」の恐怖だった。

 香織さんが淳志さんの新しいスマホを取り上げ、何かを再生した瞬間、お店の隅っこで淳志さんと沙織さんがフローリングに並んで正座させられたのだ。


「小林くん。沙織。……フタリトモ、オハナシシマショウカ?」

「「……はい」」


 ガタガタと震えながら正座する、私の大好きな人と、世界を飛び回るエリート美女。

 その光景を見た瞬間、私の胸の中にあった「もしかして」という予感は、確信へと変わった。


(ああ……。淳志さんが、またコッソリ助けてくれたんだ)


 どんな魔法を使ったのかはわからない。

 でも、あんな風に悪ふざけみたいな方法で、誰も傷つけずに私がお父さんと思ってる、大将のお店を守ってくれたのは、間違いなく彼なのだ。

 私は、カウンターの奥でこっそりと笑った。

 高嶺の花の恋人たちに挟まれて、冷や汗を流して正座している私のヒーローは、やっぱり今日も最高にカッコ悪くて、カッコいい。


「ふふっ。今日も平和で、楽しい一日だったな」


 小さく呟いて、私は布巾でテーブルを拭き始めた。

 淳志さんへの恋心は、ますます大きくなるばかりだ。


(でも……いつか淳志さんの彼女になれたとしても、あんな風に正座させられるのだけは、絶対に嫌だなあ……)


 背筋をピンと伸ばして説教を受けている二人の背中を見ながら、私は心の中でこっそりと誓うのだった。

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