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『ただの収納スキルですが、神様から「解釈」の変更してもらって現代に戻ったら、人生楽勝でした――』  作者: だい


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第18話:カッコいい女、諦めない少女、独占欲強めな相棒

【桜井香織の場合】


 四十八歳という年齢は、女にとって残酷な境界線だと思っていた。


 仕事ではある程度の地位を築き、周りからは「完璧な美魔女」なんて持て囃されるけれど、見えない天井に行き詰まりを感じる日々。


 プライベートでは子どもたちが完全に独立し、広く静かになった家で、ふと「空虚さ」に襲われることが増えていた。

 

 鏡を見るたび、少しずつ失われていく若さに怯え、周囲の男性から「ひとりの女」として熱を帯びた視線を向けられることも少なくなった。


 ああ、私の女性としての人生は、このまま静かに、仕事だけの枯れたものになって終わっていくのだろう。そう諦めかけていた。


 そんな時に現れたのが、彼だった。

 

 イタリアの異国の地で、仕事の重圧と孤独に押し潰されそうになり、無様に泣き崩れて絶望していた私を、彼は常識外れの方法で掬い上げてくれた。

 そして、「月が綺麗ですね」と、ひとりの「女」として強く、熱く抱きしめてくれたのだ。


 彼の前では、不思議と重たい鎧を脱いで甘えることができる。彼が与えてくれる喜びが、私を女として極限まで輝かせてくれる。

 けれど、ただ彼に依存するだけの、もたれかかるような都合のいい女には絶対になりたくない。


 おでん屋やBBQで顔を合わせたあの十七歳の可愛らしいお嬢ちゃんのような、若さという無敵の武器は私にはない。

 だからこそ、私は彼が真っ直ぐに愛してくれた「カッコいい上司」としての私を磨き続けたいのだ。

 

 たまに思いきり甘えて弱音も吐くけれど、いざという時は自分の足でしっかり立っている、自立した大人の女であり続けたい。

 彼の隣を歩くのにふさわしい、最高のパートナーとして。


 それが、桜井香織という女の、彼に対する一番の誠意であり、愛情なのだから。



【如月ミクの場合】


 私にとって「恋」というのは、テレビドラマや少女漫画の中の、ぼんやりとした憧れでしかなかった。


 それを鮮烈な現実として教えてくれたのは、タチの悪い常連客に絡まれて震えていた私を、嘘みたいにカッコよく助けてくれた淳志さんだった。

 

 あの時、私の前に立って庇ってくれた背中の広さ。大人の余裕があって、優しくて、でもちょっとだけ不器用な人。

 焼き鳥屋のカウンター越しに話す彼との時間は、学校の同級生たちと過ごす日常よりもずっとキラキラして見えた。


 でも、その初恋は、同時に「失恋」という痛みも私に教えてくれた。

 淳志さんには、私はまだ大人の女性として見られて居ないから。

 「ごめん」と、真摯に頭を下げてくれた彼を見て、一度はちゃんとフラれたし、お母さんにも隠れていっぱい泣いた。


 けれど、おでん屋のカウンターで見た彼の屈託のない笑顔や、この前のベランダBBQで両方からお肉を突きつけられて、冷や汗をかきながらタジタジになっている姿を見ていたら、不思議と諦める気なんて綺麗さっぱりなくなってしまったのだ。


 だって、私はまだ十七歳だ。

 

 あの完璧で、息を呑むほど綺麗な大人の上司の人には、色気や経験では絶対に敵わないかもしれない。

 でも、私にしかあげられない元気や、沈んだ心を温めるお日様みたいな明るさが絶対にあるはず。

 彼が暗い顔をしている時は、私が美味しいご飯と笑顔で引っ張り上げてみせる。


 今はまだ子ども扱いされているかもしれないけれど、大将に料理をもっと教わって、大人の女性になれるように自分を磨いていく。

 一度フラれたくらいで、立ち止まっていられない。

 隙あらば、絶対またアタックして、いつか振り向かせてやるんだから!



【サラの場合】


 人間なんて、どいつもこいつも見る目がないバカばっかりだと思っていた。


 ガラス越しに薄っぺらい「可愛いー」を連呼して、少し育って売れ残りになった途端に見向きもしなくなる。夜のペットショップのケージの中で、アタシは人間という生き物をすっかり見限っていた。


 だから、あの小市民全開でデリカシーのない「オッサン」が、アタシの言葉を理解して家に連れ帰ってくれた時は、ほんの少しだけ驚いた。

 

 口は悪いし、変なチート能力を持ってるし、たまに怖い顔で残酷なこともする。

 でも、最高に美味い熊肉を貢いでくれるし、アタシの怒りも悲しみも、黙って受け止めてくれる。

 

 人間にしては、悪くない。アタシの「相棒」にしてやってもいいか。最近はそう思っている。


 だけど、一つだけどうしても納得がいかないことがある。

 

 香水臭いフェロモン女といい、馴れ馴れしい人間のガキといい……アタシの縄張りに、メスが多すぎるのだ!


『おいオッサン! アタシの下僕のくせに、他のメスに鼻の下伸ばしてんじゃねえ!』


 平和な休日のリビング。ソファでくつろぐ淳志の腹の上にドスンと飛び乗り、サラは思い切り睨みを効かせた。


『わかったか! わかったら今日のおやつは高級な鰹節にしろ!!』

「はいはい。お前が一番偉いよ、サラ様」


 苦笑いしながら顎の下を撫でてくる、大きな手のひら。

 我が家のヒエラルキーの頂点たるアタシの抗議の声は、今日もオッサンの脳内に直接、そして平和に響き渡るのだった。

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