断頭台にだまされた!!
タイムラインを駆け抜けていった『断頭台イベント』の概念に何かを掛け合わせる所業。
こうするしかあるまいっ!!
「だまされた!! こまった!! ずるいぞレイちゃん!!」
ラーちゃんは断頭台で、元気に叫んでいた。
*
今日はずいぶん楽しい一日だった。
いつも「ひとでなし!!」とか「ばけものー!!」っていわれてみんなから遠ざけられてばかり。あんまり気にしてないけれど、やっぱりちょっとは寂しいもの。そんななか、友達から誘いがあれば楽しいに決まっている。
そう、今日はお誘いがあったのだ。
ラーちゃんはデューラー侯爵令嬢に誘われて、街を一緒に探検した。
最初にお洋服屋さん。
「この服、綺麗でしょう? 買ってあげるわ」
デューラー侯爵令嬢のレイちゃんは、私に服を買ってくれた。
レイちゃんにそっくりの青いドレス。
背丈は似たようなものだからいいけれど、なんだかちょっと違く見えた。
「ちがうわね」
レイちゃんはそう笑って言った。
「もっと金髪だったらなぁ」
私がそういえば、レイちゃんは微笑んで答えた。
「金髪になればいいのよ!!」
次に行ったのは髪の毛屋さんだった。かつらっていうらしいけど、よくわからない。
「まかせて」
レイちゃんがえいえい、って選んで、お店の人もうんうん、ってしていた。楽しそうだなぁって見ていたら、いつのまにかレイちゃんとお店の人が私を囲んで大きく頷いていた。
「動いちゃダメよ?」
レイちゃんは私の顔をガシッと抑えると、お店の人に言ったのだ。
「今よ!!」
お店の人がぎゅうぎゅうと私の髪をぐしゃぐしゃにした。ちいさくちいさく寄せ集めて、上から何かをスパッとはめる。
あんまり力が強いものだから、首が取れてしまいそうだった。こまるなぁ。
「できましたよ、お嬢様」
そう言ってお店の人は、ぴかぴかのがらす?を持ってきた。
そこにはきれいな金髪で、青いドレスだれかの姿があった。
「きれー!!」
「ふふん」
レイちゃんも自慢げ。
私だってなんだか嬉しくなる。
「これ、誰なの?」
「私の大切な友達よ」とレイちゃん。
「あなたですよ」とお店の人。
「……!? わたし!? これが!? レイちゃんみたーい!!」
私は嬉しくなって、レイちゃんに飛びついたんだ。首が取れてしまいそうなほど嬉しくて仕方がなかった。
レイちゃんが、大事な友達って言ってくれた!!
レイちゃんみたいに綺麗にしてくれた!!
それだけじゃない。
そのあとは豪華なご飯に誘われたんだった。
トマトスープにケチャップライス。パプリカっていうへんなピーマンみたいなのに、すいかに、いちごまで!!
あまくてあまくてとっても幸せだった。
お腹いっぱいなのに、
「もっと食べなさい?」
と口いっぱいに詰められたんだった。
りすじゃないのに。
でも、そんな意地悪をするレイちゃんも可愛かった。
のだけど!!
「騙された!! こまった!!」
一緒にお家で寝ようって話になったのに、急に「じゃあ、身代わりよろしく」って言って、レイちゃんはすたこらさっさ。
しばらくしたら「いたぞ」「こっちです、にげてはだめです」って言われて連れてこられて。
気がつけば断頭台の上!!
「こまった!!」
うーん、こまったなぁともじもじしているうちに、厳格な声が響く。
「レイ=デューラーの処刑を始める。罪状は令嬢判定魔法結果が……『悪役』だったからだ!!」
よくわかんないけど、レイちゃんは処刑されそうになったらしい。でも、いまはわたしがレイちゃんだと思われてて……あれ?
「これより、ギロチンによる処断をする!!」
わたしが、みがわりなのでは?
レイちゃんのばか。ひどいや。言ってくれたら良かったのに!!
ゆるさないぞー!!
そう思っている間に
「処断ッ」
*
「うまくいったわね」
レイちゃんはにっこりしてる。
「すごかったのよ? がしゃーん、と何かが落ちてきて、ラーちゃんの首はポロリところがり落ちたの。ぱしゃーと、赤い液体がちらばってたし、みんなレイ=デューラーは死んだと思ったわ」
「私を身代わりにしたからなー、許さないぞレイちゃんー!!」
「ごめんなさいね、でも、演技とかできないと思ったから。あと、私が死んだら悲しいでしょう?」
「それはそうだけど!!
いくら私がデュラハンでも、怖いものは怖いんだよ!! うまく血が出るかなぁとか思ったじゃん!!」
「だからいっぱい赤いもの食べたでしょう?」
「それ、そういうことだったんだ!?」
「そうよ」
「でも、何も言わずに処刑台に行かせるなんて許さないよー」
「ごめんなさいね、じゃあ、これから一生かけて償うから、許してちょうだい?」
にっこりと、レイちゃんは微笑む。
ああ、ずるい。そんな顔をされたら断れないのを分かってるんだ!!
レイちゃんは、やっぱりいつでもずるくって、
私の大好きなレイちゃんだった。
掛け合わせたのはッ
首なしでしたッ!!




