第3話 ギルド
【ドル市】には【ギルド】と呼ばれる組織が存在する。
基本的に【ギルド】に所属し、依頼をこなす事で報酬を得ることがこの【ドル市】で生活する上では必須条件だ。
ごく僅かだが、【ギルド】に所属せず、個人で依頼をこなす者も存在するが、いずれは【ギルド】に所属する方が効率良く依頼をこなす事ができる。
【ギルド】を自ら結成する事も可能だが、1ヶ月で3名以上のメンバーを集めなければ、自動的に解散される仕組みになっており、一度解散してしまうと、1年間ギルドを再結成できなくなってしまう。
「取り敢えず、俺の夢を叶えるには【ギルド】だな、でも、誰かの下に付くのはまっぴらだ、俺は【ギルド】を結成する!!」
「私はハクラに従うぞ、なんかめんどくさそうだがなァ」
俺たちは【ギルド】を結成するべく【ドル市】の中央区にある、ギルド受付に急いだ。
ギルド受付の前には噴水があり、女神の銅像が建てられてある。
それはなんとも象徴的なオブジェで、嫌でも目に入ってくる白い大きなオブジェだ。
と、そのオブジェに気をとられていると、声がした。
「遅ぇなぁ、この世界は。」
俺はその声の有りかを確かめるべく、オブジェを注意深く見た。
すると、座っているではないか、オブジェの上に一人の男が。
その男は白い女神像とは対照的に、場違いなほど真っ赤に染まった赤い髪をしていた、優しい赤じゃない、不吉な赤い髪だ、その髪はまるで女神から血が流れているかの様にも見えた。
「うわっ、なんだよお前、女神の上に座るなんて、バチが当たるぞ!」
男は、ため息を付きながら俺に向かって話し始める。
「バチが当たる?遅ぇよ、バチが当たるのも遅ぇ、バチが当たるなら俺がこのオブジェに座った瞬間に当たらねぇと意味がねぇ、そうだろ?」
「何言ってんだお前」
「例えば、俺が今ここでお前を一瞬で殺したら、お前にバチが当たった事になるのか?俺と言う残虐非道な人間に指図したバチがょお」
「は??何わけわかんねぇ事言ってんだお前!」
すると男は、俺から視線を外し、ゾーラの方を睨む
「おい、女、お前は……」
「耳障りだ、失せろ、塵が」
ゾーラが睨むと男は一瞬にして彼方へと吹っ飛んでいった。
「これでよかっただろう?ハクラ」
「あ、ああ、助かったよ、サンキューな」
あまりにも一瞬の出来事で、少しゾーラに恐怖さえ覚えた。
やはり、とてつもない力を持っている。
ゾーラが時折見せる、この冷酷さは、魔物のそれだった。
「いいねぇ、気に入ったぜ女、お前は早ぇな」
さっきゾーラにぶっ飛ばされた男がゾーラの肩をたたいた、ゾーラは一瞬も驚かず、ただただ不快そうに男の手を払った。
「お前、ゾーラにぶっ飛ばされたんじゃ??どうやって戻ってきたんだよ!!」
「遅え、遅ぇよお前、気づくのも何もかも、そんなんじゃドル市じゃやっていけねぇぜ」
うるさい、と思いつつも変に的を得ていたその言葉に俺は反論できなかった。
確かにこの男の言う通りだ。
ゾーラがいるからこのドル市に足を踏み入れる事が叶った、全ては自分の力ではないのだ。
「仲間になってやる」
「は?」
男はスタスタとゾーラの前に立ち、どこから取り出して来たのか分からない花束をゾーラに向けていた。
「但し、この女は今日から俺のモノだ!!気に入ったぜ、あんまり見ない顔だが、そこがまた、いい…それにお前は唯一俺より先に攻撃した人間だ。」
「失せろ下衆が」
「おっと、さっきの魔法はもうくらわねぇぜ?もうその技は遅ぇ」
一瞬で男はゾーラの前から姿を消し、俺の背後へと周り、黒いナイフを首に押し付けられた。
「くそっ、なんのつもりだよ!」
「この男に金を積まれたか?それとも弱みを握られたか?」
「ハハッ愚かよのぉ、只の人間がこの神に安い人質でもとったつもりか?笑わせる。」
「いいねぇ、いいねぇ、そう言うのが好きなんだよ俺はよぉ!ただし、一瞬でも動いたらこの男は殺す、な?素直に俺のモノになれ女!」
ゾーラは、また深いため息を付いた、と同時に男は自分の体が全く動かない事に気がついた。
「へぇ、呪いか……肩に触れた時、か……抜かりないねぇ」
「た、助かった……」
「お前ごときが神に選択を迫るなどムシズが走る!さぁ、選べ、ここで死ぬか、我が主に一生を捧げるか!」
「いや、まてまて、こんな物騒なやつに一生いられても困るが?」
「ふっ……はっハハッ この俺が敗北するとは、参ったよ、お手上げだぁ、殺すなら殺してくれと言いたいとこだが、俺にはたった今、この世に未練ができた、女、お前を一生かけて自分のモノにすることだ!そう、殺してでもな」
男はそう言うとゾーラの呪いが解けたのか、ナイフを地面に落とし、俺の前に跪いた。
「あんた、さっきは悪かったな、いや、今はもう主様か?主、俺は今いるギルドを抜け、貴方様に一生ついていく事を約束しましょう」
「は、はぁ??ギルドを抜けてってそんな簡単に………まぁ、お前強そうだし、ちょうどギルドも3人居れば作れるから、悪い話しじゃないけどさぁ」
「まぁ、よいではないかハクラ、こやつが強いのは確かだ、それにハクラの夢にも戦力は必要ではないか?私の下僕にしてやろう」
「決まりだな、俺の名前はハルバ、元々所属してたギルドは【赤兎】だ」
耳を疑った、【赤兎】(アカウサギ)と言えば、ドル市の3大勢力の一つ、誰もが知る、受けた依頼はどれも高レートの超一流のギルドだ。
「よし、これでギルドを結成できる!早速申請しにいくぞ!!」
こうして、目指す目的はバラバラの3人が奇妙な出会いを果たし、ギルドを結成することになった、




