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第二話 ドル市

事体は思っているよりも深刻だった。


エドが死んだ事は瞬く間に町中に広まり、【ガーディアン】と呼ばれるこの町の警備部隊が犯人を捜索し、町のいたるところで聞き込みを開始している。


俺が捕まるのも時間の問題だろう。




「くっそ、取り合えず遠くに逃げるにしても、こんな早くに【ガーディアン】が動き出すとは…俺が被害者なのになんで逃げなきゃなんねーんだよ」


「お前の言う【ガーディアン】とやらは、そんなにも厄介なのか?」


ゾーラが他人事のように聞いてくる。

この女のせいでこんな事になっているのに…のんきな奴だ。


「ああ、【ガーディアン】に見つかったら終わりだ、事情を説明してもあんなこと誰も信じちゃくれねーだろうよ、殺人は大罪、即刻打ち首だろうな。」


「ふーん、私が全員灰に変えてやってもいいけど?」


「バカやろう、そんなことしたらもっと最悪だよ、国を敵に回す事になるぞ」


「バカはアンタよ、国なんて敵に回したって、私にかかれば一瞬で壊滅させられるわ、ま、主人はありえないぐらい最悪な事に貧弱なあんただし、アンタに任せるけど」


ゾーラは面白くなさそうに深いため息をついた。



どこか遠くへ、ここで捕まる分けにはいかない。

そんな俺の思いを見透かしたかのように目の前に【ガーディアン】が立ちふさがった。




「おい、お前、怪しいな、ちょっとこっちへこい」


「ま、まずい、くっそ、逃げるぞ、ゾーラ!」



俺はゾーラの手を引っ張ろうとしたが、そこにはゾーラの姿は無く、最悪なことに【ガーディアン】の方へと歩いて行くではないか…

俺が気づいたころにはもう遅かった。



「【ガーディアン】っていったかしら、アンタら偉そうにしてるけど、私より強いのかしら?」


終わった……

俺は、この短時間で二度も死ぬことになるのか。


「なんだこの無礼な女は!!!お前たちこの女を捕らえろ!!!!!」


「待ってくれ!、俺なんだよ、俺がこの女に指示したんだ、だからこの女は関係ねー」


俺はとっさにゾーラをかばってしまった。

なんでこんな、何でこんなにも俺は運が無いんんだ。


「アンタ、かっこいいとこあるじゃない、特別に私がデートしたげる♡」


ゾーラが不敵な笑みを浮かべ、指を鳴らすと、一瞬で景色が変わった。

さっきまで町に居た俺たちはまるで別世界、別の場所、見たことも無い繁華街の真ん中にいた。



「え?な?、、なんだこれ、どこだここ?」

「さあ?デートするのにふさわしい場所をイメージして転移魔法を使ったのよ、その様子だと魔法を見るのも初めてみたいね」


もう考えることを俺はやめた。

考えても到底理解出来ない出来事がこの短時間で起き過ぎた。


嫌でもこの異常な状況を受け入れざるを得なかった。



「ま、もうなんでもいいけどありがとな、助かったぜ、ゾーラ」



まあ、お前が余計なことを言ったからこんな羽目になったのだとは言わないでおいた。



「礼を言われたのは何年ぶりかしら♪アンタ変わった人間ね、気に入ったわ♡」


「そりゃどーも、とにかくここがどこか把握するのが先だ。」


そう俺が言い切るのが先かどうか、ゾーラが勢いよく俺の手を引っ張り、ずかずかと繁華街を歩きだした。


「お、おい、何しやがる、どこいくんだよ!」


「言ったでしょ、デートよデート♪ケーキと言うものを食べてみたいのだ♪」



俺は仕方なく、半ば強引にケーキ屋へと足を運んだ。

ゾーラは道中腕を組んで来て、まるでバカップルのようにベタベタと俺に引っ付いて来た。

周囲の視線が嫌でも突き刺さりかなり恥ずかしい。



少し歩いた場所にピンク色の看板にピンクの文字でスイーツと書かれた、目がおかしくなるほどキラキラしたケーキ屋があった。


「ここにしましょ!ダーリン♡」

「誰がダーリンだ、勘弁してくれ……」


「いらっしゃいませ【ドル市】スイーツ天国へようこそ!!!」


俺は店員のその言葉に耳を疑った。


「さっきの店員【ドル市】?って言ったか……ここもしかして【ドル市】なのか?」


俺のそんな言葉に耳も貸さず、ゾーラは目をキラキラさせながら次々に、ありとあらゆるスイーツを注文している。



「お、おい!ゾーラそんな注文しても俺そんな金ねーぞ!それに食いきれるのかよそんな頼んで。」

「乙女の胃袋を舐めるでない、こんな量私にかかれば一瞬よ」

「いや、一瞬で食われても困るが」


俺の忠告をもろともせず、文字通り一瞬でゾーラは大量のスイーツをたいらげた。

こうして普通に食事をしていると呪いの神と言う禍々しいゾーラも、普通の女の子に見えてくる。


「うまかったぞ!!やはりこのモンブランケーキと言うのがたまらなかった♪栗か、栗を使っておるのだな、これは傑作だ♡」

「そういえば、このメニュー表、料金が書いてないな、会計が怖くなってくるぜ」

「細かい事はかんがえるな、感じろ、胃袋を満たす事だけを考えるのだ」


お前金持ってねーだろ、と突っ込みたくなる気持ちを我慢し、会計をするため定員を呼び出した。


「すいません、お会計で」


俺がそう言うと、店員はびっくりした様子でこちらを見ている。


「お客様、【ドル市】は初めてでございますか?」


「は、はあ」


「【ドル市】では食事に関して料金は一切いただいておりません。全て無料でございます!」



開いた口がふさがらなかった。

無料?嘘だろ、こんなに食ったのに??

俺の住んでた町なら数万はするはずだ。


「え??ホントですか?後で請求されたりしない?」

「一切そのような事は致しません、ありがとうございました!またおこしくださいませ!」




まるで異世界に迷い込んでしまったかのような感覚だ。

俺が住んできた町での常識をいともこう簡単に壊されると、驚きを通りこして唖然としてしまう。


だが俺は内心かなり嬉しかった。

料金が要らなかったことに対してでは無く、ここが夢にまで見た【ドル市】と言うことが分かったからだ。


やっと好転してきた、俺のゴミみたいな人生が。

大金を得れるチャンスと最も近い場所に俺は立っている。



「俺はここで0から人生をやり直す!やってやる、何もかも全部手に入れて、世界を作り変えてやる!!!」

「私が居れば、お前のその願いなど一瞬で叶えてやれるぞ?私は最強だ、最強の神ゾーラ様だからな」


そういえばゾーラの事をまだ何も知らなかった。

呪いの神、魔法を使える、と言うこと以外は全く謎だ。


「そういえばゾーラって実際どのくらい強いんだ?召喚獣の中でも中級ぐらいか?」

「中級?笑わせる、私の力はお前たち人間の作った階級で言うところの超級だ、ちなみに、全ての召喚獣の中で最強と呼ばれているのが私だ。」


「ちょ、超級????そんなのウィズクラスじゃねーかよ!!!ほ、本当なのか?」

「当たり前だ、私を誰だと思っておる」



にわかに信じがたいが、嘘を言っている様にも思えない。

この話が本当なら、俺はマペットから一気にウィズに昇格した、いや、正確にはウィズではない、ウィズとは生まれながらにして天才と呼ばれるものを指す。


だが俺は【ギャンブラー】の能力でウィズとなった、言わばイレギュラーなウィズだ。


非合法召喚師とでも言うのだろうか。




「ともかく俺にはこんなゴミみたいな、マペットには夢すら見れないゴミみたいな世界を作り変える夢がある。そのためにお前の力が必要だ!ゾーラ!頼む、俺に力を貸してくれるか」


「そうさな、お前のそのバカげた夢、叶えてやろう。私も人間界は久しぶりだ。その代わり私の伴侶になってもらおう、これは契約だ、お前が外道になろうとも、この世界を血に染めようとも私だけは一生お前の傍にいてやる。愛してやる。」


「なんだよそれ、伴侶って、、まあいいぜ、俺の名前はハクラ、ハクラ・フルベットだ!改めてよろしくな、ゾーラ!!!!」

「ああ、これからも私を満足させて、楽しませてくれよハクラ」



胸が躍る、鼓動が早くなる。

生きていると実感する。


人生がやっと始まった気がした。


どれだけあがいても夢すら持てなかったあの頃の自分に終止符を打つ。

ここからだ、ここからが俺の物語の始まりだ。
























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