検証④
「こいつも打ち止めか。サクラ頼んだ」
「は~い」
ゴブリンアーチャーの矢が尽きたのでサクラに倒してもらった。
あれから同じ作業を続けているものの、一向にスキルを閃くことは無かった。
てっきり同系統のカウンターのスキルがもっとあると思っていたんだけど、覚えたのは近距離用と遠距離用それぞれ一種類づつだけだった。
「ん~……もしかしてカウンタースキルって一種類しか無いのかな? いやまさかこんなに少ないわけないよな……」
「私はこういうのよく分からないけど、もしかしてレベルが足りないせいとか?」
「それはあるかもな……」
閃くにはある程度のレベルが要求されるという可能性は否定できない。他にも条件はあるけど、その1つがレベルというのもありえるだろう。
もしかして強力なスキルほどレベルが要求されるのだろうか。
だとすると、どれだけ閃くための行動をしていても時間の無駄ということになる。
この憶測が正しければの話だけど。
もしくはやり方が間違っているのかもしれない。
けどこの方法で2つもカウンタースキルを閃いたんだ。ならば同じやり方で続けていれば閃くと思ったんだけどな。
他のカウンタースキルはもっと別の条件が必要なんだろうか。
う~ん……分からん。
現状では情報不足すぎるし考えるだけ無駄かもな。
「次で最後にしよう。これで閃かなかったら他の方法を考えるまでだ」
「じゃあすぐに探すね!」
というわけでゴブリンアーチャーを探し出した後、同じ作業をすることにした。
しかしやはり閃くことはなく、矢が尽きたゴブリンはサクラによってあっさり倒されてしまった。
こうなるとは思っていたがちょっぴりガッカリした。
あとは街に帰るだけ。
そう思っていた時だった。
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《ハーフ&ハーフ》を閃いた!
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「あれ? 何か閃いたぞ」
「おお! ということはガイ君のやってたことは無駄じゃなかったんだね!」
「いやこれは狙ったスキルじゃない。どうやらカウンタースキルじゃないっぽいな」
「そうなの?」
「とりあえず見てみよう」
スキル名からしてもどういう効果なのか想像しにくい。
さっそく詳細を見てみよう。
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【パッシブスキル】ハーフ&ハーフ(未習得)
相手に与えるダメージが全て半減するが、
相手から受けるダメージが全て半減する。
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へぇ。こんなスキルがあったんだ。
与ダメージが半減する代わりに、被ダメージも半減するということか。
普通のプレイスタイルならあらゆる攻撃ダメージが半減してしまうというというのはかなり痛いデメリットになるだろう。単純に考えてもDPS半減だからな。
しかし俺は違う。俺は攻撃もしないし攻撃スキルも一切取るつもりはない。火力は完全に捨ててるからな。
俺にとってはデメリットは無いに等しい。
つまり俺みたいなデバッファーにはうってつけのスキルというわけだ。
「いいなこれ。こういうスキルが欲しかったんだよ! ダメージを大きく減らせるからだいぶタフになれる。カウンタースキルも合わせればかなり耐えられそうだ」
「よかったぁ。これでガイ君も倒されにくくなるよね!」
「ああ。サクラのお陰でだいぶ捗ったよ。ありがとな」
「ガイ君の役に立てて嬉しい。これからもどんどん頼ってね! 私もっとがんばるから!」
「お、おう」
マジで助かっているんだよな。俺1人だともっと効率悪い作業になっていただろうし。サクラが居なかったらスキルを閃くことすら無かったかもしれん。
でもサクラは俺とばかり一緒になることについて思うところは無いんだろうか。
サクラは毎日俺と同じパーティになっているからな。
「それは助かるんだけど、サクラは俺とばかりパーティ組んでてもてつまらないんじゃないのか? サクラがやりたい事があったら遠慮せずにそっち優先してもいいんだぞ?」
「つまらなくなんてないよ! 本当に私がやりたいことをしてるだけだから気にしないで!」
「で、でも、こんな地味すぎる作業にまでも付き合ってくれなくてもいいんだぞ? こういう作業は俺一人でやるつもりだったし……」
「そういう時こそ私が力になってあげたいの! 一人では大変だろうし、なにより寂しいと思って……」
俺としてはありがたいんだけど、サクラには無理強いしたくない。
サクラにも純粋にこのゲームを楽しんでもらいたいし、俺ばかりに構うのもよくないと思ったわけで。
「それとも……私と一緒じゃ嫌だった……?」
「うっ……」
涙目で見上げてくるサクラ。
そんな捨てられた子犬みたいな目で見ないでくれ……
「い、嫌なわけないよ! サクラと一緒で楽しいしすごい助かってるよ! ただ気になっただけで……」
「じゃあこれからも一緒に居ていい?」
「ああもちろんだよ。サクラがやりたいようにしたらいい。だから泣かないでくれ……!」
「よかったぁ……ずっと一緒に居られるんだね……えへへ……」
俺としてはあんまりサクラを縛るようなことはしたくないんだけど、本人が自らの意志でやっているのなら問題ない……のかな?




