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緊急クエスト

 マリーさんの案内のお蔭で、無事村へと到着した。


「ここが私達の村です。ルーダ村と呼んでいます」

「へぇ~」


 これといって変わり映えのない普通の小さな村だ。人口は100人程度といったところか。

 マリーさんの後を追い、とある家の前に到着。


「ここが私の家です。どうぞ中に入ってください」

「あ、うん。お邪魔しまーす」


 家の中に入ると、中年のおっさんが渋い顔で座っていた。


「あ、お父さん。帰ってたんだ」

「おう。ついさっきな」


 なるほど。あの人はマリーさんの父親だったのか。

 やっぱりというか、あの人もNPCだった。


「おや。マリーよ。その人は誰だ?」

「この人はね、私を救ってくれた恩人さんなんだよ!」

「なに? それはどういう意味だ?」

「実はね……」


 マリーさんが父親にさっきあった出来事を話す。


「――ってわけなのよ」

「マリーよ……頼むから無茶はしないでくれ。普段からあまり遠くに行くなと言っておいただろう?」

「だ、だってぇ……村周辺だといい山菜は取れないし……」

「あのな。それで命を落としたらどうするんだ? 死んだら元も子もないだろうに」

「ご、ごめんなさい……」

「おおっと。この方に礼をするのが先だ。娘を助けてくれて本当にありがとう。ほらマリー」


 そういって頭を下げ、慌ててマリーさんも頭を下げた。


「い、いえ。別には大したことはしてませんよ」

「だが貴方が居なければマリーは無事では済まなかった。ええと……そういや名前聞いてなかったな」

「俺はガイって言います」

「ガイ君か。オレはクロードだ。この度は娘が迷惑かけたようで、すまなかった」

「だ、大丈夫ですって。気にしてませんから。無事でなによりですよ」

「そうか……では食事でもしていかないか? こんなことでしか恩は返せないが、せめてもの気持ちだ」


 食事かぁ。

 そういやこのゲームでまだメシは食ったこと無かったな。


「じゃあお言葉に甘えて、頂ます」

「そうか! なら準備するから待っててくれ! おいマリー! お前も手伝え!」

「えっ!? 私も!?」

「当たり前だ! ほらさっさと準備しろ!」

「う、うん」


 2人は立ち上がり、台所で料理し始めた。


 何分か経った後、テーブルの上に料理が並べられていった。


「出来たぞ。有り合わせで悪いが、うちではこのくらいしか出せん。だが味は悪くないはずだ」

「私もがんばったんですよ!」

「そ、そうか……」


 テーブルの上には、なかなか美味しそうな料理が並んでいる。

 どれどれ。さっそく頂くとしようか。


 ……お。このスープ美味しいな。


「うん。美味しいよ」

「よ、よかったぁ……」

「オレ達も食おうか」

「実は私もお腹空いてたのよね」


 ……ん?

 なんだこのアイコンは?

 画面の端に見慣れないアイコンが表示されている。なんだろう?


 メニュー画面を出し、確認してみることに。



 ――――――――――――――

【食事効果】村人の手料理

 品質:★


 MPの回復速度が1%上昇する。

 ――――――――――――――


 へぇ。食事でバフがかかるのか。

 他にも食ってみよう。食い物によって効果が違うってことかもしれん。


 そう思って違う料理に手を伸ばすが――


「た、大変だああああああああああ!」


 うおっ。なんだなんだ!?

 外から叫び声が聞こえてきたぞ。


「い、今のは一体?」

「な、なに!?」

「オレが様子を見てくる。マリー! お前はここに居ろ」

「う、うん」


 クロードさんが慌てて外に飛び出していった。

 ふむ。俺も気になるな。見てくるか。


「俺も見てくるよ」

「ええ!? ガイさんも!?」

「ちょっと気になるからね。んじゃ行ってくる」

「き、気を付けてくださいね!」


 俺も急いで外に出て後を追うことにした。

 外に出るとクロードさんは、1人のおっさんの前に居た。

 おっさんは汗だくで肩で息をしながら、何かに脅えたような表情をしていた。


「お、おい! そんなに慌ててどうしたんだ!?」

「た、大変なんだ! み、皆に知らせないと……!」

「落ち着け。何があったのか教えてくれ」

「ゴブリンだ……ゴブリンがこの村に攻めてきてるんだ!」

「待て待て。ゴブリンくらいならオレらで何とかなるだろう? そこまで慌てることか?」

「そ、それだけじゃない。デカいゴブリンも居るんだ……見たことのないデカいゴブリンもこっちに向かって進軍してきているんだ!」

「な、何だと……!?」


 おいおい。なんじゃそら。デカいゴブリンだって?

 そんなモンスターがいるのかよ。


「通常のゴブリンよりも数倍はデカかった! あれはおれ達でなんとかなるレベルじゃない。すぐに逃げないと……」

「なんてことだ……」


 そんな光景を眺めていると、突然ウィンドウが表示された。


 ――――――――――――――――――――――――――――

【緊急クエスト】村の危機


 ■クリア条件

 ゴブリンロードを倒す。


 ■失敗条件

 ゴブリンロードが村に侵入する。

 ――――――――――――――――――――――――――――


 おお? クエストだと? このタイミングで?

 ああそうか。きっとプレイヤーがこの村に訪れると出るクエストっぽいな。

 なるほどね。こういう場所にもクエストが出てくる仕様ってわけか。

 つーかデカいゴブリンって、ゴブリンロードのことなのね。

 いきなりネタバレ食らっちまったよ……


 とりあえずこのクエストをやってみるか。敵がどれぐらいの強さなのかは知らんが、俺でもなんとかなるかもしれん。


「そのゴブリンってどこにいるんです?」

「ガイ君? いきなりどうしたんだ?」

「俺ならそいつを何とかできるかもしれません」

「な、なんだと……!?」


 ゴブリン程度なら対処出来たしね。そこまで大変じゃないはず。


「き、君は一体……?」

「倒せなくても時間稼ぎぐらいはできるはずです。その間に村のみんなは避難してください」


 クエストの失敗条件は『ゴブリンロードが村に侵入する』と表示されている。

 つまり必ずしも倒す必要はないということだろう。


「ほ、本当にいいのか? 君みたいな人に頼んで……」

「早く教えてください!」

「あ、えっと。あっちの方向から来たから、たぶんその先にまだいるはず――」

「じゃあ頼みましたよ!」

「えっ!? お、おい君!」


 おっさんが指差した方向に急いで向かった。

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