検証①
あれからしばらく歩き続け、ゴブリンが出現する森に到着した。
「さてと。とりあえずゴブリンを見つけないとな」
「なら私が先頭で歩くね。ガイ君は後ろから付いてきて」
「ああ頼んだ」
サクラが森へ入り俺もその後に続いて付いていくことになった。
それから特に苦労することなく前方にゴブリンを発見。サクラはすぐに剣を取り出して構えた。
「ゴブリン居たよ! これからどうするの?」
「俺があのゴブリンの相手するから。サクラは何もしなくて大丈夫だ」
「え……ガイ君1人で戦うの……?」
「戦うというよりただ作業するだけというか……まぁ見てなって」
俺は前に出てゴブリンが居る方向へ向かう。すると前方に居るゴブリンも俺の存在に気が付いたようだ。
ゴブリンは棍棒を手に持って威嚇しながらこっちに近づいてきた。
『ギャッギャッ!』
「さあこい!」
一直線に突撃してくるゴブリン。
そして目の前まで近づくと同時に棍棒で殴ってきた。
「おっと」
それを盾で防ぐ。
だが一度防いだだけでは攻撃は止まらない。
『ギー! ギャッ! グギャ!』
「よっ……ほっ……はっ……」
次々と攻撃を繰り出すゴブリン。
それを受け止める度に盾が殴られる音が鳴り響いた。
ゴブリンの攻撃は単調というかワンパターンなので簡単に防ぐことができる。初心者でも狩れるように想定されているせいか、そこまで強く設定されていないようだ。
さすがに集団でこられたら厳しいだろうけど、1体しか居ないのなら余裕だ。
「サクラは他のゴブリンが襲ってこないか見張っててくれないか。俺はこいつに集中したい」
「任せて! 絶対にガイ君の邪魔はさせないから!」
これで安心して目の前に集中できる。
本当ならこういった地味な作業は1人でやるつもりだったけど、サクラが居てくれるお陰で実に捗る。横沸きするモンスターの心配が不要になるからな。
こんな事までも協力してくれるサクラには感謝しかない。
それから数分ひたすらゴブリンの攻撃を防ぐことに専念した。
しかし新しいスキルが閃くこともなく、変わり映えの無い作業が続いていた。
「サクラ。そろそろこいつ倒してくれないか。ちと休憩したい」
「は~い」
サクラは俺の目の前にいたゴブリンを倒してから一息ついた。
「ん~……特に変化は無いか……」
ステータス画面を表示させて変化が無いか確認してみるが、変わった箇所は見つからなかった。
「ガイ君はVITを増やしたいんだよね? この方法で合ってるの?」
「分からん。それを確かめるための検証だからな。そもそも狙ったステータスを増やせるかどうかも不明だしな……」
今の俺はデバフ耐性のRESばかり増えてるからな。これはデバフスキルばかり使っているせいだと思う。というかそれしか思いつかん。
ならば攻撃に耐える回数を増やせばVITが増えると思ったんだ。
けど現状は何も変化なし。
もしかしたらレベルが上がらないと増えないんだろうか。
レベルが上がるまでの行動でどの項目のステータスが増加するのか変化し、レベルアップ時に累積した分上昇するという仕様なのかもしれない。
それならやっている行動も無駄じゃないと思うんだけど……
それとも盾で防いだのがダメだったのか?
ダメージを受けないと大して影響が出ないという可能性もある。
「そうだ。サクラはVITどれぐらいあるんだ?」
「ちょっと待ってね。えーっと…………38あるよ」
「そうか……」
サクラはあまり被弾している場面を見たことが無い。立ち回りがうまいお陰かうまくかわしてダメージを回避していたからな。
俺もダメージを受けないように立ち回っているつもりだ。後衛だからなるべく被弾は避けたいからな。
つまり俺とサクラの条件はそこまで大差ないはずだ。なのに俺のVITは一桁しかないのに対し、サクラのVITは38もある。
ということは、ダメージを受けることが条件とは限らないということか。
俺とサクラの大きな違い。それはスキルだ。
俺は攻撃スキルを一切習得していない。しかしサクラはいくつか攻撃スキルを持っている。
それが影響しているのかもな。
この仮説はそこまで的外れじゃないはずだ。
その証拠にデバフスキルばかり習得しているせいか、デバフ耐性のRESばかり増えているからな。
だがそれはそれで別の悩みが出てくる。
攻撃スキルを捨ててデバフ特化にするつもりだからな。これからも攻撃スキルを習得するつもりは無い。
つまりHPや防御を増やす手段であるVITを上げることができないということになる。
絶対無理じゃないとは思うけどかなり厳しいだろうな。
となれば他の手段で防御面を強化するには……防具か。
防具で何とかするしかないのか……?
ステータスで強化するのは諦めて、高性能な防具を揃えるしかないんだろうか。
う~ん……
……いや。まだ決めつけるのは早いか。
もう少し検証を続けてみよう。まだ始めたばかりだしな。




