尖ったステータス
俺とサクラは街から離れて森へと向かっている。
一緒に歩いていると、サクラが顔を覗かせながら話しかけてきた。
「これからどこに行くの?」
「今から向かうのはゴブリンが出現する森だよ。そこでゴブリンの相手をするつもりだ」
「ゴブリン? 前にも戦ったことあるモンスターだよね。何かあるの?」
「別にモンスターなら何でもよかったんだよ。けどゴブリンなら攻撃が読みやすくやりやすいと思ってな」
「ふ~ん」
なるべく弱くてそれなり戦いやすいモンスターを選んだつもりだ。ゴブリンなら大して強くないし対処しやすいからな。
「それでやりたいことってなーに?」
「昨日のダンジョンで対人があっただろ? そこで俺が攻撃食らったことがあるのを覚えてるか?」
「う、うん…………そういえば……あったね……」
「その時に思ったんだ。今の俺は脆すぎるってな」
たった一撃でHPの半分近く削れてしまったからな。あの時はさすがに焦った。
「一撃食らっただけで半分近く減ったんだよ。それも大して強力だとは思えないスキルの攻撃でな。もしかしたら威力の高いスキルだと一撃死もありえた」
「そ、そんなに危なかったんだ……」
「通常の攻撃でもたった数発で死にかねない。今の俺はそれぐらい紙装甲なんだよな。だから少しでも耐久力が欲しいと思ったんだ」
後衛だからある程度の低耐久は覚悟していたが、それにしても脆すぎた。
どうしてこんなにも脆いのかと考えたが、ステータスを見たら納得した。防具が弱いとかそれ以前の問題だった。
現状のステータスはこれだ。
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名前:ガイ
Lv:18
所持金:172300G
HP:651/651
MP:325/325(+54)
STR:5
INT:8
VIT:11
MND:0(-1)
RES:105
【アクティブスキル】
《ポイズン》《アースバインド》《コンフューズ》《ブラインド》
《アーマーダウン》《ディスウェポン》《スロウ》
【パッシブスキル】
《弱体化の心得》《悪魔の発想》《外道の戦術》
SP:10
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う~む……相変わらずステータスが尖ってやがる。
1桁だらけの中で、RESだけが3桁に突入してるからな。いくらなんでも偏りすぎだ。どう考えてもこんなに要らない。
デバフ耐性のRESだけ高くても意味がない。必要だと思ったこともないしな。
まだデバフを多用するような相手に出会ったこと無いし。現状は死にステと化している。
とまぁ、今の俺はこのようなステータスのせいで防御面が不安なんだよな。だから少しでもHPを上げたい。
確かHPに影響するのはVITだったな。それに防御力も影響してるはず。
というわけで今はVITを増やしたいわけだ。
レベルは20近くあるのに未だにVITは初期値からほぼ変動していない。そりゃあ脆いわけだよ。
このままではパーティで足を引っ張ってしまう。デバフ使う前に死んだら元の子もないからな。
金はあるから防具も揃えたいんだけど、その前にステータスを何とかしたい。どんなに優秀な防具でも元のステータスが貧弱だと効果が薄いだろうしな。
それに、ステータスの変動やスキル次第で使う防具も変わるかもしれない。
なのでまずはステータスの変化を見てから、それに合わせた防具を揃えるつもりでいる。
今回の目的はこんな感じ。
これらのことザックリ掻い摘んでサクラに説明した。
「……というわけさ」
「なるほどぉ。でもどうやってステータスを上げるの? VITを中心的に上げたいんだよね?」
「それの検証も兼ねている。狙ったステータスの上げ方が分かれば今後の参考になるしな」
とはいえ何となく予想はついてるんだよな。それを確かめる目的もある。
「そういえばサクラはステータスのRES値はどれぐらいあるんだ?」
「ちょっと待ってて。えーっと………………まだ8しかないや」
「…………なるほど」
やはり俺が異常なだけか。
デバフ耐性だけ高めても活躍できるとは思えないし。現状は要らないんだよな。
早いとこなんとかしないとな。
「かなり地味で退屈な作業になるとは思うけど覚悟してくれよ? あまりに退屈だったら遠慮なく帰ってもいいからな」
「ガイ君を置いて帰れないよ! 私なら大丈夫! 最後まで手伝うから安心して!」
「そ、そうか。ありがとな」
単純作業の繰り返しになるだろうから俺一人でやろうとしたんだけどな。
サクラはサクラでやりたいことがあればそっちを優先してほしかったんだけど、俺ばかりに構ってても大丈夫なんだろうか。
まぁ無理してる様子も無いしこれ以上言うのも野暮ってもんか。




