廃坑ダンジョン脱出
4層まで無事に辿り着けた俺達はそのまま戻り続け、廃坑ダンジョンから脱出することができた。
「や、やったぁ! 地上に戻れたー!」
「ふぅ。一時はどうなるか焦ったが何とかなったな」
「無事に戻れてよかったぁ……」
緊張から解放されたせいか、ダンジョンから出て途端にその場で座り込んでしまった。
「なんかドッと疲れたな……」
「だよねー……」
「あはは……」
俺はそこまで活躍してなかったのに妙に疲れが押し寄せてきた。こんなにも必死になったのは久しぶりかもしれない。
とりあえずしばらく休憩したい。
「あ。そういえばさっきのスキルは何だったの? ミスリルゴーレムの動きが遅くなったように見えたけど」
「ん? あれはスロウっていう鈍化状態にさせるスキルだ。スロー再生したみたいにゆっくりと動きにしてしまう状態異常なんだよ」
「もぉー! そんな便利なスキルがあったなら最初から使ってよー! それがあればもっと楽にいけたかもしれないのにぃ!」
「俺だってそうしたかったさ。でも理由があって使えなかったんだよ」
本当だったらデバフを活用してサクラを援護したかった。
だけどそれは危険だったんだ。
「理由? 何があったのさ」
「ミスリルゴーレムは動きを封じるような状態になると行動が変化したんだ。アースバインドを使ったら遠距離攻撃するようになったんだよ」
「そうだね。ガイ君がミスリルゴーレムの動きを止めてくれたんだけど、石みたいのを投げてきたの。標的は私だったからよかったんだけど、もしかしたらテレサちゃんが狙われてたかもしれないよ」
「えええ!? そんなことになってたの!? 採掘に必死で気付かなかったわ……」
地面をくり抜いて投げてきたもんな。あれはマジでビックリした。
あれも当たったら即死級なんだろうな。
「だから行動を一部でも制限するような状態になると、別の行動パターンに変化することに気付いたんだ。となると、他のデバフを使ったらまた違う行動パターンになる可能性があった。だから安易にスロウは使えなかったんだよ」
「なるほどねぇ。それは確かに使うの躊躇うわね」
「だろ? だからスロウを使うのは賭けだったんだ。もしかしたら状況が悪化しかねないからな」
結局どういう行動パターンに変化するのかは不明のままだ。
スロウを使ってからすぐに4層に逃げ込んだからな。どういう状況になっていたのか確認する余裕が無かった。
まぁ結果的に無事に逃げ帰れてよかったからどうでもいいけどね。
「それよりテレサはどうなんだ? 採掘でいいもん手に入ったのか?」
「ふっふーん! 2人のお陰で目的の物をゲットできたわよ!」
「それはよかった。頑張った甲斐があったな」
「おー! うまくいったんだね! それで何が採れたの?」
「ミスリル鉱石! これが欲しかったのよー! これを使えばサクっちにいい武器作れるはずだわ!」
ミスリル鉱石かぁ。だからミスリルゴーレムが護っていたんだな。
「他にもいい品質の鉱石も採れたしね。ほんと2人には感謝の気持ちでいっぱいよ!」
「まぁ俺は大して役に立ってないし。サクラが活躍したお陰だな」
「そ、そんなことないよ! ガイ君が居なかったらやられてたかもしれないし! ガイ君も活躍してくれてたよ!」
「そうかな? 役に立てたのなら嬉しいよ」
俺だけだとモンスター1匹すらまともに倒せないしな。攻撃スキルを一切取ってないから当たり前なんだけどね。
デバッファーってはどうしても地味になりがちだ。他と比べたら恩恵を感じにくいってのもある。
攻撃役のような派手さはないし、盾役みたいな頼れるような印象が無い人が多いだろう。
だからこそ自らデバフ役を買って出る人は少ないと思う。
正直場所によっては存在意義すら失いかねないポジションだしな。今回のミスリルゴーレムがいい例だ。
デバフが通じにくい相手が多い状況だとどうしてもお荷物になりがちだ。そういう状況だとデバッファーはやることが少なくなる。
そういう印象を持っている人が多いはずだ。
だがそれがいい。そういう不遇な環境があっても俺はデバッファーを続ける。
例え他の人から不遇扱いされようが止めるつもりはない。
俺はデバッファーを極めると決めたからな。
これからもその気持ちは変わらない。どれだけ地味な役割だろうが変える気も無い。
それが俺が選んだ道だからな。
「あたしはしばらく武器制作に専念することにするわ。もしかしたら2~3日かかるかも。それまで待っててねサクっち」
「うん。お願い」
「頑張って強力な武器を作るから楽しみにしててね!」
「ありがとうね。テレサちゃん!」
それから俺達は街へ戻り、今日はログアウトすることにした。




