廃坑ダンジョン③
声がした方向に向くと、そこには2人の男がこっちを睨んでいた。
「ようやく採掘ポイント見つけたのに先越されるとか……ついてねぇな」
「どうする? 他探すか?」
「いやもう無いと思うぞ……」
見知らぬ連中がそんなこと話しながらチラチラと見てくる。
何なんだあいつらは。
「あいつらはテレサの知り合いだったり……しないよな?」
「うん。知らない人達。これは取り合いになるかも……」
「取り合い? 採掘ポイントのことか?」
「そういや言ってなかったっけ。採掘ポイントは採掘し終えると消えちゃうのよ。そうなると復活するまで時間が掛かるのよ。だから採掘ポイントってのは奪い合いになりやすいのよね」
なるほどな。そういう仕様なのか。
ダンジョンの深い階層になるほど採取できるアイテムは高価になる。しかし採掘ポイントは有限だから多くは採取できない。だからこそ数少ない採掘ポイントは取り合いになるわけだな。
これもテレサが2層で妥協してた理由の1つだろう。
「あいつらを見る限り友好的…………とは思えないな」
明らかに採掘ポイントを狙っているし、テレサに譲るような雰囲気は感じられない。
「チッ……仕方ねぇ。せっかくここまで来たんだ。他に採掘ポイント無さそうだし。奪っちまうか」
「そうだな。奴らの装備は大したことなさそうだしな。向こうは3人だけど、オレ達2人だけでもいけそうだ」
2人はそういって武器を取り出した。
「おいお前ら! その採掘ポイントを譲れ。じゃないと力ずくで奪うことになるぞ」
やはりこうなったか……!
「どうしてあんた達に譲らないといけないのよ!? 他の採掘ポイントを探せばいいじゃない!」
「探したさ! でも掘り尽くされていてもう見つからねーんだよ!」
「あらそうなのね」
なるほどね。どうやら4層の採掘ポイントは枯渇してるみたいだな。
だからこそ数少ない採掘ポイントが取り合いになりやすいってわけか。
「だったら諦めたら? 最初に発見したのはあたしよ! 優先権はあたしにあるはずよ!」
「関係ないな。オレ達に見つかったのが運の尽きだと思え。ここはそういう場所だからな」
「こっちだってせっかく見つけた採掘ポイントよ! そう簡単に譲れるわけないじゃない!」
「じゃあまた今度来ればいい。時間が経てば採掘ポイントも復活するんだからそれを待てばいいじゃねーか」
「その時にまたあんた達みたいなのに襲われたら意味無いじゃない!!」
そりゃそうだ。
採掘ポイントに需要がある以上、常に狙われ続けているわけで。次の機会に採掘ポイントを発見できる保証はないしな。
「いちいちうるせーな。お前らは3層あたりで採掘してればいいじゃねーか。4層に拘る必要はねーだろ」
「だったらそっちも4層で探していないで5層に行けば? そっちのほうがレア鉱石も出やすいんでしょ?」
「う、うるせぇな! そっちが出ていけばいいだろ!?」
「……ふぅ~ん。そういうことね。あんた達は5層のモンスターに勝てないから4層に留まっているってわけね。違う?」
「うぐ……」
この反応。図星っぽいな。
そういやテレサも5層は行ったことないとか言ってたっけ。それだけ強い敵が徘徊するような場所なんだろうな。
「…………ごちゃごちゃうるせぇな! もう許せねぇ! お前らをぶっ倒せばそこの採掘ポイントはオレ達のもんだ! 覚悟しやがれ! いくぞ!」
「お、おう……」
そして2人はこっちに武器を向けて睨んできた。
どうやら対人戦は避けられそうにないな。
「ああもう。ここまで運よく遭遇せずに来れたのに。結局取り合いになっちゃうのね」
「やるしかないか。サクラもいけるか?」
「う、うん。私も出来る限りがんばるよ!」
「ごめんね巻き込んじゃって。勝て無さそうだと思ったら逃げてもいいからね。いつでも来れるわけだし。無理しなくてもいいからね?」
「……ま。やれるだけやってみるさ」
相手は対人慣れしてそうだし。勝てるかどうか分からんが、負けるつもりはない。
採掘ポイントは奪い合いになるというのなら、これからはこういう戦いが増えるんだろうな。それなら尚更引くわけにはいかない。
せっかくテレサがサクラの為に武器を作ってくれるというんだ。ここで引いたらテレサの厚意が無駄になってしまう。
サクラの為にもここは頑張らないとな。




