新デバフスキル
ラッキーダガーを装備してからの狩りはかなり捗った。ドロップ率が目に見えて上がったからだ。
前まではドロップ率は体感10%程度だったが、今回は50%を超えている気がした。しかも運が良ければ2個同時にドロップするからな。
予想以上にビッグホーンの角がどんどん増えていく。これなら売る分も相当稼げそうだ。
「えいっ!」
サクラがビッグホーンにトドメを刺す。そして倒れたビッグホーンから目的のアイテムが出現した。
それを拾ってから周囲を見渡すが、目に見える範囲では他のモンスターは居なかった。
一段落ついてからサクラに声をかけた。
「しかしサクラもすごいな。もうノーダメで安定して狩れてるし」
「これもガイ君のお陰だよ。ガイ君が動きを止めてくれているからね。私もすっごくやりやすいよ!」
「それでも反撃はしてくるし、軽くいなしているサクラが優秀なんだよ。戦ってる時は結構カッコイイぞ」
「そ、そんなに褒めないでよ~…………えへへ……」
嬉しさを隠しきれない笑顔で照れるサクラ。こうしてみると普通の女の子なんだよなぁ。とても戦いなれたような子に見えない。
実際にサクラはすごいと思う。少し前まではスライム相手にすら苦戦していたのに、今では初心者殺しといわれるビッグホーンをノーダメで倒しているもんな。
戦闘に関してはネトゲ初心者とは思えないほど上達が早い。元々素質があったんだろうな。
そんなやりとりをしていると、こっちに向かってくるビッグホーンの姿が見えた。
「おっと。次の標的が現れたな。この調子でどんどん狩ろうぜ」
「え、あ、うん。いっぱい倒さないとね! が、がんばるよぉ!」
顔を赤くしながらも武器を構えるサクラ。
そしていつも通りの連携で倒した時だった。
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《スロウ》を閃いた!
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「おっ。なんか閃いた」
「おー! やったね! どんなスキル閃いたの?」
「見てみるか」
閃いたスキルの詳細を見るためにメニュー画面を開いた。
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【アクティブスキル】スロウ(未習得)
相手1体を鈍化状態にさせる。
消費MP:20
クールタイム:10秒
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ふむふむ。鈍化と来たか。
スキル名からしてどんな状態異常なのかは何となく想像がつく。
「スロウってスキルだ。これはたぶん、敵の動きを鈍くさせるスキルだな。なかなか強そうだ」
「鈍くするって、動きがゆっくりになるのかな?」
「だと思う。とりえあず習得するよ」
この手のデバフスキルはいくらあっても困らない。
悩むことなく習得することにした。
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《スロウ》を習得した!
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「せっかく新スキルが覚えたんだ。試し打ちしてみたいな。次の奴は最初にアースバインドじゃなくて、スロウをうってみるよ。いいかな?」
「うんいいよ! 何があってもすぐ動けるように待機しておくから安心して試してね!」
「おう。頼んだ」
周囲に居ないか探すとすぐに発見。離れた位置にビッグホーンがこっちを見ていた。
そしてサクラに向かって猛スピードで突進してくる。
ある程度近づくまで引き付け……
「さーてどうなるかな…………《スロウ》!」
スキルが発動し鈍化状態にすることに成功。
すると――
「おっ。動きが遅くなった」
「へぇー。ああなるんだね」
ビッグホーンはスロー再生しているかのようにゆっくりとした動きになった。
なかなか面白い光景だ。
「あれならいけるかも……」
それを見たサクラはビッグホーンの元へと駆け出す。
「えいっ!」
その勢いでビッグホーンの胴体を斬った。
ビッグホーンは角で応戦しようとするが動きが遅く、サクラは簡単に避けることができた。
「やぁ!」
そのまま何度か切り刻むと、ビッグホーンは倒れて消滅した。
「おー。早かったな。今まで一番討伐時間が短いかも」
「すっごくやりやすかったよ! 動きがゆっくりだから角も怖くなかったし。こっちのほうがいいかも」
「そっか。ならこれからはスロウを使うことにするよ。複数同時に現れた時に片方だけアースバイドで足止めに使う感じかな」
「うん。お願いね」
予想通り強力な状態異常を付与するデバフだったな。これは今後も活躍しそうだ。
順調に手数が増えていってデバッファーとしての突き進んでいく感じがいい。
「でも鈍化状態も永続じゃないだろうから、効果時間切れた時に注意してね。いきなり切れるだろうから」
「分かった。ありがとうね!」
討伐速度も上がったことだし、更に効率よく素材集めが捗りそうだ。




